不可視日記 ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅡ | 森由 壱 - tune bride -

森由 壱 - tune bride -

... という 、夢を視ました 。

 

しゃべらなくなったきみへ    .    ことりみつき

 

 

 

しゃべらなくなったきみへ

あたしはパンケーキにバターを塗りながら

あなたに語りかける

あまりにもくだらないはなし

あまりにも低脳なはなし

 

 

しゃべらなくなったきみは

存在しないかのようにもくもくと過ごす

それでもあたしはしゃべりかけてる

つもりでもぐもぐとその場をみつくろう

あまりにもちぐはぐなえがお

あまりにも低脳なえがお

 

 

しゃべらなくなったきみへ

語りかけるあたしの

声は受け皿もないままに

あてもなくあなたの後ろの

宙へゆく

あまりにも不如意な時間

あまりにも無為な時間

 

 

なんとかしゃべりつづけようと

あなたの変化を探すけれど

あたしの視力が霞んでか

あなたのすがたがよく視えない

よく視えない

 

 

片方の目をつぶって

指を左から右に動かしてみる

あなたは横をむいているからきづかない

テレビを観ているからきづかない

もう片方の目をつぶって

もう一度指を右から左に動かしてみる

指はくねくねと曲がって

まるでひものようにねじれて

あなたを素通りする

素通りする

 

 

 

嗚呼いつか遅くないうちに

あたしの片方の目は死んでおしまいになるのに

こんなに近くにいるあなたの

声も聞こえないし 姿もよく視えないわ

 

嗚呼この耳もどんどん遠くなる一方なのに

あなたの声は無にひとしく

全くわたしに向かってこないわ

あなたはわたしに向かってこないわ

 

 

あたしはパンケーキのすき間にバターを入れ込みながら

とってもとりとめのない気分になった

とっても持ちこたえられそうになかった

 

 

 

こんなのだったら

あたしはひとりぼっちのほうが

どんなにあたたかいかしれない

 

 

 

 

ふとそう思って見上げると

忘れたように気まぐれに

あなたが アナタとして

ふとしゃべったり目で笑ったりする

 

 

あたしは小躍りしてそれに飛びつく

そうするともう一瞬であなたは

さっきのヒトに戻っていて

 

 

あたしの小躍りはエラーメールで

即刻あたしのもとに直帰してくる

 

 

あたしは のみもしない

泡のなくなったカプチーノを無駄にすすってみては

ありもしない希望やら

支えやら安らぎやらをきっときたいしているであろう己の

バカさ加減にほんとうは

 

 

目も耳もなくなってしまえ

永遠にアナタもその他のぬかよろこびも

視えなくなってしまえばいい

足も口もなくなって

もう一生

ふらふらと目の前の幻覚についていったり

無能に過ぎる会話を

このへらず口から湧きいでぬように

 

 

できるならばこころもろとも

このパンケーキに塗るバターとともに

黄色い生地に溶け消えて

 

 

永遠におなくなりになったらどんなに

あなたもあたしもらくであろうと

 

お互いに消えて欲しいと思っている

何かを引きずらずにすむのにと

 

 

 

 

 

味のよくわからなくなった

ただのくさりのようなものもろとも

あたしのからだもろとも

このパンケーキの中に

吸い取られて消えてしまえばいいのにと

 

 

 

こころになんどもひっかき傷をつけて

しゃべらなくなったあなたのかおから

視線を落とした