漫画「ブラックジャック」は連載開始から来年で50周年となるそうです。 

この作品の登場人物で「アッチョンブリケ」と叫ぶ助手の女の子「ピノコ」。 

ピノコという名前はピノキオが由来で、ブラック・ジャックがピノコの双子の姉の体の「こぶ」の中にある脳・手足・内臓等から組み立てました。 

マンガの中のお話ではありますが医師でもある作者の手塚治虫は全く根拠のないことを書いていたわけではありません。 

数年前のニュースによると実際に16歳の少女の卵巣に大きな腫瘍が発見されその中に髪の毛、頭蓋骨、そして脳の一部が入っていたそうです。 

このケースでは脳がかなり発達していたそうです。 

 

卵巣の中にある卵子が勝手に分裂を始め、皮膚組織、毛髮、脂肪、軟骨、骨などの組織を発生させるという事は実際にあります。 

このタイプの腫瘍は皮膚とその付属器(毛髪、皮脂腺、汗腺)が発生することが多く皮様嚢腫(ひようのうしゅ)と呼びます。 

皮様嚢腫の他に漿液性嚢腫、粘液性嚢腫、子宮内膜症性嚢腫がありますが、これらは全て良性であり悪性の代表は「卵巣がん」です。 

ちなみに卵巣の腫瘍の9割が良性、残りの1割が悪性です。 

良性と悪性の区別が難しいケースもあり、その中間に位置する境界悪性腫瘍もあります。 

 

そもそも卵巣は体のなかでもっとも腫瘍ができやすい臓器です。 

しかし卵巣は肝臓と並んで「沈黙の臓器」と呼ばれ腫瘍ができてもなかなか症状が現れにくく早期の段階ではほとんど自覚症状はありません。 

腫瘍がわかっても早期なら定期検査のみで治療を行わないケースがほとんどです。 

しかし時間とともに大きくなると下腹部の痛みや張り、性交痛、さらに大きくなるとしこりや腹囲が大きくなったりします。 

大きくなったまま放置すると破裂したり、卵巣の付け根が捻れて(茎捻転)激痛が生じこともあり手術による切除が行われます。

 

ところで卵巣はホルモンを分泌して生理周期毎に卵子を排卵したり、思春期から更年期にかけて女性の身体に影響を与えています。 

卵巣が分泌するのホルモンは「エストロゲン」と「プロゲステロン」です。 

もちろん他にも様々なホルモンが関与していますがこのエストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンがきちんと働くことで生理、妊娠、出産の準備を整えているのです。 

エストロゲンは脂肪蓄積作用があり女性らしい丸みを帯びた体型を作り恋をするとたくさん分泌され肌がつやつやとして気分も上がります。 

女性らしい体を作る、子宮内膜を厚くする、精神を安定させる、骨や皮膚、脳の動きにも関わっています。 

逆に少なければ妊娠しにくい、うつ、不眠、骨粗鬆症、関節痛、しみ、たるみ、認知症の原因になります。 

やせすぎて皮下脂肪が少なければエストロゲンは分泌されません。

(脂肪組織から分泌されるレプチンというホルモンはエストロゲンの産生を促す) 

極端なダイエットで月経不順、無月経になるのはこのためです。 

エストロゲンが正常に分泌されているか、不足しているかは基礎体温をつけるとわかりやすいです。 

きれいに二相性になっているなら心配はありませんが、特に高温期が短い、低い、ないとなると問題です。 

 

エストロゲンは卵巣にある卵胞から分泌されますが、50代になりほとんどの卵胞がなくなり更年期をむかえます。 

同じく更年期障害もやせていると症状が強くなる可能性が高くなります。 

更年期でよくみられる顔のほてり(ホットフラッシュ)はエストロゲンの急激な低下で脳内の活性酸素が増加するためこれを消去する物質「ノルエピネフリン」が分泌されます。 

この物質がホットフラッシュを起こすホルモンをさらに増やすことで起こります。 

 

まれに閉経後でもエストロゲンが減らないこともあります。 

卵巣腫瘍の中の「エストロゲン産生腫瘍」が原因です。 

ホルモンを作る臓器に腫瘍ができ,そのホルモンを過剰に作り出すようになる場合をホルモン産生腫瘍と呼びます。 

各ホルモンの産生細胞が腫瘍化することによって腫瘍自体が性ホルモンを産生し続けるという特徴があります。 

 

がんについてはエストロゲンが多くなりすぎても発症リスクが高まると言われています。 

また「子宮筋腫」「乳腺症」「子宮内膜症」「乳がん」「子宮頚がん」などのリスクも上昇します。 

卵巣がんは出産していない方や閉経が遅かった方など排卵した回数が多いほどリスクが高くなります。

 

良性腫瘍の中の子宮内膜症性嚢腫はその名の通り子宮内膜症が原因です。(子宮内膜症の原因は不明) 

卵巣に子宮内膜症ができると卵巣内にチョコレート色の古い血液のような成分がたまった状態になります。 

これは「チョコレート嚢腫」と呼ばれ、ここから卵巣がんが発生することもあります。 

チョコレート嚢胞の大きさが40歳以上で10cm以上、あるいはチョコレート嚢胞が急速に増大しているとなると精密検査や手術が必要になります。 

最近では腫瘍、子宮内膜症、チョコレート嚢腫の全てにおいて増加の傾向があり、遺伝・喫煙・食事の欧米化に加えて女性の晩婚化、出産回数の減少、不妊治療による排卵回数の増加が原因に挙げられています。 

 

女性にとっては気になるところですが予防をするためにはどうしたらよいでしょうか。 

これは各年代によっても違いがありますが共通して言えることは腫瘍、子宮内膜症、チョコレート嚢腫に注意すること、もしなっこの時西洋医学的な治療ではホルモン剤や手術となります。
熱が出れば解熱剤、悪い部分は切り取るという考え方です。
しかし東洋医学的な考えは体全体をみてバランスの崩れているところや流れの悪くなっている場所を見極めて正常にすることで自然な回復をさせることができます。
適切な漢方薬を使用され生理不順、月経痛、冷え、のぼせ、肩こり、頭痛などの日常的な女性の不調を日頃からできるだけ改善しておくことです。 

そうすることで不妊や更年期、さらに卵巣がんのリスクは低くなります。 

特に卵巣がんは最近40~60代を中心に多くなっています。 

こうした方がある日検査で突然腫瘍や卵巣がんが発見されびっくりします。 

ご相談をいただいてお話しを伺うと若いころに女性特有の不調や子宮内膜症、チョコレート嚢腫を持っていたという確率は高いです。 

更年期を過ぎたとしてもやはりなんらかの不調があることが多いはずですからその治療をしておくことは決して遅くありません。

(*参照:やさしいほるもん)

(*参照:健康と病気の間)

(*参照:アンジーの決断

 

●続きは12月のメルマガにて 

・エストロゲンのサプリは本当に必要か? 

・エストロゲンを補うのではなく効率よく働かせる 

・エストロゲン枯渇による活性酸素対策