さよならの扉
平安寿子
★ひとことまとめ★
なんだか不思議な関係性で気になって読んじゃう!
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
社会経験まるでなしの本妻とデキる独身OLにして夫の愛人が、夫の死をきっかけに対面。そんな女ふたりが織りなす、奇妙な心の交流を、一滴の涙を添えてユーモラスに描く傑作小説。
【感想】
またまたまた平さん。
仁恵の夫、卓己は末期がんで余命半年と宣告された。そんなときに彼から渡された、5年前から不倫をしていたという女性、志生子の連絡先。仁恵はそれをきっかけに志生子と連絡を取るようになる。不倫された妻、という立場を使い、仁恵は志生子に近づくようになる。
と、文章で書き表すとすごいコワイ女だね。
結婚願望がなく、しっかりとしている志生子、ぼや~っとしていて自分の意志がないように感じられる仁恵。二人のタイプが真逆だからこそ、卓己は志生子との関係を続けていたんだろう。
仁恵のパートだとおいおいおい…と心配になるけれど、志生子のパートだと仁恵がものすごく恐ろしい人物に思える。不倫相手の妻がメールをよこしてくるだけでも怖いのに、卓己が死ぬ瞬間にも電話をかけてきたり、お焼香しに来なさいとペラペラ話したり、会ったら会ったで楽しげにべらべら話し出すとか、狂ったのかと思うと思う。あと自分が仁恵を怖いと感じたのは、48歳で夫が亡くなって人を家に招いて焼香にきてもらったのに、キティちゃんのプリントのしてあるトレーナーとジーンズという格好をしているというところ。思わず、この小説が書かれたのが大昔なのか?と思ってしまったが、そんなことはない。作品の中で志生子もそうだったように、私ももうやめてくれと悲鳴をあげると思う。
読み進めていくうちに、仁恵への恐怖は薄れていったが、慣れというか、呆れに近い感覚だった。うんざりする、でもこの人はそういう人なんだ、と認めなければいけない感じ。
おそらく今までぼんやり生きてきて、あまり物事とか真剣に考えてこなくて、結婚もして子供もいるけどどこか他人事みたいで、そんなとき夫が亡くなって、さあどうしようと思ったときに出てきた夫の不倫相手。ここで、そうだ!お友達になろう!って普通思わないだろう…。でも思ってしまうのが仁恵…。不倫する側(志生子)の気持ちを知りたくて、不倫までする女。非常に怖い。
たしかにこんな女は放って置くと自殺未遂したり会社にまで来そうだから、志生子みたいにきちんと対応するのがいいのかもしれないけれど、志生子の父親が亡くなったときのイキイキっぷりがまた怖い…良く志生子は仁恵と旅行まで行ったなあと感心した。
でも、ちょっと気になるよね。自分と同じ人を好きになった人のことは。そんな人と、この人のここがいいよね、ここはちょっとね、なんて話はしてみたいかも。