椅子に変な座り方をするのが癖の抄子は、相変わらず椅子を逆に置いて跨り、背もたれに胸をもたせかけて机にひじをつきながら物思いに耽っていた。
机の端に立てかけたiPadからはお気に入りの占い師の最新動画が垂れ流れる。
あらかた二日酔いの抜けきった寝起きの日曜日、夜9時半。
「あした、だりーな...」
不穏なメールが会社PCに届いた金曜日の昼から、ろくでもないテンションでいる抄子の体に、火曜日の面談までの時間が重く長くのしかかる。
「だりぃ...」
土日のうち一日は、セルフメンテナンスと決めている抄子は、昼間に作り終えて冷やしてあった残りの餃子スープをうだうだと冷蔵庫から取り出してきて、紛らわすように箸をつけるのだった。
抄子にとって、大事なバースデー週間が、一通のメールと一瞥の上司の目の温度の記憶により、どんよりと重く塗りつぶされるのが悔しく、必死に楽しい思い出だけに塗り替えようとした。
前祝いに誘い出してくれた友人との土曜日の思い出。やはり、同性の旧友と過ごす時間ほど心落ち着くものはない。
不意にもらったぬいぐるみたちを眺めながら、もうどうにでもなりやがれと、現実を放棄する。
ぼくの申請したささやかな有給という名の"夏休み"が、絶賛ジョブチェンジ活週間と消えゆくのか、単なるマイナーチェンジの現状維持に安心して浪費されるのか、或いは多少の朗報に身が引き締まって滝に打たれにいかなければいけなくなるのか、
いづれにしても何かによって消費されるに変わりはないのだ。
生理一週間前のあまりのダルさに、跨っている椅子から後ろに投げ出してだらつかせていた足を戻して立ち上がり、抄子はお行儀よくまとめられたぬいぐるみ陣たちに割って入って、汗を帯びた鼻先を彼らのモフモフで埋めるのであった。
