腐朽対策/結露対策を考える② | エムズアソシエイツ施主様ブログ

エムズアソシエイツ施主様ブログ

岐阜の工務店エムズアソシエイツで建てる家づくり。
H様ブログです。

こんばんはプリンです。

 

前回は、

「腐朽対策/結露対策」を考えるにあたって、

「原因となる結露はどうやって起こるのか?」

について調べたことを書きました。

 

今回からは3回にわたって

「結露対策ってどうすればよいのか?」

について調べたことなどを

つらつらと書いていきたいと思います。

 

ということで今回は、

結露対策全4回のうちの第2回、

 

①    腐朽って何?/結露って何?

②    冬型結露対策

③    冬型結露対策+α

④    夏型結露対策

 

です。

 

 

結露対策はどうすればよいのか?

 

前回、結露の仕組みとして、

結露には次の2種類があると書きました。

 ・冬型結露

 ・夏型結露(逆転結露)

 

今回は、このうち「冬型結露対策」について

書きたいと思うのですが、

「冬型結露対策」は長くなりそうなので、

2回に分けて書きたいと思います。

 

「冬型結露対策」

「冬型結露を防ぐためにはどうしたらよいのか」については、

次の2つが重要になると理解しました。

 1. 壁体内に水蒸気を侵入させない

 2. 壁体内に侵入させてしまったら素早く排出する

 

1. 壁体内に水蒸気を侵入させない

そもそも壁体内に水蒸気が入らなかったら

冬型結露は発生しませんよね、

ということで、

「室内から壁体内への水蒸気の侵入を防ぐこと」

これが最も大事になると考えました。

 

ポイントは2つあるように思います。

 

ポイントの1つ目は、

「壁体内への水蒸気の侵入を防ぐために気密性を高めること」。

 

以下の図でいうと、

「気密シート」の部分で気密をとり、

ここから先の壁内へ水蒸気を通さないということです。

 

●水蒸気を気密シートで防ぐ

 

では、

気密性を高めた状態=「高気密」を担保するためには

どうすればよいのか?

というと、

次の2つを行うことが大切ではないかと思います。

 

①精度の高い気密施工を行える工務店を見つけ

 精度の高い気密施工を行ってもらうこと。

②その上で、気密測定を行ってもらい、

 実測した「C値(※1)」を確認して

 高気密であると確かめること。

 

ちなみに、

エムズアソシエイツ(以下、エムズさん)についていえば、

C値は0.5 cm2/m2以下を保証されており、

「高気密」についても安心してお任せできます。

 

住宅技術評論家の南雄三さんも

『高断熱・高気密バイブル』(建築技術、2000年)の中で、

「最大の防湿は高気密」と書かれていますので、

私たちは、

壁体内に水蒸気を侵入させないことが

「腐朽対策」としてはとても大事なのではないかと考え、

依頼先を検討するにあたっては、

施工技術が高く、高気密を実現できる工務店であることを、

とても重要視しました。

 

ポイントの2つ目は、

「調理などで発生した水蒸気を素早く室外へ排出すること」。

 

具体的には、

確実に水蒸気を室外へ排出できるように

「換気」をしっかり行えるようにすることです。

(「換気」について書くと長くなりますので、

 これについてはまた別の機会に書けたらと思います)

 

2. 壁体内に侵入させてしまったら素早く排出する

 

では、

もしも何らかの理由で

壁体内に水蒸気が入ったらどうするのか?

 

というと、

以下の図のように「通気層」を設けて、

水蒸気を素早く「通気層」まで通過させて

排出することが大事になると思います。

(「通気工法」や「外壁通気工法」と呼ばれるものですよね)

 

●水蒸気を通気層から排出する

 

これに関しては、

ポイントが3つあるように思います。

 

ポイントの1つ目は、

「壁体内が湿気を通しやすい構成となっていること」。

 

物質には「透湿抵抗(湿気を通すのを遮る抵抗)」

というものがあるらしく、

壁体内を構成する「断熱材」「構造用合板等」

などもそれぞれ透湿抵抗があるので、

これらが湿気の通過を妨げないようになっていればOK

ということになるようです。

(室内側を透湿抵抗の高いもの、

 室外側へいくほど透湿抵抗の低いもの、

 とするのがセオリーのようです)

 

しかし、

例えばモイス(※2)は透湿抵抗が低い

といった断片的な情報は素人にも分かりますが、

壁体内の構成がトータルで大丈夫なのか?

といったことまでを

一施主が判断するのは難しいように思います。

 

そこでこれを確認できるのが、

「結露計算」というものになります。

素人なので詳しい計算内容などは分かりませんが、

結露計算ソフトに

室内の温湿度、室外の温湿度の条件を入力し、

壁体内の構成層それぞれの「厚み」「熱伝導率」「透湿抵抗」

などの情報を入力すると、

それぞれの層で結露のリスクの有無が判定できる、

というもののようです。

 

エムズさんでは、

過去に結露計算ソフトで

エムズさん仕様の壁内構成の結露リスクを

検討されていますので、

以下のスタッフブログが参考になるかと。

 

▷「壁内の結露判定 と 夏型逆転結露

 

私たちは結露計算の条件を設定して、

エムズの担当者さんに結露計算もお願いしました(※3)

お願いした条件は以下になります。

 

《冬》

室内側:21.0℃/相対湿度50%(絶対湿度7.73g/kg)(※4)

室外側:結露リスクが相対的に高いと思われる、気象庁データベースにおいて2023年の岐阜市で最も気温の低かった日(2023年1月24日)で3時間ごとの定常計算

《夏》

室内側:26.0℃/相対湿度60%(絶対湿度12.63g/kg)

室外側:結露リスクが相対的に高いと思われる、気象庁データベースにおいて2023年の岐阜市で最も露点温度が高かった(と思われる)日(2023年8月16日)で3時間ごとの定常計算

 

結果は、どちらも結露判定なしだったので安心しました。

(そもそもエムズさんの壁内構成からして、

 この構成で結露判定が出たらどこを変えたらよいのか?

 という印象ではありましたので、

 念のための確認ではありましたが、

 担当者さんには大変お手数おかけしました。

 本当にありがとうございました)

 

上記のようにエムズさんに依頼した際には、

夏型結露については単純に、

結露しやすい=露点温度が高い

と考えて条件を設定しましたが、

後日、

夏型結露が起こるメカニズムである

「水蒸気を含んだ空気の移動」

には内外温度差が重要であること、

「壁体内での構造材などからの水蒸気の放出」

には日射熱が影響していることなどから、

単純に気温が高い条件、

気温がそこそこ高く湿度もそこそこ高い条件など、

色々と検討してみたいなーと思い、

自分でも調べて若干検討してみました(※5)

 

なお、

結露計算については、

Ua値と同じ理論上のものなので、

断熱材が断熱欠損なく施工されていないと

Ua値が良くても意味がないように、

気密がしっかり確保されていないと

結露計算の結果がよくても意味がないので、

気密性をC値で確認するということも

セットで必要なのだろうな、と思います。

 

2つ目のポイントは、

「通気層が設けられていること」。

 

通気層については、

下から上へと流れる通気量が

しっかり確保できるのかどうか、

というところが大切になってくるのかな、と思います。

 

通気胴縁が縦胴縁となる場合には、

通気的には問題ないようですので、

特に気にする必要はないかと思いました。

(あえて気にするのであれば、

 開口部まわりの通気を塞いでしまわないこと、

 くらいでしょうか?)

 

●縦胴縁

※非常にざっくりとした図ですみません(以下同)。

 

通気胴縁が横胴縁となる場合には、

1820mm以下ごとに30mmの通気できる隙間を設ける

必要があるようなのですが、

縦胴縁と比べると

縦に空気が抜けていくスペースが狭く少ないため、

直感的には通気量に不安があるように思われます。

 

●横胴縁(通常)

 

そのため、通気胴縁が横胴縁となる場合には、

胴縁に通気用のエアホール(穴)が付いた、

エアホール付き胴縁というものがあります。

通常の横胴縁に比べると、

空気が縦に抜けていくスペースが多いため、

通常の横胴縁と比べて通気量を多く確保することができます。

 

●横胴縁(エアホール付き)

 

飯塚豊さんの

『ぜんぶ絵でわかる①木造住宅』(エクスナレッジ、2022年)

においても、

ガルバリウムなどの外壁自体で通気をとれる場合以外は、

エアホール付き胴縁を原則とし、

この場合も開口部まわりなどは

30mm以上の通気スペースを設けること、

と書かれています。

 

エムズさんの場合、

横胴縁となる場合には、

標準でエアホール付きの通気胴縁を使用しているため、

外壁の通気に関しても安心です。

 

私たちの場合は、

外壁はガルバリウムの縦張り一択だったので、

胴縁は横胴縁になるのですが、

エアホール付き胴縁(エムズさん標準)に加えて、

通気的な安心感も考慮して

外壁はガルバリウムのKスパンを選びました。

 

なお、

コストアップになるとは思いますが、

以下のようなクロス胴縁というものもあるようです。

おそらく最も通気が確保できる

胴縁の取り付け方であると思われますので参考までに。

 

●クロス胴縁

 

3つ目のポイントは、

「透湿防水シートの耐久性が高いこと」。

 

透湿防水シートは、

外からの雨水などの侵入を防ぎつつ、

室内側からの湿気は室外側へ通すという

漏水対策・結露対策において

非常に重要な役割を果たしていますので、

耐久性の高いものであることが大切だと考えました。

 

透湿防水シートは、

メーカーのほうでも「●年保証」などと

示されている商品もありますので、

そういった情報も参考になると思いました。

 

また、透湿防水シートについては、

通気胴縁の防蟻剤が雨で流れ出すなどして

透湿防水シートにつくと、

透湿防水シートの性能が劣化する恐れがある、

ということが言われています。

この点については、

この問題をクリアしている商品を使用すること、

通気胴縁には防蟻剤を塗らないこと、

などが対策として考えられるのかな、と思います。

 

エムズさんについていえば、

標準で使用している透湿防水シートが

デュポンのタイベック シルバー」であり、

20年保証の製品であること、

防蟻防腐剤の影響を受けにくい製品であること、

などから安心だと思います。

(エムズさんは、

 エアホール付き胴縁やタイベック シルバーなど、

 見えない部分についても

 標準で安心できる建材を使用されていますので、

 安心して依頼できると思います)

 

●エムズさんのエアホール付き胴縁+タイベック シルバー

 

 

キリのよいところまで来ましたので、

今回はこのあたりで。

 

次回は「冬型結露対策」として、

プラスアルファ的な話を書きたいと思います。

 

【用語解説、的なもの】

※1 C値

住宅における隙間相当面積のこと。建物全体での隙間面積(cm2)を床面積(m2)で除した値で示される。一般的には、1.0 cm2/m2以下、できれば0.5 cm2/m2以下だとよいとされている、らしい。もちろん、低ければ低いほどよいと思われるが、どこまで目指すのかというのは、換気も踏まえて考える必要があるようだ。

(私たちの家は、木造住宅で第三種ダクト式換気を選択したので、0.36 cm2/m2以下を目指すべきラインとして考えました。このあたりの話は、後日「換気」の話で触れられればと思います)。

 

 

※2 モイス

耐力面材の1種。透湿抵抗が低い、蟻害にあわない、耐火性能が高いなどのメリットがあるが、価格が高いといった短所もある。他に透湿抵抗が低い耐力面材には、ダイライト、ハイベストウッドなどがあるが、「防蟻性」「耐火性」といったところで一長一短はある、らしい。

 

 

※3 結露計算の条件設定

室内側の条件については、自分が室内環境としてこのくらいの温湿度を実現したいと考える条件を設定。

室外側の条件については、最も結露のリスクが高いと思われる条件で結露しなければ安心であるので、この「最も結露のリスクが高いと思われる条件」を設定するとよいのでは、と考えた。

ありえない条件を設定しても意味がないので、私たちの場合はとりあえず直近の2023年の気象庁データベースから、建設地において実際に結露リスクの高そうな1日をピックアップし、その日1日を3時間ごとに計算してもらうことにした。過去10年などのより多いデータの中から条件を選ぶと、より厳しい条件設定ができると思われる。

ただし、悩ましかったのが「最も結露のリスクが高い条件」を選ぶことである。

「冬型結露」については、室外側の「気温」が大きな要因になると考え、シンプルに「最も寒い日」でよいのでは、と考えた。

「夏型結露」については、エムズさんに依頼する時点では、室外側の「湿度」が大きな要因になると考え、「最も露点温度が高い日」でよいのでは、と考えた。(しかし、本文中でも書いているように、依頼してからずいぶんあとで、「夏型結露」には室外側の「湿度」だけでなく「気温」も大きな要因になるのでは? と考え、「最も気温の高い日」「最も露点温度が高い日」「気温も露点温度もどちらも高めの日」などを色々と検討してみるのがよいのでは? と考えたしだい。

 

 

※4 相対湿度と絶対湿度

相対湿度は、その温度の空気が持てる水蒸気量100%のうち何%なのかを表すもの。100%を超えると水蒸気として持てなくなるので結露する。一方で絶対湿度は、空気1㎥=1kgのうちに含まれる水分量を表す。

例えば、25℃/相対湿度80%と30℃/相対湿度60%では、相対湿度の%を見ただけでは、どちらがより多くの水分を含んでいるのか分からないが、25℃/相対湿度80%の絶対湿度が15.95g/kg、30℃/相対湿度60%の絶対湿度が16.03g/kgと考えると、30℃/相対湿度60%のほうがより多くの水分を含んでいるとわかる。

ということらしい。

 

 

※5 結露計算

エムズさんで行ってもらった結露計算では、気密シートの設定が、エムズさんが以前使用していた可変透湿シート「デュポン ザバーン」だったことと、他にも色々な条件を検討してみたかったこともあって、後ほど、フエッピーさん(※)の作成した「結露計算シート」を使用させていただき、気密シートをエムズさんが現行で使用している「タイベック VCLスマート」の設定にした上で計算してみました。

 

※フエッピーさんについてはご存じの方も多いと思いますので、あえて説明するまでもないとは思いますが……「プロ施主」という言葉が存在するとすれば、それはこの人のためにあるのではないか、というほどの知識量で情報発信されている方です(プロ施主っていうか最早プロなのでは? と思ってしまうのは私たちだけでしょうか)。フエッピーさんの発信する情報にはとても勉強させていただきました。様々な計算ツールをエクセルで作成して公開されており、「結露計算シート」についても公開されているので使用させていただきました。

 

計算の条件設定は、まずはエムズさんに依頼したときと同じ条件としました。

冬型結露については、冬の実現したい室内環境として室内側を「21.0℃/相対湿度50%(絶対湿度7.73g/kg)」(本当はもう少し湿度高めにできるとよいのですが……高気密高断熱住宅の課題の1つが冬の乾燥らしいので……)という条件設定とし、室外側を2023年1月24日の3時間おきの温湿度で計算しました。最も気温の低かった6時の「-4.0℃/相対湿度74%(絶対湿度2.07g/kg)」という条件設定での結果は以下のとおりです。

 

 

表の横軸1〜10の数字は、以下のような壁内構成になります。

 1:室内側空気層

 2:内装材(珪藻土)

 3:石膏ボード

 4:気密シート(タイベックVCLスマート)

 5:充填断熱(高性能グラスウール16Kを120mm)

 6:耐力面材(モイス)

 7:付加断熱(高性能グラスウール32Kを45mm)

 8:透湿防水シート

 9:なし

 10:室外側空気層

 (左が室内→右が室外という形です)

紺色の線(外側温度)が、ピンク色の線(露点温度)以下になると「結露リスクあり」となるのですが、いずれの層でも結露リスクは見られませんでした。

夏型結露については、夏の実現したい室内環境として室内側を「26.0℃/相対湿度60%(絶対湿度12.63g/kg)」の条件設定とし、室外側を2023年8月16日の3時間おきの温湿度で計算しました。最も露点温度の高かった18時の「26.6℃/相対湿度93%(絶対湿度20.54g/kg)」の条件設定での結果は以下のとおりです。

 

 

 6:耐力面材(モイス)

 7:付加断熱(高性能グラスウール32Kを45mm)

 8:透湿防水シート

の3つの層で紺色の線(外側温度)が、ピンク色の線(露点温度)にかなり近づいており、結露判定は出ませんでしたが、結露注意となっていました。ただし、夏型結露の仕組みが冷えた気密シートの室外側で結露する、ということを考えると、これは夏型結露要注意! というよりは外部の湿度が単純に高すぎる状態を表しているだけなのかな? と思いました(そもそも26.6℃の外気温の露点温度が25.4℃であり、この状態が結露注意となってしまう状況だと思いますので)。また、室内26℃、室外26.6℃という温度差では、そもそも空気がそれほど移動しないようにも思われますので、あまり検討する意味がないかも? とも思いました。

ちなみに、同日12時の「32.9℃、相対湿度64%(絶対湿度20.29g/kg)」(気温が高い分、相対湿度は低いが、1㎥あたりに含まれる水蒸気量は「26.6℃/相対湿度93%(絶対湿度20.54g/kg)」に近い条件)でも検討しましたが、こちらの条件でも、以下のように結露リスクなしという結果でした。

 

 

さらに、気象庁のデータベースにおいて2023年の8月で最も高い気温を記録した1日である2023年8月13日13時の「37.6℃/相対湿度40%」(絶対湿度16.33g/kg)の条件でも検討しましたが、こちらも以下のように結露リスクなしという結果でした。

 

 

なお、フエッピーさんの「結露計算シート」については、「ご利用は自己責任でお願いします」と書かれていること、上記は私たちの家の条件でデータ入力を行なっていること、私たちのデータ入力に間違いがある可能性もあること、などはお含みください。