欲望と呼ぶには
それはあまりに白かった
白くて屈託のない
子どものやうな生き物だった
欲望は意外と疑い深く
率直に相手を知りたがった
欲望ははじめての相手に対して
とても礼儀ただしく
強引だった
ことばを全てひるがえして受け取る
そのさまは
さながら真実の匂いを知っている
ナイトのやうに
相手の鎧を尽く
引き剥がしていった
白い欲望は
子どもでありながら
ナイトだった
とても無垢で
計算高いナイトだった
知的で無計画
本能のままに動く白い物体は
ただ目の前の相手と
肉体の交流を楽しんだ
ナイトは相手を王女にした
女は黒猫から王女になった
ナイトの衣服の中は
ただの欲望だったかもしれない
けれど
彼は欲望が服を着たナイトではなく
服を脱いだナイトの低脳な欲望でもなく
はりぼてでもない
愚鈍でもない
とても表裏の無い
堂々たる欲望だった
むしろ堂々たる欲望が彼をナイトにした
彼のナイトたる所以は
彼の白い子どものやうな欲望だった
欲望がナイトの剣に真実を与え
黒猫の体毛を剥ぎ取って
王女にした
欲望は不思議だ
黒猫を王女にもするし
子どもをナイトにもする
さういう欲望は白い
自分を王女にしてくれた
ナイトのあまりに清潔な寝息を抱いて
黒猫は今まで
黒猫でいつづけたことに
少し安堵した
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