32歳独身女とチャリンチャリンな男との終わり、礼節と金の切れ目 | 森由 壱 - tune bride -

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... という 、夢を視ました 。


その男は相変わらず、微妙そうな顔をしていた。
気のない返事を今日もしてくる男のよそよそしさを辛抱して楽しく振る舞うのに疲れて、ついにわたしの堪忍袋の緒はおぶち切れになられた。

ぶっちん、ぶっちん、ばちん!

わたしは感情的な怒りを吐きつけながら、プレゼントをしようとスタンバっていたけど自分で使うことにしたPaul Smithの三つ折り財布を、げき狭キッチンの床に叩きつけそうになっていた。

出るわ出るわの罵詈雑言。自分を棚に上げて、わたしはその男のことを何度となく「タダ飯喰らい」とののしった。















自分の「イタい」金を支払って得ようとする「楽」のアテが外れた時、その怒りや悔しさ、呆れが身に染みる。

「期待はずれ」という結果にイタいお金を注いでしまったと、気づいた時の落胆たるや。

人とお金に必要以上の期待をすることは、こんなに精神衛生上よろしくない事なのかと、ハッとした。

うちの仕事現場のカミナリ社長の気持ちが、少しわかった気がした。















セラピストをカタるその男を、マスターは彼らしからず褒めた。

理由をきくと、まず第一に、金払いがよかった(わたしの分も一緒に払った)こと。そして次に、ダラダラと長居をしなかったこと、らしい。

笑える。第一に関しては、わたしは初めからその男に例のPaul Smithを持たせ、そこから払うようにと金を仕込んでいたのだ。

第二については、男曰くケツが決まっていたらしいので、わたしも快く時間を知らせ、帰らせた。














のちにその男の書く「写メ日記」なるもので、そんなものは存在しなかったのだと、判別するのだが。














男はわたしとタルトタタンの空き皿をそそくさと後にしてPaul Smithを粗雑に「返却」した後、15分後に呑気に写メ日記を更新して、その内容は、自宅付近らしきすし屋ですしをシバいている、うまい、みたいなものだった。














フザけんなという、レディらしからぬ汚い言葉がわたしの胸に留まれずに音声となって部屋の壁中に乱立した。

漫画の吹き出しにすれば見開き全てが10めくり位は埋まったであろう、罵詈雑言の時間が流れた。

わたしは、先程遅れてやってきた怒り心頭に身を任せながら帰路につき、一応百歩譲っていい女として振る舞う為に、その男に「お礼」DMを送っておいた身であった。

そのDMの既読は、翌日昼になるまでつくことはなく、反してその男の「日記」は、今日の二人とは全く関係のない内容で、立てつづけに呑気な更新がつづけられた。

「脱毛して、肌がボロボロだ。こんな僕だけどよろしくねん♡」みたいな調子だ。

白々しい笑いと共に、呆れてしまった。

これにわたしはうんマンと注ぎ込んだのか。客が接客し、客が奢り、プレゼントし、客がお礼メールを送り、当の「セラピスト」は礼を言うことも送ることも、世辞を言うことも接客することも一切せず、のうのうとプライベートの楽しみの為にケツでそそくさと帰り、客のアフターケアも人としての礼節もかきながらすしを楽しんでいるわけである。















わたしは改めて、金でひとに期待をするのはやめようと思った。

金で思い通りになる関係ほど虚しいものはないのに、金ですら思い通りにならない関係の何に価値があるのか。


その男は最低であったが、わたしはそいつの愛想笑いから、己の人生に於いて、又揺るぎない定石を得た。

ひとには期待をするな、男を金で買うな。

わたしはしょうもない男のしょうもなさすぎるブログを閉じて、二度とそれを起ち上げることはなかった。