銀髪のカッコいい女が、豪快に日高屋のタンメンを啜る。やっと寒くなり始めた晩秋、目の前に座るきらきらとした目の新人に話し込む。
天津飯をうまそうに頬ばっていたレンゲを止めて、真剣そうに聴き入る新人。
彼女たちは連日の激務に耐え、空腹には最高のワンコイン晩メシをここぞとばかりに掻き込みつつ談笑を忘れない。
新人は銀髪の女の、意外な人情味を垣間見て興味深げにレンゲを忘れていた。
一枚の手紙 - 新人カメラマンとして無償で撮り出した彼女の、初めての報酬だった。
涙が出た。-
彼女のカメラマンとしての原点、そこから始まった被写体への思いをつらつらと聴き、新人は天津飯の旨さよりも胸打たれた。
適当にシャラシャラと着飾っている、ただの銀髪のマダムだと思っていたら、大間違いのビッくらポンだったのだ。まだまだ見る目が浅い。
「アシスタントができればカメラマンも上手くできるよ」- 5年前には響かなかったであろう言葉が"新人"に刺さる。
「アシスタントなんてわたしに向いていないんです」そう弱音を吐いた時に言われた、当時の先輩の言葉が重なる。
-向いている人なんていないよ-
銀髪の女も、"新人"も、各々の新人時代を想起しながらメシを頬ばる。
成田の土日の夜は繁盛して、仕事後の汗臭そうな中年や兄ちゃん達が入れ替わり立ち替わりメシを食いに来た。
まだ食べきらぬ新人をよそにそそくさと二人分の会計をしにいく銀髪の女を、追いかけるように天津飯を掻き込みきる新人。
慌てて席を立つ間際に、会計場から「ゆっくり食べてきな」と言いかける銀髪の女を制して、ペコペコと一緒に店を後にする新人。
-あの子とあの子はいい写真を撮るよ-
話題に出た名前やら話の内容をつらつらと思い返しながら、いきなり食べすぎてはち切れそうな腹を抱えて帰路につく新人であった。
