41冊目:こんなわたしで、ごめんなさい | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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こんなわたしで、ごめんなさい

平安寿子

2018/06/15
 
 
 

 

★ひとことまとめ★

こんな人達、まわりにいる!って思いながら読める作品

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

 

【Amazon内容紹介】

「いませんか? あなたのまわりに、こんな人」
たとえば、こんな↓
――女性管理職・学者の妻・15歳の娘の母親、の三役をこなし、前向きで明朗快活なわたしは皆が羨む存在! 
……だったはずの菅野早弓(44歳)は、最近職場で孤独を感じ、暗い毎日を送っている。なぜなら……
(episode 7「こんなわたしで、ごめんなさい」より)
「こんな人」ほかにも、まだまだいるんです↓
婚活を放棄したOL、対人恐怖症の美人、男性不信の<巨乳>女、フリフリ・ファッションおばさんetc.etc……。
欠点や弱点、悪い癖を自分から引きはがせずに、あがく女たちの悲喜こもごもを、クスクス、ほろりと描きだす。
「婚活の外へ」「どうか小さな幸せを」「イガイガにチョコがけするのも年の功」「自然の法則に従って」
「じれったい美女」「カワイイ・イズ・グレート! 」「こんなわたしで、ごめんなさい」の全7編を収録。
ユーモラスでシニカルな「平節」炸裂の傑作コメディ短編集! 
「そんなあなたを許します」
と誰かが言ってくれるまで、先は長いぞ、頑張ろう。

 

 

【感想】

またまた平さん。

 

・婚活の外へ

小さな印刷会社で働く梅津成美は、大規模な婚活ネットワーク「みんなで幸せになろう」会に所属させられている。そこで出会った市役所勤務の小宮山達志に見初められ、交際し、プロポーズされた。が・・・。彼といると息苦しい、居心地が悪い。

最高のお相手がいる、幸せものなのに、なぜなのか・・・?結局、彼とは破局。自分には結婚願望がないことにはっきり気づく成美。

成美はずっと、頑張ってなかった。嫌われたくない一心で、周囲に合わせるのに神経を使っていた。25になってようやく人任せの運動が限界に達したらしい。そして、自分探しに走る。

ワクワク、ドキドキ。不安と期待に満ちた興奮でエネルギーが倍増。これって、恋でしょう?自分のこれからの人生に恋をする。そう思える自分が好きだ。生まれて始めて自分が好きだ。

 

 

・どうか小さな幸せを

巨乳で苦しむ豊中東子。巨乳は少数派だ。だから、もてはやされる。そして、その苦しみを理解されない。男、そして巨乳にならざる女にとって、巨乳はセクシーではない、セックスそのものだ。「色っぽい」のではなく、「いやらしい」なのだ。

そんな東子は、健康及び垂れ乳予防のため毎朝行っているウォーキング・エクササイズで子犬を散歩する大牟田昇に出会う。

昇に惹かれていく東子だが、昇の元カノに「でかぱい」呼ばわりされ、「僕も胸を気にしていた」と昇に言われ、おまえも他の男と同じかとうんざりするが・・・。昇と友達になり、お互いに対する愛着を確認していくうちに彼と付き合うようになった東子。おっぱいごとカッコいい女になることを決めた東子。

 

 

・イガイガにチョコがけするのも年の功

安永泉、ケースワーカー、35歳。過去二回、結婚を期待することがあったが、どちらも既婚者。いまは、同僚の片貝に恋をしている。だが、彼には「コワイ」と言われて、撃沈。可愛がられたい。優しくしてもらいたい。弱さを愛おしんでもらいたい。守ってもらいたいのに、戦ってばかりで、つい勝とうとしてしまう。もう、疲れた。公式に誰かに守られたい。コワかろうが、可愛げがなかろうが、結婚していれば「ああ見えても、いい奥さんですよ」なんて、世間に認めてもらえる。「あんなだから、結婚できないんだ」とだけは、思われたくない。

口当たりのよくないイガイガがあっても、泉の中身はいろんな意味で甘いキャンディー。表面は堅いが、暖かさに触れればグズグズにとろけて扱いやすくなる。でも、世間にそれを知らしめるなら、イガイガにチョコレートをかけて、ぱっと見でも甘さをアピールしなきゃいけない。

人は人を外見や物腰で判断する。それを表面しか見ない愚かさと軽蔑するのも、実は傲慢なこと。

最終的にはちょこっとだけ片貝といい感じに!

 

 

・自然の法則に従って

山科未和は結婚がしたいのに、30歳になったが結婚ができていない。3年前、二年半付き合っていた駒田明からプロポーズされないことに悩んでいた。そして、携帯チェックをした際に、鍋島という女性の履歴を発見する。浮気相手の鍋島に電話をし、彼に詰め寄ったところ、振られた未和。

だが、別れたあとの彼は事業で失敗し、彼と結婚しなかったことがラッキーだったと感じる。そして、鍋島に対して、そのことを伝えたくなり、彼女と友だちになった。鍋島世津子は恋多き女で、複数同時進行をしている。そんな世津子に、結婚に対する苦しい心境を話したところ、世津子が付き合っているうちの1人を紹介された。農家で、小太り、薄毛で口下手な恩田。高収入のホワイトカラーと結婚して、都会のマンションで子供のお受験に血道をあげる主婦になれたらそれに越したことはないが、そんな「形」だけの結婚ではなく、家族愛を求めたいと思った未和。

条件にここだわらず、ことを複雑に考えることをやめたことで、恩田と結婚し、幸せな結婚することができた未和。

よかったね~!

 

 

・じれったい美女

賢く強くいることで、才能のあるブスとして地位を築いた江本洋子。生まれながらの美女の平岡睦美。洋子は、美女にもかかわらず男嫌いで内気な睦美をどうにか美女らしく振る舞わせるためにいろいろと模索する。しかし、いろいろと挑戦させればさせるほど睦美の対人恐怖症は悪化していく。さらに、彼氏の芳樹から「睦美さんはエモっちゃんのおもちゃじゃない」といわれ、美しい睦美を所有することで勝利感を得ていた自分の醜さを見破られてしまう。

そのことから、睦美に関わるのをやめた洋子。しかし、30の大台にのったところで睦美に彼氏ができる背が高く太り気味の、小山のような男。

そんなこんな、洋子も芳樹からプロポーズされる。睦美は太り、オバサン化が顕著になったが、太ってからハキハキするようになった。

人って、こうしたいとか思っても、そのとおりにならないよね。自分で変わろうって思ったときしか変わらない。洋子も、睦美も。

容姿ももちろん大事だけれど、それ以上のつながりがある友情でいいな~。

 

 

・カワイイ・イズ・グレート!

大人になってもデコデコのフリフリを身につける女は前衛芸術家か、お笑い芸人。どちらでもない一般市民ならば、常軌を逸している。

梢の弟の嫁の道子は50になってもお人形なような格好をしている。彼女の中身には文句のつけどころもないが、気に入らない。道子は悪い人ではないが、いい年して平気でデコデコのフリフリを着るというところが、梢にとっては「悪い人」だ。

ひたすら彼女を目の敵にしていたが、彼女の母親が認知症になり人知れず介護を行っていたことをしり、彼女に同情する梢。道子は、がんばれたのは可愛い服のおかげだという。服を着ると幸せになれる。そんな道子を、梢はようやく認めるようになる。いつまで経ってもバケモノ呼ばわりはするし、笑いものにもするが、うんと笑って、だんだん好きになっていくと、梢は想像した。

私もフリフリな人はおかしいってどこかで思っちゃうけれど、私にとっての読書やメイクが幸せなように、フリフリな服が幸せって人だっているよね。違いを排除するんじゃなくて、認めることも大事だなあと、少し心を広く持とうと思えた。

 

 

・こんなわたしで、ごめんなさい

根っから明るい人間の菅野早弓。社交性の塊で、前向きで、それでいて女性管理職で学者の妻で15歳の娘の母親。人からは羨ましがられる。けれど、現実は最悪。旦那にも、娘にも不満がある。そして、会社でもうまくいかない。かつての同僚の美苗に相談するも、自分が退職したのは早弓が美苗の本音を上司にチクったことが原因だと言うことを言われる。

卑怯な手を使い、美苗を陥れたのに、謝れない早弓。けれど、腹がたち、謝ることができず絶好宣言をする。

やりづらい相手は避ける。これが人間関係でストレスを生まないコツだった。失敗しても、怒らせても、舌をぺろっと出せば許してもらえた。それがお詫びの印のギフトになった。それでなんでも許された。頭を下げるのは屈辱行為に思われた。頭を下げることへの抵抗感がこじれたことで、なんとかして謝罪せずにすむ方法を考えるようになり、あげくに責められると逆ギレするプライドのおばけになってしまった。

最終的に、早弓は美苗に謝罪をする。ごめんなさいと言って、許してもらえることの気持ちよさにようやく気づく。

私も少し共感できたな。謝ることって、屈辱とまではいかないけれど、負けた気がする。でも、そんなプライド、大事な友だちをなくすことに比べたら全然軽いものなのにね。ごめんが言えないってだけで、友達を無くしてしまうこともある。そんなプライドなら捨てたほうがいいよね。

 

 

 

この本も読みやすかった。