今日の一曲!BURNOUT SYNDROMES「Ms. Thunderbolt」
【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2019年のアニソンを振り返る】の第十二弾です。【追記ここまで】
今回の「今日の一曲!」は、BURNOUT SYNDROMESの「Ms. Thunderbolt」(2019)です。シングル『Good Morning World!』c/w曲。
ブログテーマ「その他」での更新はこの記事以来ですが、選曲理由が実は前回と同じでして、アニソン目当てで入手した音源に一般枠でレビューしたいほどのお気に入りを発見したから語らせてくれ、という動機を出発点としています。
【追記:2021.5.15】 後にBURNOUT SYNDROMESの特集記事を執筆したことに伴いバンド名を冠したブログテーマを作成したため、本記事のテーマも同日を以て変更しました。【追記ここまで】
そんなわけで、当ブログでは初登場となるバーンアウト・シンドロームズ。先の「一般枠」なる形容はここでは単に「非アニソン」をマークする程度のものではあるけれども、彼らはつい先月にアニメ関連のナンバーを軸に編纂されたコンセプトベストアルバム『BURNOUT SYNDROMEZ』(2020)をリリースしているため、それだけアニメとの親和性が高いバンドであるとの認識です。当該シングルに於いても、c/wの「Ms. Thunderbolt」自体はノンタイアップながら、表題曲がTVアニメ『Dr.STONE』のOP曲であることに関連して、同作を思わせる曲作りが披露されています。この制作秘話については、『ミーティア (MEETIA)』上で読めるインタビューに詳しいです。
さて、正しい日本語に一家言ある方は、前出の「編纂」という言葉に違和感を覚えたかもしれません。通例は書籍に用いるはずの語を敢えて僕が持ち出してきたのは、バーンアウトが「青春文學ロックバンド」を自称していることに由来しています。「自称」と書くと他意が生じてしまうかもしれませんが、そう宣うだけはある高い文学性を誇った歌詞に僕はまず惹かれたので、音楽作品且つ文学作品として成立していることに敬意を表して、「ベスト盤を編纂する」でも文脈上の問題はないだろうと判断しました。
事前情報は以上とし、愈々「Ms. Thunderbolt」の魅力に迫っていくとしましょう。上述した文学性を証明したいのであれば、同曲の歌詞はまさに打って付けです。その内容を端的にというか態と陳腐に纏めると、「カフェの店員に一目惚れした男の話」で片付いてしまいます。しかし、鮮やかな心理描写とラブソングに似つかわしくない硬派な語彙選択が、独特の世界観を構築しているのです。理解しやすさ重視でいきなり結びの歌詞を引用して、「"恐怖と歓喜に慄えた"でオチる恋愛賛歌」との寸評を添えれば、これだけでも興味を引かれるだろうと期待します。
一目惚れの衝撃を落雷に喩えることそのものは王道と言えるでしょうが、特筆したいのはその取り入れ方の巧さです。例えば、"君"の容姿について歌った"一筋 黒髪に疾る/金のメッシュは稲妻"に見られるビジュアルとしての雷、"君の眼光が僕を撃ち/遅れて心音が爆ぜた"(表題部分は省略)に表現されている性質としての雷、"今100万Vが圧し折った/ニヒリズムの避雷針"で描き出される脅威としての雷、"僕はずっと思ってた/『落雷なんて所詮、他人事』と"から窺えるメタファーとしての雷、…と、手を替え品を替え「雷」の特性が利用されています。
中でも個人的に最も唸らされた一節は、"恋 それは蓋し神の声/天災にも似た不意なもの/無差別に人を襲い 焦がす/胸を焦がす"です。フォーリンラブを自覚する瞬間の描写に高次元の存在を持ち出してきて、時代錯誤な"蓋し"を用いる仰々しさと、"無差別に人を襲い"などと物騒なフレーズが違和感なくラブソングに溶け込んでいるところに、かなりの独創性を感じました。余談ですが、『「蓋し」ってきょうび聞かねぇな』と思って記憶を辿ってみた結果、おそらく僕の中で最も新しかった使用例は『戦記絶唱シンフォギア』の台詞「けだし名言ですよ!」だったため、実に7年越しに再度耳にしたことになりますね。笑 同例のように、「名言」ないし「至言」に結び付いて、半ばイディオムと化している言葉との認識でした。"神の声"="恋"も発話されたものなので、本曲の例に於いてもコロケーションとして自然でしょう。
お次は音楽面を語ります。冒頭に紹介した『ミーティア』のインタビューをソースとするに、本曲はギタボの熊谷さんが「打ち込みで作った曲」だそうなので、確かにバンドらしさは比較的薄いように感じました。ただ、その分パーソナルなセンスが存分に反映されていると言いましょうか、熊谷さん曰くの「普段はバンドの曲をあまり聴かなくて、EDMとかテクノとかばかり」や、「歌詞より重視したのがリズム感」などの言を、それぞれ裏付けるようなサウンドが披露されています。
具体的には、イントロの雷鳴を代表として1番後間奏部でピークを迎える多量のSEインサート(e.g. サイレンの音、「緊急車両、左に曲がります」のボイス、機械の軋みとも動物の鳴き声ともつかないソリッドなサウンド)の遊び心は、DTMer的な感性に基いたものだと共感出来ましたし、Aメロ前のダンサブルなシンセリフに僕が平沢進っぽさ(「帆船108」+「Archetype Engine」+「BERSERK -Forces-」的な趣)を感じた点も、バンド経験のある人がソロで深淵な楽曲世界を作り上げる際に認められるような凝り性気質の産物と主張します。
また、お囃子を思わせるビート感がトラックを支配している部分も日本人としては馴染みやすく、そこにボーカルラインとシンセのピークが重なるサビの"Ms. Thunderbolt Ms. Thunderbolt"は、熊谷さんが狙った通りに「体が自然と動く」セクションになっているとの理解です。文字に起こすと間が抜けた風に映ってしまうのは扨置き、「ミズ・サンダーボルト (ギュイギュイギュイ-↑) (カッカカッ)」の繰り返しが非常にツボだったと書けば、言わんとしていることが幾らか伝わるでしょう。
どうせなら本記事を【2019年のアニソンを振り返る】企画に組み込んでしまいたいので、最後に簡単にですが表題曲の「Good Morning World!」もレビューします。またも『ミーティア』上の記述を借りてきますと、製作者自ら「気に入っています」と述べているBメロが、僕としても歌詞・旋律共に琴線にふれたパートでした。"神々の霊峰 新緑の宮殿/岩窟の最奥 蒼穹の涯"から溢れるフロンティアスピリットに、科学冒険譚の主題歌たる貫禄があります。『Dr.STONE』の音楽に関しては、後期OP曲のPELICAN FANCLUB「三原色」(2019)と後期ED曲の佐伯ユウスケ「夢のような」(2019)も結構なフェイバリットで、特に前者は振り返り企画の一環でレビュー対象としたい候補には入っているため、いつか単独記事を立てるかもしれません。
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