74冊目:私のなかの彼女 | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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私のなかの彼女

角田光代

2018/10/14

 
 

 

★ひとことまとめ★

和歌の人生をともに歩いたような気持ちになる本

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介

いつも前を行く彼と、やっと対等になれるはずだったのに――。待望の最新長篇小説。「もしかして、別れようって言ってる?」ごくふつうに恋愛をしていたはずなのに、和歌と仙太郎の関係はどこかでねじ曲がった。全力を注げる仕事を見つけ、ようやく彼に近づけたと思ったのに。母の呪詛。恋人の抑圧。仕事の壁。祖母が求めた書くということ。すべてに抗いもがきながら、自分の道を踏み出す彼女と私の物語。

 

 

【感想】

こちらも王様のブランチの本に紹介されていたので、読んでみた◎

 

自分の彼が、ちょっとした有名人になってしまったら。彼に釣り合っていないかもしれない自分。彼が知っていることを、自分は全然知らない劣等感。どんどん彼から離されていっている感じ。そういう焦りとか、なんとか追いつかなければいけないというような和歌の必死さがひしひしと伝わってくるお話。

 

18歳から一緒にいて、彼がどんどん華やかになっていくさまを間近で見てきて、和歌自身も小説を書くことで少しずつ有名になって、ようやく彼の背中を見ているだけではなく、彼に追いつき、そして追い越した。一緒にいて、それを自分のことのように喜べる相手ならよかったけれど、仙太郎はそうじゃなかった。

 

和歌は叔母から、祖母がよく「男と張り合おうとするな。」と言っていたことを聞かされる。叔母はその言葉の意味を、男性をたてる女と受け取っていたが、祖母の小説、師匠、その周りを調べていくうちに、その言葉の意味は「男と張り合おうとするな。みごとに潰されるから。」という意味ではないかと考え始める。

 

和歌自身も、書くことにより、仙太郎に批判され否定され拒絶され、彼におびえ、自分の活動に自信が持てなくなっていってしまう。

 

和歌の祖母は、書くことをやめ、普通の女性として生きていく道を選んだけれど、和歌は書く道を選んで。

 

 

仙太郎がそういう男性ではなかったというだけかもしれないけれど、世の中には女性の成功を望んでいない男性も多い気がするんだよね。

彼女の成功を、心の底から祝福できているのか。彼女に負けた、彼女よりも自分は劣っているって、プライドが傷つけられたって思う人もいると思うんだよね。仙太郎はそういう人だったんだろうけれど。

彼女の成功、才能を、手放しで祝福できる相手だったら、和歌だって人付き合いにおいてここまで歪んでしまうこともなかったかもしれないのに。まあ、彼がそういう人だったら、和歌は書く道に進んでいたかはわからないけれど。

 

和歌の人生を、一緒に伴走したような気持ちになったなあ。和歌の十数年を一緒に走って、最後はふう、って立ち止まって、和歌が幸せになってくれるといいな、って思えた話だった。

読むのはそういう意味で結構疲れた。人に人生に付き合っている感じがして。読み応えはあった。