今季初戦快勝となったテニスのジョコビッチ選手は大会を棒にふってもワクチンを接種しないようです。 

賞金やスポンサー契約を含めるととてつもない損失金額になります。 

 

ワクチンと言えば昨年末に「子宮頸がんワクチン」のニュースがありました。 

この子宮頸がんワクチンは2013年4月に定期接種が推奨されましたが、体の痛みなどを訴える女性が相次ぎ、わずか2か月後に接種の勧奨が中止されたという経緯がありました。 

その後国内・海外で有効性や安全性のデータが改めて報告され今年4月から「積極的勧奨」を再開することを厚生労働省が決定しました。 積極的勧奨の中断で接種機会を逃していた女性にも無料接種をするようで、それを歓迎する声もあがっています。 

反面このワクチンについては女性130人が国と製薬会社を相手に治療費の支払いなどを求める訴えを起こしていて弁護団は今回の再開に抗議声明を出しています。 

 

子宮頸がんワクチンは子宮頸がんの原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)に作用するものです。 

このヒトパピローマウィルスは200以上の種類がありますが,その中でがんを発症させやすい高リスク型タイプは13種類ほどあります。 

子宮頸がんワクチンはこの高リスク型の中の「2種類」の感染を防ぐことができ、子宮頸がんの50~70%を防ぐことができるそうです。 

子宮頸がんワクチンはコロナのような遺伝子ワクチン(m-RNA)ではなく、遺伝子組み換え技術を使い「これらのウイルスに似た偽の型」を合成し抗原として用います。 

さらに去年7月に承認された最新ワクチンは「9種類」の型を抗原としており子宮頸がんの90%を防ぐことができるとされています。(こちらは無料ではなく10万円の自己負担が必要) 

 

ところで子宮頸がん検査では細胞の形の変化を顕微鏡で調べ「正常」「異形成」「がん」の段階に分類します。 

「異形成」とは正常とは異なった形の細胞という意味で、子宮の頚部に慢性的な炎症が起こることで細胞が変性して起こります。 (*参照:慢性炎症

この異形成はHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によって起こります。 

さらに異形成は軽度(CIN1)、中等度(CIN2)、高度(CIN3)と3つに分類されます。 

軽度から高度に移るに従い子宮頸がんに進行する確率は上がります。 

軽度であれば、90%以上が自然治癒しますが、高度なら癌化がはじまっていて30%以上が数年で子宮頸がんに進行すると考えられています。

 最近この子宮頸部異形成は若い女性に急速に増加していますが、異形成と診断された方は医療保険やがん保険へはほぼ加入できないそうです。 

つまり異形成とは保険会社にとって病気状態の位置づけということです。 

ちなみに新型コロナウイルスの「コロナ保険」はオミクロン株の感染拡大で加入者への支払いが急増し、販売停止や保険料を3~4倍に引き上げる対応をしているとか。 

 

保険というものは確率論によってつくりあげられた金融商品です。 

保険会社には「アクチュアリー」と呼ばれる数学の専門家がいて、かなり難解な確率論で保険商品を制度設計しています。 

例えばサイコロを振って1つの目の出る確率は1/6です。 

10回振っただけでは正確に1/6にはならないでしょうが、一万回振れば6分の1に近づきます。 

つまり小数の例では偶然も多くなりますが、大きな数の例になるほど発生率をより正確に予測できます。 

これを「大数の法則」といい、保険事故の起きる確率は「大数の法則」に立脚した統計的確率です。 

 

大数の法則や確率論は西洋医学も同様で「〇〇%に有効」という数字は医薬品では必ず使われます。 

投与群と非投与群の効果比較判定(臨床試験)により「何%」という数字が出ます。 

このとき注意したいのは「このワクチンの有効率は90%である」というとき、100人接種したら90人に効いたというわけではありません。 

ワクチンを接種したグループ(投与群)では症状が出た人の割合が100人中1人で、偽の薬(プラセボ)を接種したグループ(非投与群)では100人中10人だったらワクチンの有効性は90%となります。 

つまり投与群では99人、非投与群では90人の方は発症しなかったわけです。 

付け加えますが90%有効だから症状の9割は消えるはずというなんとなく的な考えも成り立ちません。 

 

西洋医学が大数の法則なら、東洋医学は「個数の法則」と言えます。(造語です) 

個数とは大数の中の何%という概念ではなく患者さん個々の現在の体調からライフスタイルまで幅広く観察・分析することです。 

ある漢方薬局の先生に教えていただいたのですが、子宮頸部異形成の方にはやせ型で食が細く几帳面という共通点を感じられるそうです。 

とても参考になりましたが、これは結果論であり次の患者さんに対するときはもちろんこの先生もまた白紙にして向き合うこととなりそれが東洋医学的診察と言えます。 

 

がんに対する東洋医学の考え方には「扶正きょ邪(ふせいきょじゃ)」があります。 

これは扶正=正気を養う・きょ邪=邪気を除くことという意味です。 

がん細胞を叩くきょ邪は漢方薬にも存在はしますが、抗がん剤・手術・放射線など強力な方法を持つ西洋医学に軍配が上がります。 

最近は新たに免疫チェックポイント阻害薬(オプシーボなど)も登場しています。 

扶正については圧倒的に東洋医学の得意分野です。 

患者さんが食べられない、イライラするなどの症状があれば今は医師でも漢方薬を処方します。 

 

異形成は体内にあるマクロファージや免疫細胞によってHPVが排除されれば正常な状態に戻り、逆に進行すればがんとなる段階です。 

つまり健康と病気の間に位置する「半健康状態」と言えますが、漢方薬による扶正が生還のきっかけになることも多いのです。 

半健康とは考えてみれば色々な病気で存在していて、例えば花粉症は季節が過ぎれば健康です。 

疲れて唇にヘルペスが出る方はそれが治っても体内にウイルスは存在したままです。 

コロナで無症状で元気でも感染させる可能性があれば隔離が必要になり病気に含まれるでしょう。 

糖尿病や高血圧、高脂血症の方には体調不良がある方もあれば元気な方もあります。 

例えば血圧が130~80でも脳血栓になる方もいますし、140~70でも降圧薬を飲んでいない方もあります。 

血圧・糖尿やコレステロール、その他にもいろいろな基準値がありますがこれも大数の法則的、最大公約数的な数値で正確にあてはまるものでもありません。
個数の法則から見れば個々の環境や遺伝子や食事を考えます。

人体はサイコロのように単純ではなく、こうした各々のケースに細かく分析・対応できることが東洋医学のメリットです。 

 

〇続きはメルマガ3月号で

 ・異形成と漢方 

・自宅療養中の漢方 

・抗うつ剤と体内時計