パスタマシーンの幽霊
川上弘美
2018/08/01
★ひとことまとめ★
作品中に出てくる食べ物が食べたくなってくる!
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
恋をしたとき、女の準備は千差万別。海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。
おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、ふたまた男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。掌小説集『ざらざら』からさらに。女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。
【感想】
アンソロジーで川上さんのお話がよかったので、読んでみることに。
多くのお話においしそうな料理が出てくる。つい食べたいな~と思ってしまう。
22個のお話の中で、気になったお話をいくつか。
・き〇たま
これは伏字にしないといけないのではないか。。。決して下ネタ的なお話ではないんだけれど、面白かった一文があって
「ひいおじいちゃんのき〇たまと、男になった姉のき〇たまとが、ぶらぶら揺れているさまをわたしは想像してみた。そういう映画を撮ってみたいなと思った。そういう映画って、どういう映画だよ。自分の抱負に自分で吹き出してしまった(P120)」
なんだか、半分、青いの斎藤工の演じる映画監督が撮りそうな映画だなあと思っちゃった。めっちゃ真面目に撮っているような。笑
・ナツツバキ、庭のくちぶえ、ゴーヤの育て方
ベランダ園芸をする誠子さんと、そこに現れる小人の山口さん。ナツツバキでは誠子さんの視点で、庭のくちぶえでは山口さんが家に現れた瀬戸島さんの視点で、ゴーヤの育て方では誠子さんの職場の同僚からの視点で、それぞれ誠子さんの人間像みたいなものが語られている。かわいくてモテるのに人間ではなく小人に恋をする誠子さんのお話が、なんだかほんわかしていてかわいいなあと思った。
・ブイヤベースとブーリード
全然合わない二人だし、長く付き合ったからこそ相手に対して遠慮しないというか、大切な気持ちがなくなってしまっているというか、本当はもっときっと、相手のこと大切にしないといけないのにそれができない気持ちとか、いろいろな気持ちを思い出す話だった。
恵一と萄子はお互いの大切さに気づいて、別れない選択をして結婚もしたけれど、現実はなかなか難しいよなあ。
はじめは優しい良い人って印象も、付き合ううちに優しいって印象から、なよなよしてるとか、男らしくないみたいな印象に変わったりしてさ。
でも、自分がそう思っているときって、きっと相手も自分に対して「子供だな」とか、「気が強いな」とか、思ってるんだろうね。
萄子は、恵一から渡された手鏡をみて、自分の顔がものすごくおっかなくて、自分はこんな顔つきをしていたのかと驚く。ここでは手鏡だけれど、相手にいろいろ言いたい場面もきっとたくさんあるけれど、一度立ち止まって自分のことを顧みることが、きっと付き合っていく上で大事なことなんだろうなあと思った。
って、まあ当たり前のことなんだけれど。
結構ファンタジーというか、幽霊だったり小人だったり、非現実的なお話も多いけれど、どれも読んでいてほんわかした気持ちになるし、サクサク読める短さだから、息抜きにはぴったりの本だと思う。