伊藤くんAtoE
柚木麻子
2018/12/20
★ひとことまとめ★
伊藤くんにひたすらイライラする本です。
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
こんな男のどこがいいのか。
ほろ苦く痛がゆい、著者会心の成長小説。
それぞれに魅力的な5人の女性を振り回す、伊藤誠二郎、27歳。
見た目はいいが、自己中心的。自分は傷つくくせに、人は平気で傷つける。
彼女たちが伊藤に抱く恋心、苛立ち、嫉妬、執着、優越感―。
A 伊藤に長い間片思いするが、粗末に扱われ続けるデパート勤務の美人
B 伊藤からストーカーまがいの好意を持たれてブチ切れる、バイトに身の入らないフリーター
C 伊藤の童貞を奪う、男が切れたことのないデパ地下ケーキ店の副店長
D 処女を理由に伊藤にふられるも、売れっ子放送作家を初体験の相手に選ぶ大学職員
E 伊藤が熱心に勉強会に通う、すでに売れなくなった33歳の脚本家
【感想】
いま書いている間にNetflixで映画の伊藤くんAtoE流してます。
岡田将生大好きなんだけど、伊藤くんのうざさにピッタリww
きれいで普通にしていれば絶対いい男なのに…くそウザイ痛い男なんだよなあ…ww
クズケン中村倫也なんだね!!田村は田中圭!!田中圭もクズが似合うんだよな~
佐々木希がかわいくないのはなんで???メイクかな。老けて見える。あと演技はうまくない…
お話は、かっこいいのにくそ痛くてウザイ男の伊藤くん。
伊藤くんの実家は千葉の大地主、卒業後は塾講師のアルバイトをしていたが、それも辞めてふらふらしながらシナリオライターを目指している。
そんな伊藤くんに振り回される5人の女性。
A:伊藤くんに片思いして5年。デパートで働き、仕事はうまくいっている。おまけに美人。なのになんでこんなクズが好きなんだ~!!!!
手に入らなくて振り向いてほしい、5年間を考えるとどうしてもあきらめられない。そんな彼女に対しても伊藤くんはくそ!!
特に金をせびる部分!!!それに振り回される彼女が不憫でならない。自己肯定感が低いんだろうね。
金貸せアピールしておいて、いざ貸そうとすれば
「君のそういうとこ、苦手なんだよ。なんかさ、勝手に一人でどんどん先に動いてさ。俺のことを買いかぶりすぎててさ。
息が詰まるよ。男ってもっとゆったり構えてくれる女が好きなもんなのにさ」(P37)
ほんっと最悪。
B:学芸員の夢を忘れられずどんなバイトをしても仮の姿としか思えない。塾で受付のバイトを始めたらそこで伊藤くんに出会い追い掛け回されることになる。
このパートの伊藤くんすっげーうぜ~ww
さんざんストーカーまがいのことしておいて、
「君、自分のことどれほどのもんだと思っているわけ?だいたい俺、好きだなんて一言も言ってないじゃない」(P62)
くそすぎる…。。
けれど、そんな伊藤くんの中に自分を見るというか、自分と似ていることに気づく。
「不器用な自分を正当化し酔いしれていたせいで、伊藤と自分は何も生めないし、どこにも行けないのだ。」(P81)
C:親友のDが3年も伊藤先輩に片思いをしている。毎年Dの誕生日には自分の働いているケーキショップのチェリータルトを食べることが恒例になっている。けれども今年は違う。親友は伊藤先輩と二人で過ごすらしい。
このパートは女性同士友情のもろさが伝わってきて悲しくなった…。どんなに男が離れて行っても、親友が離れていくのは悲しい。親友の心が自分ではなく、伊藤先輩に傾いている。そんな彼女は、伊藤先輩を誘惑する。
「何事もなかったかのように、伊藤先輩が実希のもとに戻り、二人が末永く幸せに付き合ったとしても、聡子には一度でも彼女の男と寝たという自信が残る。
小さな勝利を抱きしめて眠ることができる。実希と自分を比べて落ち込むたびに、立ち直るきっかけの核ができる。」(P119)
Dは伊藤先輩とうまくいったかのようにふるまっていたが、本当はそうではなかった。こんな男になぜDは惹かれているのだろう。そして、自分は何でこんなことをしているんだろう。
Dから男を紹介してと言われたときの部分がすごく共感できた。
「自分のように、好きでもない男を早く好きになるために、おしゃれをしたり、はしゃいだふりをする彼女を、隣で見ているのは絶対に耐えられないだろうと思ったからだ。伊藤先輩に恋をしていた彼女を見るより、はるかに辛いに違いない。」(P128)
私もどちらかというとかなり遊んできたからわかる。男、人が離れていくときを何度も経験してきたからよくわかる。
親友がどうしても好きな人なら仕方ないけれど、しょうもない男に振り回されて、傷つくのなんて見ていられない。
そして、親友が好きだったのに、それを受け入れなかった男。
それすらも許せない気持ちもよくわかる。できることなら私がその男を傷つけてやりたいと思う。
D:伊藤くんをずっと好きで、けれどもそれは叶わなかった。
処女を捨てるためにずっと自分を片思いしていた男性(知らなかったけれど)をホテルに誘い、とうとう…って時にホテルに伊藤くんがくるwwww恐怖wwww
自分から逃げておいて、それなのに
「別れる、なんて一言も言ってないだろ。俺、去年言ったよね。
今はその時期じゃないから、待っててくれって言ったよね。」(P168)
クズの極みです…。そしてこういう男は一定数います…。
「はあ?童貞じゃないし」の部分でめっちゃ笑ったwww
ごめんなさい、童貞ってまじでこんな感じだよね。
開きき直って、だからお願い!ホテル行こう!っていうような男の方がまだいい。
しかも親友であるCと寝たことを、
「本当だよ。だから君といるのが辛くなったんだよ。それで別れを告げたんだ。君を嫌いになったわけじゃない。俺がいけないんだよ」(P170)
って自分に酔いまくって言う…。
けれど、クズケンを傷つけた自分を振り返ると、彼女もまた
伊藤くんと自分は似ていると感じる。
自分のことで頭がいっぱいで周りが見えず、人を傷つけるところ。
Cのこと、自分の好きな男を取った女として縁を切るのではなく、きちんと仲直りしてほしいなあとおもった…。
E:映画ではEを中心に話が進んでいくよね。
ちょっとずつAからEは交わってるんだよね。Eの恋愛指南本を
読んでいたり。というか、E主催のドラ研に伊藤くんがそもそもいるんだけれどね…。
自分と正反対の伊藤くん。彼のまだ見ぬ力量が怖い。だからこそ、伊藤くんを飼殺す。彼の才能を開花させない。
「時々彼が憎いのか、かわいく思っているのかわからなくなる。
目が離せない。彼の人生がいっこうに始まらないのを定期的に確認するたび、莉桜は深く満足してしまう。」(P209)
「何も失わず、辛い思いもせず、差し出さず、莉桜やクズケンが手にしているものをごく当然のように欲しがる。
半笑いを浮かべて物欲しげに座っていれば、誰かが動いてくれるはずだとかたく信じている。(中略)ピックアップされるのをただただひたすれ待っている。だから、彼と向き合う人間は、自然、何役もこなすことを要求される。」(P203)
「伊藤は勝ち続ける。周囲の人間を傷つけ続ける。たぶん、一生勝てるわけがない。だって、伊藤は永久に土俵に立たないから。愛してもらえるのを、認めてもらえるのを、ただ石のように強情にまっているだけ。自分を受け入れない人間は静かに呪う。
結局、自分から何も発さない人間がこの世界で一番強いのだ。」(P231)
伊藤くんみたいな人っているよね。土俵立たない。
そんな人になに言っても無駄なんだよね。
同じステージに立たないで、傍観者としてしか見ない。
みんなが頑張って死に物狂いで何かをやっているときでさえ、
遠くから見て余裕そうな笑みで見てる。
そういう人が一番強いよね。だって戦いに参加したことがないんだから、負けたこともなく、負けた人の気持ちもわからず、
周りの人を傷つけまくる。
とんでもね~男ですね!!!!
でも、それでも、傷ついても、伊藤くんみたいなやつに傷つけられても、時に伊藤くんを見習いながら、伊藤くんの自分自分自分精神に学びながら、前に進んでいかないといけないんだよなあ。。
伊藤くんに振り回された女性たちが、みんな前に進むことができたのがよかった。
映画ではバスタブがそこまで重要視されていないけれど、
原作ではバスタブを閉じる、開けることはとても重要なことなんだよね。
映画見た人は原作読むことも勧める!!
伊藤くんのクズっぷりに終始いらいらしていたけれど、
時には伊藤くんみたいに、レースに参加しなくてもいいんじゃないかと思うときもある。
自ら自分を傷つけに行かなくてもいいときもある。
世の中には意外と伊藤くんみたいな男性がいるので扱いには注意したほうがいいのと、そういうやつはこの女性たちみたいに
問答無用に傷つけられまくるので、そういう男に出会ったときはすぐに、情がわく前にすぐに逃げるべき!
そういう男性にはこちらがどう変わっても意味ないからね。。。
自分第一だから。身近にそういう男がいるからよくわかる。
伊藤くんにイライラする本でした◎が、読みやすくて良いのでおすすめ