93冊目:五年前の忘れ物 | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

読んだ本の感想とたまーに日常( ᐛ )

五年前の忘れ物

益田ミリ

2018/12/11

 

 

★ひとことまとめ★

女性で「共感できません」って人はいないと思います!

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介】

「女の人の中に入っているとき、温度わかりますか?」友人の結婚式の帰りに、偶然再会した元上司。バーでのエロティックな会話の応酬のあと、

終電を逃しタクシーに手を上げて……「五年前の忘れ物」
「結婚されているんですか?」ゴルフ練習場で出会った感じのいい男性に

不意に訊かれ、恋人とうまくいっていないわたしの心は揺れる……

「一羽だけの鳥かご」ほか、
「セックス日和」「デニッシュ」「とびら」など30代の女性を描く、

新鮮な短篇集。

 

 

【感想】

益田ミリさんいいなあと思って。

いや、これはどのお話もほんとに良かったので1話ずつ書きます。

お話のあらすじ&感想だったり胸にずしっときた

言葉メインで書きます。

 

・角砂糖の家

家を買うために夫とハウスメーカーの主催する「ご自宅見学ツアー」に行ったりする話なんだけれど、なんだろうな~この胸に

ずっしりというか、そうそう、って思う感じ。

 

「わたしは雨が降ると勝手に閉まる窓のことを考えた。

いつか人間にも応用できないだろうか。悲しいことが起こりそうなとき、心をパタンと閉められる窓。もしくは、腹が立ちそうになる前でもいい。」(P20)

 

あと、社内の出世頭の男の子と不倫し始めてから態度がでかくなった後輩へのいらだちとか、これ実際あったらむかつくよな~

って思いながら読んだ。

「〈取り急ぎ〉などと、先輩に締めくくっていいわけがないだろう?」(P21)

 

「角砂糖みたいな家」「爪切りでパチンと切ったような三日月」

言い回しもいいんだよな~。

 

 

・デニッシュ

パート先のパン屋に若いけれどさえない男の子が入ってきて、

そんな彼とのやり取り、ただ若い男の子ってだけではしゃいじゃうかんじ、若い男の子と話すだけで楽しいかんじがとっても伝わってくるお話。

 

「結婚したばかりの頃は男性の下着売り場にいるのが恥ずかしくてこそこそしていたのに、いつのまにか豆腐を選ぶみたいになんとも思わなくなっている。」(P38)

なんかすごくわかりやすいたとえ。結婚したらそんな感じになるんだろうか。

 

「パッとしない男の子に告白されている自分が恥ずかしかったのだ。もしも、あの男の子がもう少し格好良かったら、どんなに鼻高々だったろう。

もしも柳田くんがもう少し格好良かったら……。

だとしたらなんなのだ?」(P41)

こんなようなことぼんやり考えたことあるわ…。ほんと、だとしたらなんなんだろうなんだよなあ。

 

 

・二羽の鳥かご

ゴルフの打ちっぱなしで出会った素敵な男性。教えて貰うたびにその彼との色々を妄想して…

喧嘩している婚約者からの現実逃避のように妄想が捗る、

「結婚されているんですか?」と聞いてきたのも、どういう意味なんだろうみたいな…

 

でも結局妄想は妄想なんだよね。喧嘩して現実から離れたくなって、羽休めしたくなっても、最終的にはまた現実に舞い戻る。羽休めして戻れば、本当に大事な人の、大好きな部分を思い出す

余裕も出るよね。

 

ってか誰しもあるよね。もくもく膨らんでいく妄想。でも、

結局は妄想。楽しいけれど、楽しいだけだよね。

 

 

・五年前の忘れ物

これは超すっきり!!!!!やってやりたいわ私も!!!

5年前同じ職場で好きだった人、けれど彼は自分の名前すら当時からまともに覚えてなくて、今だって忘れてる。

そんな彼にさんざんお持ち帰りできるようなアピールをして、

じゃあ…ってときに颯爽とタクシーを拾って帰る!!!

してやったりって感じだよね笑

 

こいつはいけるな…って思わせるだけ思わせてさっさと帰るとか

ほんとにやってみたい。小さな復讐。

 

 

・堤防の夕焼け

なんか、気まずい空気がすごく伝わってくるお話だった…!

前なにかのコラム?でも書いてあったけれど、クレジットカードの種類ってお店の人そんなに気にするのだろうか…!!

 

「堂々としていないところにある人生。

それは一体どこにあるんだろう?

浮かんでくるのは、堤防の夕焼けだったり、おととい焼いた二匹のサンマだったり、洗濯かごに入っている康平の作業着だった。」(P105)

人生を振り返ったとき、華々しい部分も思い出すかもしれないけれど、きっと奮発した豪華な食事とか旅行より、日常の方を思い出すよね~。(当たり前か?)

いろんな場所にもいったけれど、結局思い出すのは家とか、

子供の時の親との記憶とか、そんな感じな気がするなあ。

 

 

・とびら

なんかちょっと笑っちゃったww

 

「松本さんは、少し挿入し『平気?』と聞き、また少し進めては『平気?』と確認した。今までどれくらいの女の子に『平気?』って聞いてきたんだろう。」(P123)

これ別に笑うポイントじゃないんだけど、いたなあそんな人もって思い出した。

 

俺の息子ドヤ?みたいな感じほんと笑う。そこしか自慢ポイントないんですかね。このお話の場合はほんとに立派だったのかも

しれないけれど、そうじゃない男性が過去にいたからなあ。

それでドヤされてもみたいな。

 

そして女性同士の上っ面な感じもわかるわかるなんだよなあ~。

いろいろあって結婚式呼ばれたけれど、同級生以上の関係ではない感じとか。

 

 

・バリケン

就職も、アルバイトも、結婚もせず、実家暮らしの27歳。

いつのまにか、社会から、まわりから、はぐれてしまっていた。

世の中に同じような人はたくさんいるのかもしれないけれど、

その人同士が群れをつくるわけでなくて、それぞれにはぐれている。

そんな自分と、はぐれてやってきた外来種の鳥のバリケンを

重ねるお話。

 

野鳥観察のおじいさんの手帳にバリケンがカウントされているかってところは、

自分もはぐれているところだけれど、

それでも自分もなにかの一員として数えてもらえているような、

大丈夫だよって言われてるようなかんじがしたなあ。

 

 

・セックス日和

なぜ子供がほしいわけでもないのに、夫となんとしてもしたいのかを淡々と語り口調で語られていくお話。

 

浮気についてはあれだけど、わかるわかるな部分が多いんだよね〜。

「わたしにとって高瀬主任との浮気は、セックスそのものより

セックス周辺にある時間が楽しかったのですから。」(P161)

「カラオケからセックスにいたるまでの流れは、毎回、茶番

でした。なによりわたしは、この茶番を楽しんでいたのです。」(P162)

 

自分の人生の中で、最後にそういうことをしたのが浮気相手ってのは、たしかになんか嫌な気がするなあ。

 

 

・バタークッキーの紙袋

「『だから女はヤなんだよなあ』他に女子社員がいないとわかれば、決まってこのセリフで締めくくる。

わたしは瀬川に頭を下げながら、今、この同じ瞬間に『だから女は』でひとまとめにされている女たちのことを思った。

ひたひたとわたしの足もとを流れる冷たい水は、深いところで彼女たちと繋がっているような気がした。」(P178-179)

 

「一生の仕事ってなんだろう。自分らしい仕事を探しているわけじゃない。

まじめにコツコツと働くことが水の泡にならない生き方がしたいだけだった。」(P179)

 

テレオペってほんときついよなあ。

なんのために、って思っちゃうよな。

知らない場所から「お客さま」に怒鳴られる仕事。

 

「日々繰り返されている『女じゃ話にならない、責任者出せ』。同じセリフでも、女性客に言われるのは、男性客とは違う悔しさがあった。」(P181)

ほんとだよね〜おまえも同じ女だしおまえだって話になってないだろうと言いたくなる。

 

ずっしりずっしりなお話だったけど、最後は気持ちよくまとめられていてよかった!

 

 

・ニリンソウ

そろって本好きだった、父と母と私(佳乃)と弟。

佳乃は結婚して家を出て、弟も結婚し家を出て、父が亡くなり、一人になった母。

そんなとき母がボヤをおこし、母は大阪の家を出て東京の弟家族と暮らすことになる。

母が東京に来て、一緒に街を歩く佳乃のお話なんだけど、読んでいるこちらも涙が出てきそうな、母とのやり取り。

 

「でもぜんぜん自信がない。父と母がつくった以上の『家族』

をつくれると思えない。」(P192)

「わたしが愛した家族のかたちと、何もかも掛け離れている。」(P193)

 

「弟の家族に、母はちゃんと根付けるのだろうか。」(P196)

 

「自分の母親が、いつか、この家で疎まれるのではないか。

想像して苦しくなる。勝手なものだ。わたしだって、友達には

夫の親の愚痴ばかり言っているくせに。」(P198)

 

「父と母とわたしと弟。大好きだったあの四人だけの家族が、

もう世界のどこにもないことが、どうしようもなく悲しくなった。」(P200)

 

「あと何回、わたしは母に会えるんだろう。地球の裏側くらい

離れているのなら、会えない言い訳にもできるのに。

母を東京に残してきたことが、急に、現実として目の前に広がり始める。お母さんに新しい友達なんてできるのかな。

鼻の奥がツンとした。」(P204)

 

「『別に見えなくなったからって、ほんまに消えてなくなったんとちゃうの。地面の下でちゃあんと生きているんよ。ニリンソウは』

母が、公園で、ぽつりと言っていた。きっとなんとかなる。

そう気楽に考えるには、わたしは、わたしは母が老いていることを知っていた。」(P204)

 

そのあとの書き下ろしの漫画もよかった~。。

自分が成長したということは、同じ分親は年老いているわけで、

考えるとじんわり涙が出てくる。。

 

私は割となんでも自分でやっちゃう(DIYとか)けれど、

このまえ母親がふと思い出したように「子供のときもそうだったね~ビデオ撮ってても、次は私がやるって言ってたもんね~」

って言ってきて、じゃあそのまま成長しちゃったんだね~

って言ったら、

「そのままってことは成長してないのかもねニコニコ

って言われて、なんでかわからないけれどしんみりして

悲しくなってしまったww

 

本棚の整理しているときに、私を生んだ時に母親が付けていた日記をみても泣いたなあ…。

なんか、父や母にたくさん不満もあったけれど、私はそんな父母以上の家庭を築ける気がしない…。

なんなら結婚もできるのか…。。。

 

 

益田ミリさんって何がいいって、超リアルな感じだからいいんだよなあ。

急にファンタジーみたいな救いとか奇跡が用意されてるわけでもないし、魔法みたいに恋とか人生がうまくいくわけでもない。

だからこそ、そうそうそうなのって思うし、特別な魔法も奇跡もないかもしれないけれど、登場人物たちと同じようにまた明日も頑張ろっかなって思える。

女性で、読んでて全く共感できません!!みたいな人っていないんじゃないかな。益田ミリさんの作品全部読みたいな~!