斎藤工、MEGUMI、志磨遼平、竹中直人監督 登壇!『零落』公開記念舞台挨拶REPORT | C2[シーツー]BLOG

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 ⻘春漫画の金字塔『ソラニン』を放ち『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』のアニメ化が決定したカリスマ漫画家・浅野いにおの 新境地にして衝撃の問題作を実写映画化した『零落』が3月17日(金)より公開。

 

 

 ⻘春映画の金字塔『ソラニン』を世に放った漫画家・浅野いにおの衝撃作を、デビュー作『無能の人』から10本目の監督作となる竹中直人が映画化した『零落』が、2023年3月17日(金)に公開を迎え、翌日18日、公開記念舞台挨拶が池袋 HUMAX シネマズにて行われた。 舞台上には竹中監督をはじめ、主人公の漫画家・深澤薫を演じた斎藤工、深澤の妻・町田のぞみを演じるとともに本作のプロデューサ ーも務めた MEGUMI と、本作の音楽と主題歌「ドレミ」を手掛け、ライター役で出演もしているドレスコーズ・志磨遼平が登壇。上映後の観客を前に、それぞれが作品への思いを語り、竹中監督は「浅野いにおへのラブレター」斎藤は「現代の『人間失格』だ」と口にした。ま た、明後日20日に67歳を迎える竹中監督へのバースデーサプライズも行われ、感激した竹中監督が照れまくる場面もあった。

 

REPORT

 

 

 登壇者が姿を見せると、温かな拍手が映画館の空間を包み、竹中監督らも作品を届けられた安堵の表情を浮かべた。そしてまずは主演を務め、漫画家の“極限の業”を演じた斎藤が、「原作に出会った時に、本当に事故のように衝撃が走って、自分のことを言っているというか。自分の現在地というか、心のアウトラインみたいなものが映って描かれてしまっている気がしたんです」と告白し、続けて「撮影の期間は、普段は人に見せないような心情で竹中組の中を漂っていたので、何か皆さんの心に、どこかグサリと刺すような何かが宿っていたら、 皆さんに訪れていたらいいなと願うばかりです」と述べた。

そして以前より「大人の⻘春期にまっすぐ向き合った作品」とコメントしていた MEGUMI は「男性というのはそこ(自分の弱さ、傷に向き合うこと)にすごくフォーカスをして、そこの時間にたっぷりいるんだなというのを普段の生活からも思ってはいたんですけど。この作品でやっぱりそうなんだなとめちゃくちゃ感じました」と感想を漏らしながら、「竹中監督と飲んだ際、【レジェンドの迸るエネルギー】に感動して酔った勢いで「私がお金を集めます!」と口走ったのがきっかけでした」と今作での映画初プロデュースに臨んだきっかけを明かし、「無我夢中でついていくような勢いで、勉強させていただきました」と述懐。

 

 すると斎藤からは「現場ではいつも竹中監督のそばに MEGUMI さんの姿があって。ちょうど役(深澤の妻・のぞみ)でピンク色の髪をされていたので桃色の守護天使のようだった」、竹中監督は「いつも僕の好きなお菓子を差し入れてくれて」と撮影現場での様子が明かされ、MEGUMI は「現場では毎日何かしら小さな問題が起きるので解決しながら進んでいく感じでした」と当時を振り返った。

 

 以前より、映画製作現場における女性の立場向上についても高い関心を寄せている斎藤も「MEGUMI さんはプロデューサー業も本当に素晴らしくて感動しました。その後も正式にプロデューサーとしても所属されていて、女性としての MEGUMI さんがそういったことを先立って先頭に立ってやってくださることで、この業界がより良い方向へ進化していくんじゃないかとその背中を見ておりました」と力のこもった言葉を送った。

 

 また竹中監督は本作を「これは浅野いにおというひとりの作家、たったひとりの観客のために作った映画です。その作品の共犯者として、み んなのタイミングが合ってこの作品が撮れたと深く思います。趣里さんにしても、玉城ティナさんにしても、みんながこの映画に必要な人たちでした。斎藤工は斎藤工にしかできない深澤薫を作った。その妻を演じた MEGUMI はいつも僕を見守り、非常に難しいキャラクターを演じてくれた。浅野いにおさんに向けた、僕のラブレターです」と語った。そして「ドレスコーズの志磨くんが、最高のエンディング曲を作ってくれた」と、それだけでひとつの映画のような世界観のある MV も印象的な主題歌「ドレミ」についても話題が及び、本作への書下ろしとなっ た「ドレミ」には、竹中監督からあるリクエストがあったと志磨が明かした。

 

 「観客のみなさんが作品を観たままの感情を持って家に帰ってもらえるための曲が必要かなと思いました。それと、竹中さんからビートルズ の『 Don't Let Me Down 』みたいなイメージはどうかなというお話があって。たぶん深澤は自分にがっかりしている人なので。そこから歌詞を考えたのと、あとタイトルはひっかけて『ドレミ』ってやると竹中さんが笑うかなと思ってつけました」と誕生の裏エピソードを語った。

 

 続いて「ハッピーバースデートゥユー」の音楽が流れはじめ、3月20日に 67歳の誕生日を迎える竹中監督へのバースデーサプライズが。斎藤さんから竹中監督に、竹中監督の衣装にもぴったりな花束が贈られ、ふたりはがっちりと抱擁。竹中監督は、「自分が67歳になるなんて思ってもみなかった。素敵なメンバーに恵まれた。スタッフとキャストも含めて、この『零落』という作品に向き合えたことは一生忘れないでしょうね」「どんなにおじいちゃんになっても絶対忘れない。ありがとう、本当にありがとう」と、照れ隠しに声色を変えながらも、嬉しそうな笑顔を見せていた。

 

 また最後に改めて斎藤と竹中監督から締めのメッセージが送られ、斎藤が「志磨さんとお話したときに、僕らは“みっともない代”をもらっているとおっしゃって。人に見せないようなものを、そのみっともなさを歌う、表現することでご飯を食べていると。それは本当に僕もそうだなと」と 話し始めると、会場の観客も一層真剣に耳を傾け、「僕はこの作品は現代の『人間失格』だと思っていて、残っているものって、本質を突いた、ある種ネガティブなもので受け手とつながるようなプラトニックな装置が多いなと思って、この『零落』もそういった装置だと思います」と真摯に語った。

 

 そして、最後に竹中監督が「この『零落』という本と、ふと立ち寄った本屋で出会い、この美しい漢字を見て、絶対に映画にしなきゃいけないと思ったんです。この漢字が、夜の歩道橋に筆文字で浮かび上がったら、どんなにキレイだろうと。それに向かって撮りました。そして直感的に浮かんだ俳優たちに集まってもらって、出来上がりました。みんなの声色が積み重なってひとつのハーモニーを作っている映画になりました。いろんなものを感じられる映画です。1 回だけでやめないで、2 回 3 回、4 回と、繰り返し見て、そして耳を澄まして観てください」と 言葉を送り、本編中でも流れるドレスコーズの楽曲「スーパー、スーパーサッド」が鳴り響くなか、大盛況で終了した。

 

『零落』

2023年3月17日(金) より伏見ミリオン座ほかROADSHOW

公式サイト

 

 

STORY

⼈気漫画家として脇⽬もふらず駆け抜けてきた深澤(斎藤⼯)は 8 年間の⻑期連載を終え、真っ⽩な原稿を⽬の前にペンが動かずにいた。敏腕漫画編集者の妻(MEGUMI)からは今、売れている 20 代の若⼿漫画家を勧められ、漫画家としての⾃分に⼝を出してくる⼈気漫画家・牧浦かりん(安達祐実)やアシスタント。「どいつもこいつも」と不満を抱えながら、⾃堕落で鬱屈した空虚な毎⽇を過ごしていた。SNS には読者からの⾟辣な酷評、売れ線狙いの担当編集者とも考え⽅が⾷い違い、多忙を極める妻とは喧嘩が絶えず、離婚の危機。世知⾟い世間の煩わしさから逃げるように漂流する深澤は、ある⽇、「漫画はどちらかというと嫌いかも」という“猫のような⽬をした”⾵俗嬢・ちふゆ(趣⾥)と出会う。堕ちよ、⽣きよ!堕落への⽚道切符を⼿にした深澤は、⼈⽣の岐路に⽴つ……。

 

 

DATA

●監督:⽵中直人

●原作:浅野いにお「零落」(⼩学館 ビッグスペリオールコミックス刊)

●出演:斎藤⼯、趣⾥、MEGUMI、⼭下リオ、⼟佐和成、吉沢悠、菅原永⼆、⿊⽥⼤輔、永積崇、信江勇、佐々⽊史帆、しりあがり寿、⼤橋裕之、安井順平、志磨遼平、宮﨑⾹蓮、⽟城ティナ、安達祐実…ほか

●配給:日活=ハピネットファントム・スタジオ

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(C)2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会