幸せ嫌い
平安寿子
★ひとことまとめ★
独身アラサーの胸にグサグサとささる言葉がたくさん出てくる本
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
結婚欲満々の杉浦麻美は、そこそこモテる人生を送ってきた。しかしエリート社員との婚約破棄、更にはジョニー・デップ似の男による詐欺に遭い、未婚のまま三十歳になってしまった。仕事も失い、意気消沈の麻美は、親戚の葬式で母の又従姉妹・漆原克子と出会う。
彼女が経営する結婚相談所でのアルバイトを持ちかけられた麻美は、オフィスを見に行くことに。
そこで目にしたのは、一癖ありそうなスタッフたちと、出入りのイケメン電器屋・緑川だった。迷った末、麻美はそこでバイトをすることを決めるが――。
相談所を訪れる“結婚不可人種"と関わる中で、次第に麻美の恋愛観に変化が起きる。未婚でも既婚でも、読めば結婚の見方がきっと変わる痛快小説!
【感想】
恋愛嫌いがよかったので、こちらも。
そこそこモテ、参加した合コンではあぶれたこともなく、ちやほやされてきた杉浦麻美(30)。結婚は28歳くらいですればいいんじゃない?とのんきに構えていた。25歳までは。26歳になり、周りの友達、自分よりもモテなかったあの子も結婚していく。下手したら一生シングル?
そんなときに社内で出会った聡と付き合い、プロポーズもされた。のに、参加した合コンでギャンブル好きのダメ男の鮫島に惹かれ、聡との婚約は解消。会社も退職。そして鮫島に借金を踏み倒され一人に・・・。いつかきっと出会いがあるはず・・・と夢見ていたら30歳に・・・。
そんなとき、親戚の葬式で声をかけてきた、漆原克子に自分が経営する結婚相談所「真婚」で働いてみないかと打診を受け、さらに真婚に出入りする業者の緑川に一目惚れしたこともあり、真婚で働くことになる。
克子の妹の旦那であり、ギャンブル依存症で自己破産した都丸や、実家では引きこもり・現在は会社で寝泊まりするシステムの佐川や、仲人口の長年の経験と、パパの愛人をしていた過去を持つマイペースおばさん敏江、そして幼少期に理想的な妻像を父に刷り込まれ、見合いで結婚した相手・勝浦と理想的な主婦業を行うも、彼に対して愛情がないことに気づき離婚した克子。
彼らに囲まれて仕事と緑川との結婚に向けて励む麻美。
登録に来た会員とテストデートをしたり、会員同士のお見合いに同席したりするうちに、自分の持っていた恋愛や結婚に関しての幻想を克子に見事に打ち砕かれ、矯正されていく。
いわゆる、そこそこモテる女の典型な麻美。男が喜ぶような表情や仕草、服装、たたずまいを熟知しているが、結婚ができない。
それは、選り好みをしているから。日常生活をともにしていく過程で愛情を醸し出して馴れ合っていける素質を持っているのに、この人ならオーケー、この人とはイヤというのは、おいしいケーキを目の前に手をださないのと同じこと。克子からいろいろなことを教え込まれるうちに、結婚や恋愛に対しての考え方が変わっていき、真婚での仕事の姿勢も変わっていく。
平さんの書き方がとても読みやすいから、さくさく読めてしまう。そして、アラサー独身にはこの本は最初から最後まで全部胸にささりました。だから自分は結婚できなかったんですね。だから恋愛でうまくいかなかったんですね、っていうのがよくわかる。胸にグサグサくる。もっと早く(20代前半とか)読みたかった・・・。
なかでも胸をえぐられた文をいくつか・・・
「30過ぎで派遣社員。これで申し込みが来るのは、50過ぎがせいぜい。」(P61)
「30歳を一日でも過ぎてりゃ、30過ぎのカテゴリーに入るの。現実をちゃんと見なさい。」(P61)
「プライドの高い人ほど、周囲の人間を敵と味方の二種類に分けてしまいがちです。そして、味方を敵に回す間違いをおかし、結果的に孤立する。」(P124)
「相性のいい人を好きになるとは限らない。(中略)鮫島の場合は、とにかく大好きで大好きでドキドキしっぱなしで、空気のような存在なんかではなかった。今考えると、麻美は鮫島に愛されたい一心で、いろいろ無理をしていた気がする。自分が自分じゃなかったような・・・。多分、それが恋の醍醐味なのだろう。でも、結婚となると別だよな。(中略)相性がいい人って、きっと、一緒にいてもドキドキなんかしない人だ。ホッとするって感じかな。」(P136)
「容姿というのは、美しいほど劣化率が高いの。若い人には、そこがわからないのよね。」(P172)
「見せかけのよさにこだわる人って、つまるところ、本人にもろくな中身がないの。中身がないから、中身を見る目もない。そんな人と結婚したい?」(P177)
「いつまでもドラマみたいな恋愛をしたがるバカ者は、結婚には向いてない。いい主婦になれない。婚活するのがそもそも間違いの結婚不可人種。」(P182)
「結婚とは独占契約である。(中略)好きな人との結婚を望む女の子は、そう思ってる。(中略)それが、男をビビらせる。愛されたいけど、縛られたくない。愛されたいけど、愛されすぎるのは重荷になるから、イヤ。男はそういう生き物だから、相手を独占するために結婚したいと思うタイプは結婚に向いてない。むしろ、してはいけない。したとしても、必ず、捨てられる」(P183)
「結婚は、時間のかかる共同作業をするってことなのよ。力を合わせて、困難を乗り越えていく。それが結婚。力を合わせる過程があるから、相手の外見とか鈍感さとか不器用さとかの難点を許せるようになる。」(P184)
「ホれたハれたを最優先にできる男は、生活力のないろくでなしよ」(P272)
いやーグサグサ刺さってきたし、話はおもしろかったし、平さんの作品は女子には読みやすくていいと思う。