のび〜〜〜〜るチーズ。
ワイワイと華やぐ喫茶店の音。
抄子の心の声
(これだこれだこれだコレだああっ♡)
ワフっと一口で頬張る口元。伸びて絡まったチーズは指ごと舐める。
抄子の心の声
(うむむっ サイっこぉ〜にうまいっ)
「お嬢さん、ほっぺた落ちましたよ、」
もぐもぐしながら振り返る抄子の視界に金髪長身ウェイターのケイ氏。
抄子「んもぐんもぐっだっておいしいんだモンっ」
ケイ氏「あらあら 本当においしそうに食べますね」
抄子「ひとくち上げるよ」
冗談でアーンとチーズを伸ばしながら一口ちぎってケイ氏に差し出そうとする抄子。
「パクっ」
ノッてきて長身を屈めたケイ氏、抄子の手首をかるく掴んで頬張る。
抄子「クフっ ななっ、ほんとに食べなくても」
長身を元の姿勢に戻してチーズの糸を口に押し込みながら微笑むケイ氏。
ケイ氏「ふむったしかに美味しいですね」
ポカンとする抄子の口元についたパンの粉を小指でサラっと落としながら、
「食べ終わったらほっぺたつけて帰るんですよ」
そう言ってにこにことキッチンへ戻ってゆくケイ氏。
抄子、ちょっとふわふわしながら頬を押さえて、目をくるくるさせる。
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「カラン」 氷の溶ける音、半分に減ったチーズトーストの皿の横でゆっくりと気泡を上げるレモンスカッシュ。
最高の木曜の夜だ。
それにしてもケイ氏は何と言うか、人を小馬鹿にしている。ー全く、小娘だと思ってー
そう思いながらも悪い気はせず、ルンルンと残りのチーズトーストに手をつける。
少し冷めかけたチーズトーストには横に添えられたヨーグルトが合う。
カチャリ、カチャリ。ヨーグルトを小さいスプーンで掬い上げ、チーズの部分にのせて、パンの部分には優しく塗り込む。
モフッ ヨーグルトが垂れないように頬張り、至高の表情で目をつぶる抄子。
もぐもぐ、もぐもぐ。
持っていたスプーンと残りのチーズトーストを皿に置き、両手を合わせる。
抄子の癖だ。
抄子の心の声
(んむ〜 幸せだっ おいし過ぎるっ)
右に左に顔を傾けながらスリスリと両手を合わせる抄子。
その様子を物珍しげに眺める斜め向かいの客。
抄子の心の声
(んもぐっんもぐっ たたみかけるチーズの味、チーズの下から滲み出るバターの旨み)
(神さまァっ 今日もありがとぅ〜〜〜〜)
エコーがかかった声の中で最後の一口を頬張る抄子。
銅鑼の音
ドーーーーーーーン
目の前に降臨する黄金色に包まれたカミサマ、
満面の笑みで"昇天中"の抄子を眺める。
抄子、昇天しているので銅鑼の音も気にならずに最後の一口を堪能し、ゴクリと呑み込み、目を開ける。
笑って開いてないような目で覗き込むカミサマ。
顔がデカ過ぎて二頭身、頭頂はつるつるで、横髪や眉毛と髭が白髪のおじいさん。金の着物を着て杖をついている。
抄子「ぎょえええええええ」
両手を上げて驚く抄子。
カミサマ)にこにこっにこにこっ
ややあって
カミサマ「コングラッチュレーショーン♡」
抄子「フワッツ?!?!?!」
カミサマ「当たりじゃ」
抄子「何がっ?!」
カミサマ「おぬしの"オイシイ"が見事通じた。
して今からおぬしにコレを授けよう」
カミサマ、両手の袂から光の筋を放出して両手の"気"で光の輪っかをつくり、抄子のおでこにのせる。
抄子、ポカンとしながらおでこの様子を手で探る。何かが乗っている感触はない。
抄子「おいじじい」
カミサマ「じじいではない、カミじゃ」
抄子「カミだかなんだか知んないけど、わたいはまだ死なないぞ」
カミサマ「ホッホッホ、当たり前じゃ」
抄子「おでこに何のせやがった」
カミサマ「お口が悪いのお〜ぉ、イケメンの前とは大違いじゃ」
抄子「悪いけどじじいに興味はない、わたいを現実に戻せ」
カミサマ「お主を今日から天使に任命しよう、
その名も、オイシイ天使、戦士ではなく天使じゃ」
抄子「ことわる」
「天使だか戦士だか知んないけどね。わたいは戦うのも救うのもやだーよ、できないよ」
カミサマ「ふほっ、まあ、いつまでそう言っていられるかな?ふぉっふぉっふぉ」
カミサマ、両手をくるくると回して抄子の前にペロペロキャンディのような時空間を作り出す。
慌てる抄子「おいじじい、何すんだ」
カミサマ「おっと、これを忘れとったわい」
両手をぐるぐるする合間を縫って、袂から砂時計型のペットボトルをポイっと出す。
ペロペロキャンディの渦の中央でくるくると回るペットボトルには、透き通ったレモンイェロウの微炭酸の液体が。
カミサマ「その水筒が空になるまでに戻るのじゃ」
抄子「だから行かないってば」
カミサマ「神の世界は残業禁止でな」
抄子「わわわわわ」
さらに激しくなるペロペロキャンディ色の渦。
引きずり込まれる抄子の足、
カミサマ「そぃじゃあ、行ってらっしゃぁ〜〜〜〜〜〜〜ぃ♪」
反響するカミサマの語尾、
抄子「わあああああああああ」
♪エンディングテーマ♪
つづく。

