或る女の回想 | 森由 壱 - tune bride -

森由 壱 - tune bride -

... という 、夢を視ました 。

あなたを好きになった理由は

あなたの手が誠実だったから
 
あなたを好きかわからない理由は
あなたの目が冷たくなった気がしたから
 
あなたといたい理由は
あなたが面白いから
 
あなたに会いたくない理由は
いつも夜だから
 
あなたに..
 
 
 
 
そんなことをつらつらと考えながら眠ってしまった
 
ほんとうのところ
あたしはそんな事を考えても
仕方のない相関図にいて
 
貴方はむしろ
いつもうしろめたさを何処かに
置き忘れながら接しているのかもしれない
 
 
ひょうひょうと
柴犬のような貌をして眠るうらには
何処かに自覚が
あるのかもしれない
 
ただ
生きた穴埋めのように
わたしを使っているだけだから
 
だから
鍵をしめるのかもしれないし
けがらはしいのかもしれない
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
女はそこまで考えて
湯のみに口をつけた
 
「尊いレンアイ ッて何なの」
窓の外に鳴る秋雨に眼をやる
 
 
ほんとうに尊い気持ちならば
触れられないわけで
それはもう レンアイ などの成立しない
プラトニックなものに属するわけで
 
それよりも少し尊くなくて
触れられる範疇にあるものと
たまたま落ちるのが レンアイ だとしたら
その時に多少
尊い気持ちへの罪悪感は生まれるかもしれなくて
 
 
それさへうまくいかなくて
もっともっと下位の
淋しさを埋める為だけの
ギジレンアイ というものがあって
ともすればそれは
踏み躙るやうに塗り潰すやうに
自分と相手を欲情の塊に
「オトシメ」ている行為なのかもしれない
 
 
「尊い」性行為が
この世にどれほど有るというの
性行為に及べること自体が
「尊い」気持ちからすでに離れている
離れていないとできない行為の筈である
 
ブッダと寝たいと思った女がこの世にどれほど居るのか
聖母マリアを性の対象として視る男がこの世の何処にいるのか
 
一番尊いコイの気持ちは
手に取ってできるレンアイとそこからもう
かけ離れていて
手に取ってできるレンアイすらも
大事にすればするほど
おぼつかなくなるのがオチで
 
そんな時にもうどうでもいいやって
投げやりになったり
もう疲れたって時に
一縷のまぎらわしを期待して
 
寂しさを埋める為に遊ぶのが
肉体の関係ということなのだろう
 
 
 
 
つまり尊い気持ちと肉体の関係というのは
王様と奴隷のように
上位と下位の頂点にいるわけだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
女は座っている椅子をくるりと回転させて
柴犬のやうな寝顔の男を思った
 
自分が、下位の行為をしていることに
男はどれほどの罪悪感を持つものなのだらう..
 
 
その罪悪感が尊い感情に対してだとすると
自分が蹂躙している目の前の女に対して
 
どんな気持ちを抱いているのだろうか
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そもそものはなし
わたくしはそれほど奇麗な女ではない
肉体の関係として
欲情の対象になれるやうな体つきでは
そもそもない
 
それに気づいた時
蹂躙する満足感さへも与えられない女と
一夜を共に「させられ」て
時間を無駄にした疲労感と
まとはりつくオンナの愛情が
生理的に受け付けなくなった表情を
いかに隠すかで男はこわばって
 
振り切るやうに去ったのかもしれない
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「男ってほんっとに勝手」
止まない雨と
今しがた「身勝手」というレッテルを貼付けた柴犬に
辟易しながら
 
自分の初めてをいとも簡単に
そんな男にジュウリンされたことに
後悔する自分を探しながら
 
2日半経っても尚消えない
子宮の感覚と照らし合わせて
 
もう二度と来ないかもしれない
柴犬みたいな男の
意外にも尊くて大きい、白くて太い手の感覚を
それより細い指の先で思い出していた