あまりつけたことのない
マニキュアを塗ってみた
発情したネコみたいな手に見えた
気持ち悪くて
逆に見入った
昔母の化粧台にあった
マニキュアをあさって
内緒でつけたのを隠していたら
すぐに見つかって
まるで悪魔に魂を食われた子を見るごとく
ものすごい剣幕で忌み嫌って
わたくしを父に告げ口し
なじり叱り倒したあげく
もう二度としませんと誓わせ
「イエスキリスト」に「お祈り」させられた
今から考えると母は
わたくし「娘」が
「女」になることを嫌悪したのだ
「人」として人格を築くことと
「女」や「男」としてのアイデンティティや
性的魅力を発見してゆくことが
これほど異なるポジションで認識されていること
本来つながっていてひとつであるはずのことが
まるで天使と悪魔のように
別々なテーマとして扱われていること
きっとその餌食として
さっきマニキュアを塗った時の
わたしの感情があるのだろう
高尚な「人格者」になろうとしても
わたしたちのスタートは皆
オスかメスかのセクシャリティにある
どちらともいえない「中性」を
生きる人だって
はじまりは母と父との
行為なのだ
セクシャリティに興味を持つことを
忌み嫌い制裁することは
すなわち命が生まれる過程自体を
「不潔」と吐き捨てる
かなしい行為であると
わたくしは思う。