正座のにおい
待つ身の退屈さを時計の針が煽っていた。
雑誌を読み終わって、もう一度読んだ。
携帯の留守電に、一度だけお仕置きを宣告した。
お酒のにおいが もわん。
髪にはタバコのにおいが もわん。
君は反省するふりをして うつむき加減。
サークルの新歓コンパの後、
うちに来るはずなのに、3時間遅刻。
せっかくだから、買い置きのビールでお仕置き。
お酒の席の罰ゲームにならって、一気飲みでもしておこうか。
さてそれから。
今日のお仕置きは服を着たまま。
押入の奥に隠しておいた四角いたらい。
正座させた脚を束ねて、タオルを巻いて、ベルトできつめに締める。
抱き上げて座らせるのは四角いキングタライの中。
ほろ酔いの君は緊張感なく僕を見上げている。
なあに? 正座がお仕置き~?
なんていいながら。
眺めて考える。
暴れたら、後ろに倒れるかも。
首輪と脚を束ねたベルトを、短い縄でつなぐ。
後ろ手に重ねた手首を縛り直す。
低くお辞儀した正座の君は
少なくとも3時間 そのまま待ってもらおう。
修学旅行の正座と違うのは、ビール、縄、キングタライ。
修学旅行の正座と同じなのは、真夜中、はしゃいだ後の余韻。
待ったんだぞ、この薄情もん。
なんてゆるやかなお説教をひとしきり。
しばらくの後
あ おしっこ。トイレ行く。
と君が言う。
僕は笑顔で
行かせるわけないだろ? 何のためのタライだよ。
と答える。
そこからがメインディッシュだ。
夜は長い。
お説教はネタの幅が勝負なので、僕は知恵を振り絞る。
穏やかなお説教を
意地悪な笑みと共に。
延々と、延々と。
キングタライの中から、あたたかなにおいが立ち上っても、
何事もないかのように。
ちなみに、たらいというのはこんなやつ。
