その日は朝から夜だった…じゃない。朝から寒かった。
生活サイクルが狂いまくってた私は、その頃は確か朝に眠る時期だった。
さぁ寝るぞと思いつつ布団のなかでうだうだごろごろ(※1)していたところ、唐突に電話が鳴った。
【着信:A】
電話かー、珍しいなぁどうしたんだろう。
それぐらいの軽いきもちで電話に出ると、すすり泣く声。
「助けて…っ!」
え、誰?と思うぐらい声が違っていた。
今思うとものすごい演技達者なのだ、Aという人物は。
「何かあったんデスカ」
思わずカタコトにもなる。相手は泣いている。ただごとではない。
朝の6時である。ただごとではない。
話を聞いてみると、自分がどこにいるのかわからないとのこと。
どうやら大阪に来ているらしいと見当をつけて、
大阪に住んでいたワタシに助けを求めて来た模様。
気がつくと繁華街にいた彼女。
自分が何をしていたのかわからない…その恐怖には痛いほど覚えがある。
「あなたしか頼れる人がいないの!」
その言葉が何を揺り動かしたのかは知らないが、
ワタシは始発っぽい電車に乗って、指定の駅へと向かっていた。
まだ引き返せることに、ワタシは気付いてはいなかった。(※2)
※1.不眠の典型的な症状。眠ろうと思うと眠れないまま朝を迎える毎日。
※2.後からするから後悔。先に出来るものならやっておきたかった。