Mr.Children「CENTER OF UNIVERSE」レビュー 歌詞 意味 ミスチル | A Flood of Music

今日の一曲!Mr.Children「CENTER OF UNIVERSE」

 

乱数メーカーの結果:450

 

 上記に基づく「今日の一曲!」は、Mr.Childrenのセクション(448~467)から「CENTER OF UNIVERSE」です。詳しい選曲プロセスが知りたい方は、こちらの説明記事をご覧ください。

 

 

収録先:『Q』(2000)

 

 

 現在はどういった評価を受けているかわかりませんが、リリース当時は『深海』(1996)と共に「人を選ぶアルバム」の扱いを受けていた記憶があります。個人的には両作とも難なく受け容れられたというか、こと『Q』に関しては最高傑作と捉えていたこともあるくらいです。僕が本格的にミスチルのファンになったのは2001年の頃で、中学一年生という多感な時分と重なっていたことに加えてその時点での最新作だったがゆえにヘビロテしまくっていたからかもしれません。

 

 全曲に思い入れがあるためどの曲を特筆すべきか迷いますし、本作に対しては昔も今も嗜好があまり変わっておらず変遷も提示しにくいです。それでもカテゴライズしてみますと、今回紹介する「CENTER~」を含め「その向こうへ行こう」「友とコーヒーと嘘と胃袋」「Everything is made from a dream」と実験的なトラックが最も好みで、次いで「NOT FOUND」「Surrender」「十二月のセントラルパークブルース」と喪失系のナンバーに惹かれる傾向にあります。とはいえ同時に「つよがり」「Hallelujah」と愛の深い楽曲にもグッと来ていますし、「ロードムービー」「口笛」「安らげる場所」の音景に癒されたことも、「スロースターター」の擦れたサウンドに奮起させられたこともあって、余すところなく噛み締められる名盤です。

 

 

歌詞(作詞:桜井和寿)

 

 本曲の歌詞については過去に少しだけ語ったことがあり、リンク先では「とことんポジティブシンキングが突き詰められている」と評しています。"今僕を取りまいてる 世界はこれでいて素晴らしい"の前向きな気付きから始まり、曲折浮沈の果てに"あぁ世界は薔薇色/ここは そう CENTER OF UNIVERSE/僕こそが中心です/あぁ世界は素晴らしい"と自己陶酔的に結べるのは、自身も周囲も愛していないと至れない境地です。

 

 ここだけ抜粋すると思考停止の礼賛に映るかもしれませんが、"プラス思考が裏目に出ちゃったら 歌でも唄って気晴らし"に"悩んだ末に出た答えなら 15点だとしても正しい"と、しっかりビハインドを受け止めた上での結論であることが示されているので無責任には感じません。"どんな不幸からも 喜びを拾い上げ/笑って暮らす才能を誰もが持ってる"も、乗り越えた者による言だとわかるでしょう。僕は本曲の歌詞を金言として心に刻み今日まで生きてきたので、経験則からもこれらのポジティブな言辞は全て真実だとフォローする次第です。

 

 その枢機はやはり「愛」で、"イライラして過ごしてんなら"或いは"クタクタんなって走った後"を好機として"愛を補充"を心掛けていれば、"君へと向かう恋の炎が燃ゆる"のは必定と言えますし、更には"隣の家のレトリバー"ないし"向かいの家の柴犬"に"『ハイ ボンジュール!』"と挨拶出来るだけの余裕も生まれます。"総てはそう 僕の捕らえ方次第だ"と自分を起点にして、君へそして向こう三軒両隣へと愛を拡充していけば、やがては世界を宇宙を愛せるようになるだろうというステップバイステップの導きが丁寧です。

 

 敢えてスルーした情報量の多いスタンザには、先に「曲折浮沈」でまとめてしまったバックグラウンドが描かれています。それは"今僕を取りまいてる 世界"についての説明であり、同時に"これでいて"に滲む周辺環境の過酷さを物語るものです。1番のそれは作編曲の項に温存したいため2番から引用しまして、"自由競争こそ資本主義社会/いつだって金がものを言う/ブランド志向 学歴社会 離婚問題 芸能界/でも本当に価値ある物とは一体何だ?/国家 宗教 自由 それとも愛"と本質探しに奔走した挙句に、"でも結局それって理屈じゃない"で振出しに戻ってしまう堂々巡りっぷりに共感を覚えます(「そんなの理屈じゃん」の意で解釈)。

 

 

メロディ(作曲:桜井和寿)

 

 1番にしか出てこないAメロはその独立性からだけでなく、トラックのつくりが簡素だからか覚えやすく耳に残ります。憂いを帯びつつもそれで腐っているわけではないとわかる良い塩梅の旋律です。続くBメロで次第に霧が晴れていくような進行を見せ、そのまま大いに盛り上がるかと思いきやサビメロは意外と地味に展開します。オケで巧く装飾していますが主旋律だけに意識を向けると、中々に燻し銀でアルバムの一曲目らしからぬ印象です。

 

 しかしこれは後にアッパーなセクションが控えているがゆえの言わば布石で、区分的にはCメロと扱うけれどその実当該部をサビと認定しても良いくらいには、旋律的なピークが遅れて来る楽想となっています。俄に賑やかとなった編曲を伴って半ばラップと表現したいフロウの心地好いCメロが登場し、緩急の激しいジェットコースターのような音運びに初聴時には笑ってしまいました。とりわけ"新しい物に飲み込まれてゆく"の舌の回りには、シンセのシーケンスフレーズの如きイヤガズムを覚えます。

 

 この勢いを維持したまま2番ではAメロを省略してBメロに移行し、二度目のそれは同じラインでも非常にポップに聴こえて技巧的です。サビも同様で新たにコーラスが重ねられているせいでもあるのでしょうが、1番に感じた地味なイメージは完全に払拭されています。"あぁ世界は薔薇色"以降の後半部も終止まで回り道した変則形でラスサビでは更に長くなるため、遡ると1番のメロが中抜きされているように聴こえるというか、次第に旋律の全体像が見えてくる発展性が美しいです。

 

 

アレンジ(編曲:小林武史 & Mr.Children)

 

 総じてコバタケ節の効いたアレンジであると評します。バンドによる演奏を基本としていながらも、打ち込みや電子音もきちんと主張して来るデジタルな実験性のみならず、目まぐるしく展開する楽想も相俟って非常にプログレッシブです。ミレニアムイヤーの時代背景も考慮すれば、まだアメリカ同時多発テロ事件が起きる前の(見かけ上は)平和な世界情勢下で、IT革命によってより豊かな未来へ邁進するのみといった機運が高まっていたため、先進的な音作りが意識されたのではと推測します。

 

 歌詞の"誰かが予想しとくべきだった展開/ほら一気に加速してゆく/ステレオタイプ ただ僕ら 新しい物に飲み込まれてゆく"もその表れで、このパートからアレンジが勢い付くのもその内容を自己言及的に反映させた結果であるはずです。また、他の収録曲では「Everything is~」も同じく時代を切り取ったものと言えますが、同曲のアレンジはレトロフューチャーなテイストなので本曲とは差別化が図られています。

 

 

 
 

備考:特になし

 

 今回は取り立てて補足したいことはありません。