泣くほどの恋じゃない
小手鞠るい
2017/06/18読了
【感想】
小さな塾で働く凪子と教え子の父の黒木との不倫の話。
「はじめて交わった男女がよくするように、ふたりの出会いの場面や出会った時の第一印象や、『好きになった瞬間は、いつやったか』について会話を重ねていた」(P28)
「なんてつつましやかな、なんて健気な、なんてみみっちい喜びなんだろう。それでもわたしには今、「わたしは世界一幸せ」だと思えるのだった」(P53)
「わたしが唯一耐えられない、なんとかして欲しい(中略)寂しさだった。巨大な、底なしの、夜の。」(P65)
恋をした時に思う気持ちが、ひとつひとつ言葉で表現されていて、不倫とか関係なく、自分もこういう気持ちだったな、と思わされる話だった。
ラストは悲しいけれど、「あれは、泣くほどの恋じゃなかった。
(中略)だって、あれは世にも幸せな恋だったのだ。
わたしの「後生大事」だったのだ。」(P172)
を読んで、胸がギュッとなった。