『セールス・ガールの考現学』センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督INTERVIEW | C2[シーツー]BLOG

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川本 朗(カワモト アキラ)▶名古屋発、シネマ・クロス・メディア
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 第20回ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバルでグランプリに輝いたモンゴル発のガールズ・ムービー!“モンゴル映画”と言えば、草原を舞台にした作品を想起する人が多いはず。本作はそんな固定観念をひっくり返す、都会に暮らす女の子を主人公にした物語。しかもメインの舞台となるのは、大人のオモチャがところ狭しと並ぶ、街角のビルの半地下にある怪しげなアダルトグッズ・ショップ。ひょんなことからそのショップでアルバイト店員になった、大学で原子工学を学ぶ、おっとり地味目なヒロインのサロールが、店を訪れるさまざまなタイプのお客たちと接する、フィールドワークさながらな日々の中で、少しずつ世界を広げて成長して行くさまが描かれていく。

 

 

 キー・パーソンとなるのは、ショップのオーナーである謎多き中年女性カティア。高級フラットに独り住む彼女のもとに、一日の終わりに売上金を届けに通ううち、サロールとカティアの間には不思議な友情が芽生えることになります。経験豊富なカティアが繰り出す、機知に富んだアドバイスの数々は説得力抜群だ。監督はモンゴル・アカデミー賞常連のジャンチブドルジ・センゲドルジ。サロール役のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルは、オーディションで300人の中から抜擢され本作で映画デビュー。2022年大阪アジアン映画祭で、「最も輝きを放っている出演者」に贈られる薬師真珠賞を受賞。一方のカティア役、エンフトール・オィドムツは本作で30年ぶりに銀幕に復帰したベテラン。全編を彩る、モンゴルの人気シンガーソングライターMagnolianのヒット曲が、“新しいモンゴル映画”を印象づけるのに一役買っている。

 

 

 今回、公開前にセンゲドルジ・ジャンチブドルジ監督にzoomインタビュー!

 

INTERVIEW

 

 

Q:この映画、世界でどのように受け入れられたと思いますか?

 

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督(以下、監督):先日、フランスの第29回ヴズール国際アジア映画祭では最高賞のゴールデン・シクロ賞をいただき、日本では第17回大阪アジアン映画祭で「最も輝きを放っている出演者」に贈られる薬師真珠賞を主演のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルが受賞、第20回ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバルでグランプリを受賞と、世界でうれしい評価をいただいています。受け取り方は様々だと思いますが、どこの国でも若者たちが体験する共通の課題に触れたのかなと思います。この作品に内包されている、若者たちの自分探し、「何者かになるための」自問自答、自分らしく生きるための術といった、普遍的な要素が世界の映画ファンに響いたんだと思います。

 

Q:モンゴルの映画事情について?

 

監督:モンゴルの映画界も色々ありまして、非常に幅広い質問なのでなんとも答えにくいんですけど、今回の『セールス・ガールの考現学』のような作品は多くはないです。ビジネス的に大儲けできるような作品でもないし、自分の作品では、リアリティのある小さな出来事を描きたいと思っています。

 

<NOW WRITING>

 

『セールス・ガールの考現学』

2023年4月28日(金)よりセンチュリーシネマにてROADSHOW

公式サイト

 

STORY

原子力工学を学ぶ大学生のサロールは、怪我をしたクラスメイトから、彼女が働けない間の代理としてアダルトグッズ・ショップのアルバイトの話を持ち掛けられる。とくべつ仲の良い友だちではなかったが、高給なうえに簡単な仕事だと説かれ、一ヶ月だけ働くことに。

そこは、大人のオモチャが所狭しと並ぶ、街角のビルの半地下にある怪しげなショップ。友達へのプレゼントにとグッズを吟味する女性や、友人同士で訪れる客、人目を気にしながら一人で来店する客もいれば、グッズのデリバリーを頼むお客も少なくない。

ショップのオーナーはカティアという、高級フラットに独りで暮らす謎多き女性。彼女のもとに、一日の終わりに売上金を届けに通ううち、二人の間に不思議な友情が芽生えていく。カティアはどうやら昔はバレリーナとして有名だったらしく、人生の苦難や試練を数多く乗り越えてきたようで、サロールを色々な所へ連れ出していく。

ショップのお客やカティアと交流する中で、しだいに自分らしく生きていく道を考えるようになるサロールだが、あるお客とのトラブルでカティアに不信感を抱き…。

 

 

DATA

●監督・脚本・プロデューサー:センゲドルジ・ジャンチブドルジ

●音楽:ドゥルグーン・バヤスガラン(Magnolian)

●出演:バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル、エンフトール・オィドブジャムツ 

●配給:ザジフィルムズ 

2021年/モンゴル/モンゴル語・ロシア語/2.00:1/カラー/5.1ch/123分

原題:Khudaldagch ohin (英題 THE SALES GIRL) 

字幕翻訳:大塚美左恵 モンゴル語監修:フフバートル 

後援:駐日モンゴル国大使館 

 

(C)2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures