高校生の時はいつも、部活動の陸上一筋だった。とにかく、青春のすべてを陸上にそぞきこんだ。そして、高校3年生になり陸上で大学に行くのか?もう陸上をやめるのか?とにかく悩んだ。しかし、答えは陸上を捨てた自分がいた。陸上でご飯を食べていけるような想像がまったくつかなかったからだ。
そこから、6年間そそぎこんだエネルギーはどこかに消えてしまい。胸の奥は真ん丸い空洞の穴が空いたような感覚に陥り、何をやっても人生がつまらなくなって、受験という大人の波にながされそうになっていた。そこで、魂がぬけた感覚で高校から家の間にあるレンタルショップで毎日のように洋画を借りては現実逃避をしていた。『グリーンマイル』や『ショーシャンクの空に』、そして、気づけば邦画の伊丹十三作品まで借りあさっていた。
とにかく、映画をみている時間が現実逃避ができて、どこか遠くの世界につれていってくれて。なんにでもなれる気がした。主人公と一緒にとにかく泣いて、笑って、怒って、そうするうちになぜか感情が豊になって、漠然と夢ができた。映画監督になれるのかなと?その夢はあまりにも現実離れをしていて語ることすら恥ずかしかった。
大学に進学してからはカメラを買って、芝居を勉強して、パソコン教室で編集ソフトの勉強をした。もちろん、お金がかかることだった。すべてのバイト代は映画監督になるための投資にきえていったのだ。それから、暇さえあれば地元の映画館に通いまくっていた一人の青年がいた。
『ジョゼと虎と魚たち』、『ピンポン』、『戦場のピアニスト』、『シカゴ』など、とにかくたくさんの映画を映画館にみにいった。
そして、両親に映画監督になるというと笑われた。そして、気づいたら映画監督になっていた自分がいた。
映画に言いたい「おーい、人の人生を本当に動かしてしまったよ」。それだけ映画がもつ力は偉大だと僕は思います。そして、もっともっとたくさんの人たちにこの偉大さを伝えていくのも僕たちの仕事だと思っております。
▼森ガキ侑大監督 待機作品
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