「映画の力」EPISODE:薮下梓「多くの方々と、これからも共有していけますように」 | C2[シーツー]BLOG

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川本 朗(カワモト アキラ)▶名古屋発、シネマ・クロス・メディア
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「映画の力」EPISODE:
多くの方々と、これからも共有していけますように

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 映画館で働いて、15年になります。名演小劇場は2スクリーンの小さな劇場です。映画館では、十人十色の人生が交錯します。

 

 『天井桟敷の人々』で、学校帰りに連日通ってくれた高校生。『二人の5つの分かれ路』で、寄り添うように出て行ったカップル。『おっさんずルネッサンス』で、「奥さんといっしょに観に来たのがまずかった」と苦笑された男性。『母の身終い』で、ロビーで泣き崩れてしまわれた女性。『アフター・ウエディング』で、「人生最高の感動をありがとうございました」と、最高の笑顔をくれた男性。『白バラの祈り』で、「これが私の最後の映画体験です」と、深々と頭を下げられた、96歳の女性。

 

 その日、恋人と別れた人。上司に怒られた人。人生初デートの人。会えない人を想っている人。大切な人を失くした人。故郷を去った人。通り過ぎて行った、たくさんの映画たちと、たくさんの人々の人生が呼応する瞬間を、目の前で見せていただいたことは、映画館スタッフの特権でしょうか。

 

 映画館は、映画を上映しているとき、多くの人々の揺れる想いを優しく包みこんで、誰も気がつかないほどささやかな波紋のように、観客といっしょに静かに揺れています。それが、映画館にとっての幸福です。

 

 あの豊かな暗闇に身を浸し、ともに揺られる体験を、多くの方々と、これからも共有していけますように。

 

 

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名演小劇場

公式サイト

 

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