{5} お客じゃないあなたへの料理(大阪・京都・神戸;関西の婚活小説『あなたへのドルチェ』)
第4回『あなたへのドルチェ』
この小説は、大阪・京都・神戸;関西の婚活に創業18年、約5,000組の成婚実績のある結婚紹介所エムロード
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小説(大阪・京都・神戸;関西)『マリッジ・コンサルタント優子の結婚(婚活)物語』
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カウンターにいた最後のカップルがエスプレッソを飲み始めた。
謙治は時計を見あげた。
10時を回っていた。
「明日の帰り、少し遅めに寄ってもいいですか」
絵梨子がレストランにそんな電話をかけてきたのは、昨日のことだ。
ひょっとしたら忘れてしまったのかもしれないし、
誰かと会わなければならない約束が入ったのかもしれない。
気合を入れてとっておきの前菜をつくろうと貝など仕入れたのだが。
その時、扉が開いた。
「こんばんは」
白いシャツにはちみつ色の薄いストールをかけて、絵梨子が立っていた。
「ああ。どうぞ」
最後に残っていたカップルの男性のほうが「お勘定を」と指で合図した。
謙治は絵梨子をカウンターの一番真ん中に案内して、にこっと笑った。
「おなかすいてそうですね」
「はいっ」
ちょっと面倒な患者のカウンセリングに付き合っていた絵梨子はくたくただった。
が、あえて元気な返事をして背筋を伸ばす仕草をした。
謙治は目配せして客を見送りに外へ出た。
絵梨子はその店の厨房をぐるりと見た。
小さいが、ぴかぴかに磨きあげられている。
オープンキッチンは客に見られることを常としているからか。
それとも謙治の几帳面な性格からか。
白いぽってりした、洒落た皿のセレクトも謙治らしいと思った。
不思議に気持ちが和んだ。
外から戻ってきた謙治はギャルソンエプロンの紐を前で締めなおして、気合を入れた。
「すみません。すぐにつくりますよ。
トリ貝、大丈夫ですか?少し前菜で召し上がって。
それから、いいアスパラがあるんです。
春の野菜たっぷりのパスタなんてどうですか」
「おいしそう。おまかせします」
「ワインは... いけますね」
グラスにまず冷たいソアベが注がれる。
ほっこりした照明の店内で、白ワインははちみつ色に輝いた。
「いい色。いただきます」
絵梨子はひと口飲んで、料理をつくる謙治の姿を見つめた。
けっして太っているわけではないが、丸い肩。
一心に料理を皿に盛り付け、パスタのお湯を見る。
動きは機敏だが、けっして慌しいという感じではなく、穏やかだった。
「はい。アンティパスト。旬のとり貝のカルパッチョ仕立てです」
ひと切れ食べて、絵梨子は目を丸くした。
「おいしい。少しお酢がきいてるところがおもしろいわ」
謙治はその言葉に目を細めた。
「うれしいなあ。遅い時間だからカロリーも控えめなのがいいでしょう」
うんうん、とうなずきながら絵梨子の手元は止まらない。
あっという間にお皿はきれいになり、次に湯気のたった野菜たっぷりのパスタが現れた。
「春野菜のぺペロンチーノです」
にんにくとオリーブオイルの香ばしい匂いがふわりと漂う。
「キャベツは胃にいいですからね」
ただ美味しいだけではない、
遅くやってきた自分への謙治の心配りに絵梨子はすっかり打ち解けていた。
「おそうめんみたいに細いパスタが美味しかったわ。
あれならいくらでも食べちゃう」
「カッペリーニといってね。天使の髪の毛っていう意味なんですよ」
「天使の髪の毛。... 天使っているのかしら」
「いますよ。イタリアにはうじゃうじゃいます」
謙治の軽い言い方に絵梨子はけらけら笑った。
「うじゃうじゃいてますの」
「いてますよ。金髪でね。いや、向こうの子どもはみんな天使みたいに見えるってことですけどね」
少し酔いが回ってきた絵梨子は一度だけ行ったイタリアを思い出していた。
「ああ。そうねえ。でも子どもはみんな天使よね」
「欲しいですか」
「もちろん」
謙治は鍋に向かってにこりとした。
ワイングラスのそばにはお水が知らないうちに用意されていた。
「私は料理、そんなに上手じゃないですよ」
絵梨子は正直に言った。
「できる人がやったらいいんとちがいますか... 」
謙治はお皿を片付けながらぼそりと言った。
そして何気なく続けた。
「お医者さんて、気ぃ遣って大変やないですか。
一人ずつ最後まで向かいあって診ないといけないし。
ぼくらお料理出した後はほっといても怒られませんもん」
あははは、と絵梨子は声をあげて笑った。
そんなふうに笑うのは久しぶりだった。
「でも今は... 私ひとりに向かい合ってないとダメだから、大変ですか」
「絵梨子さんとは、なんぼでも向かい合ってられますよ... ずっと」
謙治の「ずっと」という言葉が力強かった。
絵梨子はまるで早速のプロポーズをもらったように、顔を赤らめた。
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※この小説は、大阪・京都・神戸;関西の婚活に創業18年、約5,000組の成婚実績のある結婚紹介所エムロード のサイト上で、連載している婚活 小説(大阪・京都・神戸;関西)『マリッジ・コンサルタント優子の結婚(婚活)物語』 のアメブロ版として、連載しています。
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