相対性理論「BATACO」レビュー 歌詞 意味 | A Flood of Music

今日の一曲!相対性理論「BATACO」

 【追記:2021.1.4】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:春|卒業/別離】の第八弾です。【追記ここまで】

 「今日の一曲!」は「卒業」にフォーカスします(このタイプは第二弾以来)。選んだのは相対性理論の「BATACO」で、4thアルバム『TOWN AGE』(2013)の収録曲です。

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 歌詞を特にひねらず言葉通りに解釈しますが、"来月からは晴れて予備校生"というフレーズが出てくるので、描かれている時期は3月だろうと推測しました。予備校にも色々/個人の戦略も諸々でしょうから、必ずしも4月から予備校通いになるわけではないと思いますが、以下この点を歌詞と絡めて補足します。

 この曲に於ける"わたし"は、「大学受験のために浪人として予備校に通う境遇にある」という理解です。完全なる主観ですが、歌詞から醸されている雰囲気には高校生のそれを感じ取れるので、資格試験や採用試験のためという気はしませんし、失敗や孤独を窺わせる表現もあるため、現役で通っているふうでもないなと思うから…というのが根拠になります。

 真っ先にここを掘り下げておいてなんですが、僕は進学に関して予備校のお世話になった(浪人)経験がないため、以降に書くような予備校生/浪人観は単なる想像でしかないことを断っておきますね。時期が時期だけに一応の配慮です。


 浪人生の悲哀というか、直接的な切なさを感じさせるフレーズに胸を締め付けられます。"ああ真面目なだけじゃ世の中渡っていけない"、"大逆転狙いの末 泡になって苦笑い"、"隣の芝生が青く見えてから怠惰な毎日"など、想定のルートを外れてしまった人間の弱気な面が上手く切り取られていると思う。

 ここだけを取り立てるとネガティブに感じられるかもしれませんが、"退屈なのはかまわないどんとこい"や、"浮いているのは気にしないドントウォーリー"など、ある種の開き直りを感じさせる一節も存在するため、事実は事実として受け止めつつも肩の力は抜けているような気がします。

 この感覚を押し広げたものだと思いますが、"誰だって夢を見るわ"に続く形で登場する、"だってコンビニエンスじゃお腹減るもの"と、"そうよお得になるからペアを組んだの"という歌詞が、この曲の中では大のお気に入りです。どちらもリアリスティックと言いましょうか、摂取しても満たされないものがあることと、一人で居ること以上のメリットが存在することを、孤独の中から見出したといった趣が素敵に映ります。

 そして最後には"入学式目が合ったあなたのために"と、他者を思いやる余裕まで生まれているのも前向きで良いですね。自身を保つために何らかの目標を…という義務的な向きも少しはある気がしますが、一人を是として塞ぎ込むよりはよっぽど健全だと思います。"わたし泡になる定め"だとしても、"後悔ないけど"と結ばれているので何よりです。


 歌詞以外にも言及しますと、特に好みなのはサビメロで、旋律自体はひたすらにポップでキャッチーでありながらも、息せき切るような勢いを感じさせるボーカルの質によって、得も言われぬ切なさが醸されている点を評価しています。タイトルの通り、とても"バタコさん"らしくて表現力に富んだ歌い方だなと。

 低音ボーカルとリズミカルなメロディが心地好いCメロも素晴らしく、"入学式"のくだりを挟んでラスサビへ突入するまでのギターの盛り上がりには高揚感を覚えます。ギターはアウトロでも格好良くて最高ですね。


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