_______なきみへ
雨の中に
光を落としてくれる
そんなきみの
歌はぼくに
色んな気持ちを思い出させた
きみから離れて
出航したきみの舟が
ぼくに色んなものを運んだ
ぼく自身が当の昔に
失くしてしまった
心の扉の鍵穴に
きみの舟が
かちゃりと
はまって開けたんだ
ぼくは
震えてきて
涙が垂れたんだ
ぼくの扉を
ぼく自身も触ることのできなかった扉を
きみの舟が開けたんだ
きみの知らないところで
きみの舟に
ぼくは救われたのさ
無人の舟
無人の舟だけれど
それはとても
温かかった
ぼくはいつも
舟と舟主を混同してしまう
肉体と精神が
繋がっているようで
指示系統が違うように
きみときみの舟も
存在としては
分かたれているのに
ぼくは
ぼくの大好きな食べ物を
出してくれる人も
好きになる
その好きが
ぼくの生命に直接的に関わるほどに
巨きく深く
重くなって
ぼく自身を苦しめ始めた
このままでは
ぼくはきみの舟を壊してしまう
ぼくの感じていた
きみの舟への”安らぎ"は
きみへの"好き” そして
”欲"へと
その間を大きく 激しく
揺らぎ始めたんだ
ぼくの中を
暴走する"振り子”に
ぼく自身と
そしてきみとの関係とを
ぶち壊されないように
ぼくはこの
育ちすぎた重力を
振り子の勢いに委ねて
切り離した
幅跳びをする時に
助走が要るように
振り子を切り離す時も
いつもより大きな
予備動作が必要だった
勢いよく飛んでって
空に消えてった
ぼくの体は自由で
その振り子もぼくから自由
もう 見つける術はなく
探し出す必要もない
ライオンは
目の前のかわいいウサギと
友達になりたいと思っているうちに
ガブリと噛み殺して食べてしまいそうな
そんな不安から解放されたんだ
雨の中に
光を落としてくれる
そんな歌をのせた舟が
ぼくを素通りしてゆく
ゆく先を知らなくても
歌は海いっぱいに広がって
ぼくはそれだけで
じうぶん倖せなんだ

