●起業はしたけれど・・

 起業(独立)した人が時々、仕事探しに相談に来ていた。ハローワークに相談にくるということは、起業した事業がうまくいっていないことになる。

 高齢者で年齢的な理由で廃業した場合は(第60話)自営業(フリーランス)、キリギリス人生の末路

で書かせていただいたが、30~50歳代のまだまだ働き盛りの人では、起業したものの仕事や売上が減り、生活のため(廃業はせずに)空いている時間に少しでも働きたいという相談が多かった。

 

起業もいろいろ

 2010年頃までは、起業(独立)しても1年で5割、3年でプラス3割が廃業すると言われていた。しかも店舗を構えたり設備投資をすると、まとまった資金も必要なので、下手をすると多額の負債を抱えることにもなり、実際に起業するとなると相当の覚悟が必要だった。

 ただ、最近はパソコン1台で簡単に副業として起業することも可能で、起業するビジネススタイルも、従来のBtoBやBtoC以外にも最近はネット上でのCtoCやBtoBtoC、CtoBtoCなど多様なビジネススタイルも可能となり、初期投資が少額で済み、とりあえずやってみようと挑戦しやすくなってきていることは、資金がなくても商才に長けている人にとってはいいチャンスだと思う。

 

 こうしたネットビジネスをまず副業から始めたい人向けの支援サービスやセミナー等については、SNS上でいろいろと掲載されているので、そちらを参考にしてもらうとして、今回は昔ながらのBtoBのビジネススタイルで起業(独立)した人が職業相談に来た話をしてみたい。

 

起業に必要なものは?

 BtoBのビジネスを起業(独立)する時に、まず必要なものは「当面の顧客」「営業力」と言われている。顧客は知人や友人、前職のコネ、何でもいいので人脈をフル動員して紹介してもらい、さらにその顧客から新しい顧客を紹介してもらうのがベストなのだが、それを確保せずに、「この商品があれば必ず売れるはずだ、この技術や資格・サービスがあれば必ず仕事はあるはずだ」と勝手な思い込みから起業すると、厳しい結果が待っている。

 

●顧客(法人)が見つかりません

 40歳代男性。宝石加工の求人はないかと来窓。一応探してみたが、(全国ベースではいくつかあったが)さすがに地方でこんなレアな求人はなかった。本人も無理だろうとはわかっていた様子。

 事情を聴くと・・・

 数年前に宝石加工の会社を起業したが、コロナ禍で仕事が激減してしまい、生活が苦しくなり、廃業はしないが、外」でも働くことにしたとこと。

 それなら宝石加工にとらわれず、職種を広げて探すようアドバイスしたのだが、やはり宝石加工にこだわりたいのか気が乗らない様子。

 求人がないのだからどうしようもないのだが、起業したときの苦労話などいろいろ話しているうちに本人から、知り合いやコネもなく新規の顧客をどう開拓すればいいか困っているとの話を聞かされた。

 当面の顧客は確保して起業したものの、コロナ禍という不運はあったとはいえ、起業後の継続的な営業活動をしなかった、あるいはできなかったためと思われる。

 

 本来なら、ここでは就職活動の相談には応じるが、当然ながら事業の経営や営業的な相談には応じられないので、通常は「そうですか、大変ですね」ぐらいの回答でスルーすべきではあったが、私の場合、生来のおせっかいな性格もあり、たまたま前職で人事部の前に法人営業の経験があったので、顧客(法人)開拓方法について、少しだけ日頃の職業紹介を通じて感じていることを話してみた。

 

長くなるので次回の後編につづく