本当にあった怖い話 -20ページ目

本当にあった怖い話

本当にあった怖い話と意味がわかると怖い話を解説付きで書いています

200 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:10:23 ID:Dzy+Cwqx0
[廃校]
1/16
夏の終わりのある日。友人が肝試しに行こう、と誘ってきた。
俺には霊感なんてまったく無し。こいつ、北上って奴だけど、こいつにも当然無し。
何でまたそんなモノに、と思って聞き質すと、「同じ大学のオカルト好きな女の子2人と意気投合したから」という、とても分かりやすい理由だった。
まぁ、そんな訳なら誘ってくれたことに感謝しないといけないが、目的地がちょっと不安だった。

S県の山中にある廃校。
学内で少し噂になったところだ。
というのも、うちの学校のオカルトサークルの5人がここに向かったきり、行方不明になったとか。
うちらにも何かあったらどうするのか、と不安になるが、北上曰く、「有名なところだから、逆に安心。」ということらしい。
なんでも、行方不明者が出たことで話題になり、廃校での捜索も行われた。
しかしその結果、そこには怪しいものは一切何もなかったことが判明したので、その廃校は“安全な心霊スポット”になった、と言う。


201 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:11:31 ID:Dzy+Cwqx0
2/16

肝試し当日、それでもビビリな俺は、万が一を考えて家族に行き場所を伝えておく。
すると何やら心配されて、お守りなんかを持たされた。
そういうのがあると、なんか逆に怖いのだけどね。
わざわざこちらから危ない場所に行って、危ない目にあうなんてバカげてる、と言われたが、今回の場所は安全。ただそういう雰囲気を味わいたいだけ、と説得した。
俺もずいぶんと過保護なものだ。
まぁ仕方ない。小さい頃に父親を亡くして、家に男手は俺だけだ。

迎えに来た北上の車に乗って、目的地に向かう。
車内には既に女の子が2人乗っていた。神尾です、鮎川です、と名乗った。こちらも雨月です、と名乗る。
神尾さんはスラッとした明るい感じの子。北上の好みだろうと思う。
鮎川さんもスタイルに申し分は無いが、やや地味な眼鏡をかけている。
しかしどちらも中々可愛い。さすが北上様、お目が高い。
助手席には当然?神尾さん。自分と鮎川さんは後部座席に乗って、出発した。


202 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:13:53 ID:Dzy+Cwqx0
3/16

車中での取り留めの無い話。やがて話題は目的地である廃校のことになる。
さすがにオカルト好きな女の子2人は詳しく、特にその手の話題に関しては、鮎川さんは相当なものだった。
取り壊そうとすると祟りがあった、とか、他にも何人か行方不明者が出ている、なんていう話を聞かせてくれる。
一体どこが「安全な場所」なんだ?と思ったが、捜索を行ったとき、廃校内には子供と思われる足跡がたくさんあり、どうやら麓の小学校の子供達の遊び場になっているらしい、とのこと。
子供の遊び場になるくらいなら、まぁなんとなく安心・・・かな?
肝試しに行ってそこで遊んでいる子供達に会ったら、興醒めしてしまうかもだけど。


203 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:15:04 ID:Dzy+Cwqx0
4/16

やがて、廃校のある山に到着する。麓に車を置き、ここから肝試しスタート。
時刻は21時。辺りは真っ暗だ。
俺と北上が懐中電灯を持ち、4人で廃校に向かう。
平坦な山道。熊でも出たら・・・と思ったが、この辺りには居ないらしい。
さすが安全心霊スポット。
とは言っても、流石に怖くなってくる。
都会では考えられないくらい、静かだ。聞こえるのは木々のざわめきと、何かの鳥の鳴き声のみ。
行方不明になったという人たちも、こんな感じで廃校に向かったのだろうか?
なんてことを考えてしまう。

そして廃校に到着。
これがなかなかどうして、いい雰囲気が出ている。
聞くところによると、女の子2人も今まで霊を見たとかいう体験もなく、霊感は0だと言う。
つまりここにいる4人、誰も霊感なんてものは無い訳だが、この雰囲気には全員が圧倒された。


204 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:16:29 ID:Dzy+Cwqx0
5/16

では行くか、というところでちょっとした事が起きた。
俺の横に立っていた鮎川さんが息を呑むのが聞こえた。

俺「どうしたの・・・?鮎川さん、平気?」

暗くて表情はよく分からないが、彼女はなにやら怯えている。
そして廃校の2階を指差してこう言った。

鮎川「今、中に・・・誰かが・・・」
北上「え?誰かって・・・誰?」

答えようも無いような質問をして、俺と北上は懐中電灯で彼女が指差す方向を照らす。

北上「・・・誰も居ないぞ?」
俺「見間違いじゃない?木の影が映ったとか」
神尾「もしくはあれかな?私達と同じ人か、例の子供達か」

さすがにこの時間、21時過ぎに子供がいるとは思えないが、うちらと同じ肝試し組なら居そうだ。

205 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:17:46 ID:Dzy+Cwqx0
6/16

普通ならここで尻込みしてしまいそうだが、そこはソレ系が好きな女の子達。
ただの見間違いである、という安易な結論にして校舎内に入ることにした。
俺は・・・もちろん怖かったが、女の子2人が平然としているのに、男の俺が情けないとこは見せられない。

東西に伸びた、木造3階建ての校舎。階段は中央と東西それぞれにあるらしい。
進行ルートは、1階の西まで行き、2階へ。2階の東まで行き、3階へ。
3階の西まで行き2階に下り、2階の東から1階、そして出口へ、というジグザグルート。
途中、どこかの教室にでも入ってみるか、という事になった。


206 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:19:11 ID:Dzy+Cwqx0
7/16

校舎正面の入口から入り、まずは西の階段を目指す。
校舎内は当然明かりが無く、懐中電灯2本の明かりを頼りに進んでいく。
1階というのは「外」が近いからか、又はすぐに建物から出ることができる、という安心感からか、余り恐怖を感じない。
校舎内の部屋には札が付いており、そこが何の部屋だか分かるようになっている。
俺たちは保健室、職員室の前を通りすぎ、何事もなく階段に着き、2階へ上がった。

2階にはずらりと教室が並んでいた。
教室の扉は全て開いており、廊下に面して窓も付いているので、中をなんとなく覗きながら通り過ぎていく。
ギシギシと床を鳴らし、中央階段を通り過ぎた辺りで俺は気付いた。
この次の教室、さっき外で鮎川さんが指差した教室だ。
その教室、2-3と書いてあるその教室の前に差し掛かったが、俺は中を見ないようにした。
他の3人もどうやら分かっているようで、中を見ようとしない。
なんだ、みんな少しは怖がっているじゃないか。なんとなく安心する。
扉の前を通ったとき、なんとなく冷たい風を感じたのは・・・きっと気のせいだろう。


207 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:20:10 ID:Dzy+Cwqx0
8/16

やがて東の階段に着く。ここで北上がふぅーーっと息を吐いた。

北上「いやー、さっきのとこ、何か怖かったなぁ」
俺「あぁ、2-3だろ?鮎川さんが何か居たって言っていた教室だよね」
神尾「ね~。私も怖かった~」
鮎川「ごめんね、何か怖がらせちゃって・・・。でも何もなかったね」

みんな堰を切ったように話し始める。緊張していた証拠だろう。
落ち着いた空気になり、3階へ。
この階には怪談の定番、音楽室があったが、部屋の中を見てみると、お決まりのピアノも肖像画も何もない。
当たり前と言えば当たり前だ。廃校に置き去りにするものでもない。
北上が入ってみよう、というので、音楽室に入ってみる。


209 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:21:59 ID:Dzy+Cwqx0
9/16

がらんとした部屋。何も置いてないので、部屋の壁が防音壁になっていなければここが何の部屋か分からないだろうと思う。
しかしここには別の特長があった。

床。床を照らしてみて気付いた。足跡がたくさんある。
大きさからして子供のものだろう。
どうやらここが、子供達の遊び場になっているようだ。
確かに他の教室より少し広いし、何も置いてないので遊び場にはいいかも知れない。
しかしこんなところで何をして遊ぶのだろう、とも思ったが、子供には子供の遊びがあるのだろう。

部屋を出て西の階段に向かう。
いくつかの教室を通り過ぎ、西の階段まで来る。そして階段を下りて再び2階へ。
先ほどと同じように、東に向かう。一度通った場所なので、何となく気が楽だ。
しかしそれは逆だったと思い知る。一度通ったからこその恐怖があった。
中央階段を過ぎ、2-3の教室前に差し掛かって気付いた。

教室の扉が、閉まっていた。


210 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:24:36 ID:Dzy+Cwqx0
10/16

みんな言葉を失う。恐らく同じことを考えているのだろう。
さっきは開いていた?本当に開いていた?さっきも実は閉まっていたんじゃないのか?
でもほんの10分くらい前の事。忘れる訳もない。
しかも以前通り過ぎたとき、俺は開いた扉から風が吹いてきたのを感じている。
鮎川さんが沈黙を破る。

鮎川「ねぇ・・・ここ通るの、止めない?」
神尾「そう、そうよね。中央の階段下りて、出よっか」

誰も閉まっている扉のことには触れない。触れずに回避しようとしている。
当然、俺と北上も同意する。

北上「よし、そうだな。そこの階段下りて、外に出よう」

2-3の方に背中を向けるのも怖い気がしたが、踵を返し、中央階段に向かおうとした。その時だった。

211 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:28:52 ID:Dzy+Cwqx0
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何か聞こえた。すぐに子供の声だと分かった。それも複数人の笑っている声。
上から聞こえる。位置的には・・・音楽室からか?
4人で顔を見合わせる。いけない。何か破綻しそうな空気だ。
声が移動している。いくつかの足音がする。3階を移動して・・・中央階段に向かっている?

神尾「・・・何?何よ?何なの?誰か居るの?」
北上「おっ落ち着いて!早く、早く出よう、下りよう!」
俺「でっでも、あっちから来ているんじゃないのか?」

笑い声は中央階段の方に向かっていった。これで俺たちもそちらに向かったら・・・
冗談じゃない。あの声の集団とは、絶対に会ってはいけない気がする。

鮎川「じゃあ、やっぱり、そこ通って行くしかないの?」

2-3の前を通る。迷っている暇もないか?階段の方から聞こえる声は鮮明になってきている。


212 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:31:16 ID:Dzy+Cwqx0
12/16

再び2-3の方へ振り向き、全員、息を呑む。

・・・扉が開いている。
頭が混乱してきた。しかし行くしかない。声が、階段を下りているのを感じる。

北上「走ろう!雨月、鮎川さんを!」

北上が神尾さんの手を取って走り出す。俺も鮎川さんの手を取る。

俺「鮎川さん、足元、気を付けて!」

4人で駆け出す。
教室の前方の扉を通り過ぎたとき、俺は中から、射るような視線を感じた。
物凄く熱を帯びた、熱い視線。恐らく全員が感じたと思う。
熱い視線だが、冷水を浴びたような感覚。体温がサーっと一気に下がる。
出来るだけ教室の方は見ないようにするが、教室には廊下側に窓が並んでおり、前を向いて走っていると、どうしても視界の隅にこれが映る。

そこで俺は見てしまった。その窓に浮かぶ、無数の顔を。
感情を感じない、無表情な顔。
廊下の一番端、教室側を走っていた俺にははっきり見えてしまった。
こちらが通り過ぎると、それを追うように視線も追ってくる。
そして後方の扉の前へ差し掛かる。通りたくないが仕方ない。
扉は開いている。何か、何かが出てくるに決まっている。
俺は泣きたい気分になったがどうしようもない。駆け抜けるしかない。
そしてそれはきた。


213 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:32:52 ID:Dzy+Cwqx0
13/16

手だ。いくつもの手が教室内から俺に伸びてきた。
扉の前を駆け抜ける瞬間、俺は腕や脚を掴まれた。

俺「~~~!!」

俺は声にならない声を出す。引きずり込まれる?ダメだ!と思った瞬間、掴んでいた手が弾かれたように離れた。
そして・・・俺たちはそのまま走って階段へ。
慌てて階段を駆け下り、1階も走りぬけ、出口から外へ出る。
1階の中央階段辺りも怖かったが、笑い声は既に消えていた。

外へ出た俺たちは、そのまま車の元へと走った。
そこで俺は一度振り向いた。どうしても気になったからだ。
あの教室の辺りを見てみる。窓にはたくさんの顔が見えた。こちらを睨んでいる。
・・・と、それはすぐに消えた。もう一度目を凝らして見ても、何も見えなかった。

214 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:35:55 ID:Dzy+Cwqx0
14/16

車に乗り、エンジンを掛け、帰路につく。
この頃にはだいぶ落ち着いていた。
車内では当然、今体験したことの話。
扉が開いていたとか閉まっていたとか、笑い声が聞こえたとか・・・。
4人が体験したことなので、これは間違いなく起こったこと。
しかし、教室内の顔、そして手が伸びてきたことに関しては、他の3人は知らないと言う。
どうやら俺だけが見たものらしい。

北上に「実は霊感あったんじゃないか?」

と言われたが、どうも実感がない。きっと気のせいだな、と言っておいた。
混乱していたし、幻覚でも見たのだろう、と。
他の事象についても、怪しいものだ。
心霊現象だったのか?と言われると、断言できない。
そもそも最初に鮎川さんが見た通り、校舎内に誰かがいた可能性があるからだ。
幽霊の正体なんて、大抵そういうものだろう・・・と思いたい。

そして北上の車で女の子2人を先に送り、俺も家まで送ってもらった。
家に着いたのは1時過ぎだった。


215 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:38:40 ID:Dzy+Cwqx0
15/16

家に入り、洗面所で顔を洗っていると、姉貴がやってきた。

姉「おかえり、光一」
俺「あぁ、ただいま。まだ起きていたんだ」
姉「ちょっと心配でね。平気だった?」

心配してくれていた。自他共に認めるシスコンな俺には嬉しい。

俺「うーん、まぁ平気平気。なかなか貴重な体験だったよ。あぁ、これ返す」

俺は行きがけに姉から受け取ったお守りをポケットから取り出した。

俺「・・・あれ?」

そのお守りを見て驚く。お守りの袋には、何かの石と紙切れが入っていると言っていたが、袋の外から触ってみて、明らかに中の石が砕けていた。


216 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:40:51 ID:Dzy+Cwqx0
16/16

姉「よかった・・・」
俺「・・・え?あぁ、ごめん、壊しちゃったかな」
姉「いいのよ、そういうものだから」

姉貴はお守りを受け取ると、中を見て何か確かめている。

母「あら、こんな時間にまだ起きているの?」

お袋が起きてきた。

俺「今帰ってきたとこ。風呂入って寝るよ。なんか疲れたし」
母「そう。舞も早く寝なさいね。また具合でも悪くなったら・・・」
姉「大丈夫よ、お母さん・・・」

心配なのも無理はない。
過去に大病を患っていた姉。しかし、奇跡的に一命を取りとめた姉・・・。

姉「もう寝るね。おやすみなさい」

彼女はそう言って少し微笑むと、部屋へと戻っていった
88 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/25(月) 00:08:44 ID:fdz6BKAj0
<沙耶の行方-1>

夕方に空港に到着。沙耶ちゃんのアパートに直行した。
郵便受けには大量のチラシが入りっぱなしになってる。インターホンを鳴らしたが返事はなかった。
電話は相変わらず電源が切れている。
勘弁してくれよ。。。

バイト先まで歩き、店長に、帰ってきた挨拶と沙耶ちゃんの欠勤の話を聞いた。
俺が親父の危篤を聞いた夜、沙耶ちゃんはすでに出勤していなかったらしい。ただ、この日は連絡があった。
翌日の欠勤時、それまで真面目に働いていたこともあって、店長は自ら彼女のアパートへ足を運んだんだ。でも人のいる気配はなかった。

「女の子の独り暮らしだし、もしかしてと思ってね」

店長は沙耶ちゃんの実家にまで電話を入れた。
父親が出て「存じません」とぶっきらぼうに切られたそうだ。


89 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/25(月) 00:11:34 ID:fdz6BKAj0
<沙耶の行方-2>

「こうまで長引くと心配だね。まこちゃん、沙耶ちゃんの実家にもう一度連絡を入れてみてくれないかな。捜索願を出させたほうがいいかも」と依頼されたので、「なんで店長がやらんの?」と聞くと、「僕はあのお父さんはどうも苦手で」と頭を掻いてた。
沙耶ちゃんの履歴書から電話番号をもらってプッシュすると、平日の夕方だからだろうか、父親ではなく母親らしき女性の応答があった。
警戒心を抱かれないように、できるだけ穏やかな声で伝えてみる。

「私は沙耶さんにアルバイトに来てもらっているコンビニの責任者ですが、沙耶さんがここ数日、連絡なしに欠勤されてるんです。もしかして、そちらに帰ってらっしゃるんでしょうか?」

H先輩が聞いたら「小学校からやり直してこい」と言いそうな言葉遣いだな。
でも母親らしい女性にはちゃんと通じたようだ。
あっさりと「こっちに帰ってますよ。ごめんなさいね。もうそちらには戻らないと思います」との返事をもらった。

なんだか釈然としない。っていうのも、沙耶ちゃんは以前「実家に居場所がないから1人で出てきた」と言ってたんだ。
実は、彼女は、父親とその浮気相手の子どもなんだよ。
だから正妻に目の敵にされて実家にいられなくなったみたいなんだ。
そんな家に自主的に戻ったのか?それとも。。。

考えるだけ無駄なんで、店長に労いの意味でもらった今晩の休みを、沙耶ちゃんの実家行きに使うことにした。


90 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/25(月) 00:13:38 ID:fdz6BKAj0
<沙耶の行方-3>

少し田舎に下るとはいえ、見事に開拓された新興住宅地の中に沙耶ちゃんの家はあった。立派な門構えとその奥の広い庭が、裕福な暮らしを示している。
沙耶ちゃんの親父さんは、従業員数百人を抱える中小企業の副社長だ。以前、興味本位に調べさせてもらった。
重役はすべて家族親類という典型的な同族会社の中で、唯一、身内外からその地位に上りつめた人だ。女癖はともかく、まあ有能なんだろう。
沙耶ちゃんにお嬢さんな雰囲気があるのも、この家で育ったんなら納得できるな。

カメラつきのインターホンを鳴らすことをためらっていると、左手の路上から人の話し声が聞こえてきた。年配の男と若い女の子の声。
「お父さん、今日は帰り遅いよ。家で待ってるのイヤなんだから、もっと早く帰ってきて」と女の子。。。。あれ。。。?
「これが普通の帰宅時間なんだぞ。今までは沙耶のために無理して帰ってたんだから」と。。。沙耶ちゃんの父親らしき人物。。。
門に取り付けられた電灯が2人の顔を照らし始めた。向こうも俺に気づいたようだった。
俺は真っ先に沙耶ちゃんに飛びつきたい衝動を押さえww、父親に頭を下げる。すると、彼から声をかけてきた。

「君は?」

どの立場にするか少し思案してから、答えた。

「沙耶ちゃんの友人です」

沙耶ちゃんは父親の顔を見て、それから俺を見て、首をかしげた。

「わかんない。誰ですか?」

父親が「事故で名前も家族のことも忘れましてね。たぶん元には戻らないと思います」と補足した。

139 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 00:02:10 ID:JnCr76Dp0
<沙耶の行方-4>

掲示板に投稿しているのだということを忘れて、油断していたら先を越されたww
いまさら解説するのも間抜けだか、一応、説明をつけておく。

沙耶ちゃんの病名は「全生活史健忘」といって、自分に関する事柄をすべて忘れてしまう症状なのだそうだ。
社会的な通念や技術は覚えていることも多いため、生活には困っていないらしい。
実際、家に上げてもらってから沙耶ちゃんがお茶を出してくれた仕草などは、昨日今日習ったという手際ではなかった。
記憶喪失というと=頭部損傷ってイメージがあった俺に、親父さんは、主な原因は心因性だと教えてくれた。
つまり、沙耶ちゃんは過去を忘れてしまうほどのストレスを受けたということなのか。
「どこで?」の質問には答えてもらえなかった。
「どんな事故?」の質問には、やんわりと帰宅を促された。
食い下がることもできたが、帰ることにしたよ。
沙耶ちゃんが無事でいることがわかっただけで収穫だしね。

門まで見送ってくれた彼女に手を振ると、なぜか泣きそうな顔になって「ごめんなさい」と謝られた。


140 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 00:02:54 ID:Lrb4upts0
<沙耶の行方-5>

それからの半年は、本当に忙しい時間を過ごしたと思う。
バイトはやめたが、本腰を入れた出版社の仕事(+いろいろとやらされたがww)のせいで、就労時間は変わらなかった。
わずかでも時間が取れれば沙耶ちゃんの顔を見に行ったよ。親父さんは警戒心バリバリだったけど、お袋さんはわりとすぐに打ち解けてくれた。

「こんなことを言うのはなんだけど、私は沙耶が病気になってくれてよかったと思ってるの」

印象に残ってるお袋さんの一言だ。

「あの子にはずいぶんひどいことをしてしまったから、恨んでるだろうなと、ずっと気にしてたんです。今は全部忘れて慕ってくれるので助かります」

その微妙な関係、俺にはよくわかるよ。


141 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 00:04:06 ID:Lrb4upts0
<沙耶の行方-6>

最低限の人間関係を維持しながら、俺がメインに時間を使っていたのは『事故の解明』についてだった。
休日のたびに、心当たりのある場所や機関を回って、情報をせがんだ。
あのトンネルのある市の警察や消防署の窓口。救急病院の受付。同業の地域情報誌発行元の会社まで回ったこともある。
結果わかったことは。。。日本の守秘義務を舐めちゃいけないということだけだったorz
行く先々でたしなめられたよ。原因なんて些細なことを今さら蒸し返すんじゃないって。今、問題なく。。。むしろ以前より幸せに過ごしているんなら、それでいいんじゃないか、と。
そうかもしれんね。
たしかに、沙耶ちゃんは明るくなったよ。いい意味で甘え上手にもなって、みんなに可愛がられてる。復帰した大学でも友人(男がダントツに多いっていうのが気になるがww)が増えたと喜んでいたし。

でもさ。。。。じゃあ、以前の沙耶ちゃんはどこに行ったんだろう。生真面目で不器用だったけど、彼女の本質はそれだったような気がするんだよな。
以前、出版社の仕事で突風の被災地の写真を撮りに行ったことがあった。えっと。。。ああ、<復職>で書いてるな。そのときに沙耶ちゃんの写真を一枚撮ったんだが、彼女の周りに集まってた光だけが写ってて、沙耶ちゃん本体は写っていなかった。
今の沙耶ちゃんは陰のない光みたいな存在だと思う。だけど、そこに彼女の本体はいない気がしてしょうがないんだ。。。


142 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 00:04:53 ID:Lrb4upts0
<沙耶の行方-7>

珍しく、H先輩だけが俺の行動を肯定してくれた。。。というか、先輩の言によると、俺の行動が正しいとしか言えなくなるんだけどねw
「全生活史健忘」は、記憶が戻ってくることがほとんどらしい。意志の力で封じ込めているようなものなので、傷が癒えれば自然に解放されるんだろう。
そのときに、理解者が周囲にいないというのはものすごい悪影響になるそうだ。
沙耶ちゃんの今の状況を手放しで喜んでいる彼女の家族が、記憶の戻った沙耶ちゃんをちゃんと受け入れてやれるのか。
「顔も知らん俺でも心配になる」と、H先輩は初めて善人らしいことを言った。

先輩からモチベーションを維持する力をもらった俺は、あの日も、例のトンネルの地区を管轄している駐在を訪ねた。
すっかり顔馴染みになった40代の巡査部長が奥の座敷に通してくれたときは、思わず(やたっ)と心の中で叫んだよ。

143 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 00:05:49 ID:Lrb4upts0
<沙耶の行方-8>

以下は、巡査部長と、その後に訪れた市警の担当者の話を総合して書く。

半年前の6月の終わり頃のこと。深夜にかかろうかという時刻に、交番を一組の親子連れが訪れた。母親は小さな幼児を抱いていたらしい。雨が降っていたので、2人ともずぶ濡れだったようだ。
巡査部長は2人をこの座敷に上げ、わけを聞いた。母親は早口で「山中に若い女性が放置されている」という旨のことを告げた。地図を指し示して場所まではっきりと教えたと、巡査部長は、その地図を広げながら語ってくれた。
眠っている幼児を抱えた母親を連れまわすのは気の毒だったので、彼は一人でパトロールに出かけたそうだ。目的の場所はトンネルから脇に逸れた林道の途中。滅多に人の入るところではないので、ふだんは立ち入ることもない。

狭い林道をミニパトでとっつきまで走り、何もないのを確認して折り返す。このとき巡査部長は『あの親子に騙された』と思った。こんな道を徒歩で入る人間がいるわけがない、と。
サーチライトさえ吸い込まれそうな真っ暗な山道を慎重に進むと、前方に、何か動くものが見えた。それは左の木々の間に消えていった。

「あの親子連れに見えたから、驚いてな」

俺の前で、巡査部長は鳥肌の立った腕をさすって、熱い茶を飲んだ。
彼は車を止めて後を追った。薮が左右に分けられていて、確かに人の通った跡があった。
その先で、沙耶ちゃんが見つかった。
全裸で、絞首の痕があって、仮死状態だったそうだ。


144 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 00:06:30 ID:JnCr76Dp0
<沙耶の行方-9>

沙耶ちゃんは市内の総合病院に運ばれてから、意識を取り戻した。
市警の女性警察官が彼女の担当になり、事情聴取をした。
前夜、トンネルから徒歩で帰ろうとしたところを、見知らぬ集団の車に押し込まれたこと。その後に乱暴されたこと。
そこまで話して、沙耶ちゃんは『別人になってしまった』らしい。何を聞いても「わかんない」「ありえない」を繰り返した。

「輪姦は親告罪じゃないのよね。。。」

女性警察官はぼそっと言った。
犯人を捕まえれば無条件で起訴になる。そして、沙耶ちゃんは証人として裁判所に呼び出される。
沙耶ちゃんの親父さんは「捕まえなくていい」と即答したようだ。

帰り道。運転しながら、いくつかの選択肢を描いた。
沙耶ちゃんが事件を思い出す→精神の崩壊の危機→そばにいないと。
沙耶ちゃんが事件を思い出す→意外に平気で乗り越える→微力ながらそばで応援。
沙耶ちゃんが事件を思い出さない→遠慮なくゲット
。。。俺って、つくづく自分勝手な発想しかできないらしい。。。


159 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 21:08:42 ID:JnCr76Dp0
<沙耶の行方-10>

その後のことは、。。。まあ照れもあるしww、あんまり詳細には書きたくない。
H先輩が「猪突猛進って言葉があるが、猪だってお前よりは考えて行動するだろうよ」と表現したとおり、俺はまったく周囲が見えてなかった。
勢いだけで求婚して、そして、承諾をもらった。

同居を始めた初日の夜、ベッドの中で沙耶ちゃんが緊張していたので、手を出しあぐねて、俺はソファで寝た。
お互いが寝ついた頃、ものすごい呻き声が聞こえたので電気をつけると、沙耶ちゃんが号泣しながら辺りを掻きむしっていた。止めても止まらず、結局、彼女は爪を二枚はがした。
翌日から通い始めた心療内科への通院は、何年も経った現在でも続いてる。もっとも、今はほとんど症状はないけどね。
やっぱり、都合の悪い過去だけ切り捨てて生きるなんてことはできないんだよ。

「こんなふうに漠然と嫌な感じを受けるより、あたし、何があったのか、はっきり思い出したほうが楽かも」

最近、沙耶ちゃんはしきりに『事故』のことを聞きたがる。教えるのは俺も抵抗があるから、とりあえず「思い出してもいいよ」とストッパーを外すように促している。

160 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 21:09:00 ID:JnCr76Dp0
<沙耶の行方-11>

奥さんは、きっと、近いうちに全部思い出して、元の性格に戻る。
俺ね、今、回線が開きっぱなしの状態だから、いろんなモノが視えてるわけ。生きてる人間とそうじゃないヤツの区別がつかないぐらい、くっきりと。
奥さんの後ろには3つの姿が見える。足のない母親と、。。。ちょっと成長したなw。。。7歳ぐらいの子どもと。
そして、2人に囲まれるようにして、以前の陰のある表情の沙耶ちゃんが、ね。

今の明るい奥さんも、俺は好きだよ。だから、うまく融合してくれるといいな。
とりあえず言っておくよ。

おかえり、沙耶ちゃん。


161 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 21:09:33 ID:JnCr76Dp0
<エンディング-1>

沙耶ちゃんのことをここに書き込み始めたのは8月1日の深夜だった。
実は、その前日の昼間、俺は思いがけない人に会った。そのせいで過去を掘り起こす必要が生じたようなもんだ。
一作目から登場させた、泥沼に沈んで死んだ坊主。
ヤツは、バラバラだった母親の体が再生した後から姿を消してしまった。
成仏したかどうか、俺にはわからなかったから、それからもずっと花は供えに行ってたんだ。

7月の最終日は溶けそうなぐらい暑い日だった。
小粒のひまわりと缶ジュースを、今は埋め立てられてる沼のほとりに置いて立ち去ろうとしたら、60は越えているだろう女性に声をかけられた。

「○○の同級生の方?」

ちょっと驚いた。○○っていうのは、俺の現実の名前だったから。
その女性は坊主の母親だった。
俺、坊主が子どもの姿だったんで、てっきり母親も若いもんだと思ってたけど、考えてみれば、死んだときに子どもだっただけで、その後何年(何十年?)も経っていたわけだ。
適当に話を合わせながら雑談していたら、面白いことがわかったよ。俺と坊主は『同名』『同生年月日』だったらしい。


162 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 21:09:58 ID:JnCr76Dp0
<エンディング-2>

俺ね、ずっと勘違いしてた。
坊主は沙耶ちゃんに惚れてて、俺を敵視してるから、グロテスクな妄想を見せるのかと思ってたんだww
けど考えてみたらさ。
坊主がパーツ集めだと教えてくれなかったら、俺はわけがわからないまま、妄想で狂っていたかもしれない。

今は、俺、多少変な方向ではあるけど、平和で現実的に暮らしてるわけ。
過去のオカルト経験なんか、もうどうでもいいぐらいに。
だけどもし、この先。
縁のある坊主とまた再会することができるなら、忘れちゃいけないだろ。このきっかけは。
だから書き残した。

巨大掲示板の中で、顔の見えない人からレスをもらうたびに、「もしかして、この中の1人は坊主なんじゃないだろうか」なんて馬鹿馬鹿しい想像をしてる。
だから、いろんな意味を込めて、「ありがとう」と返事をすることにしている。


163 : ◆T4X5erZs1g :2008/08/27(水) 21:10:57 ID:JnCr76Dp0
お付き合い、どもでした。
52 :まこと ◆T4X5erZs1g :2008/08/23(土) 22:51:43 ID:5DwZQ5v70
<親父の死-7>

包帯だらけの手だったからか、翌日の葬儀には野暮なツッコミは入らなかったww
親戚の何人かが「あの馬鹿どもは昨日のうちに追い出してやった」と報告してくれた。田舎の団結力は頼もしいなw
火葬場に移り、骨上げ(骨が焼けること)を待っているときに、焼き場の職員から呼び出された。

「とても申し上げにくいんですが。。。お父さんの頭のお骨が見当たらないんです。どうしましょうか?」

そっか。親父が姉さんの代わりに首を提供してくれたのか。。。
親族には黙っておいてくれと頼んだ。どうせ、酒びたりだった親父の骨はまともな原型を留めていなかったし。

すべての儀式を終えた後、俺は空港の待合室で久しぶりに携帯を取り出した。
驚いたよ。40件近い着信が入ってる。
そのうちの30件以上を占めていた梶に電話をすると、ヤツは深刻そうに切り出した。

「沙耶ちゃんってまことさんとそっちに行ってる?バイト、ずっと無断欠勤してるんだけど」

すぐに梶を切って、沙耶ちゃんにかけ直す。。。。電源が入ってない。
最後に会ったのは、踏切事故の翌日の朝だ。もう6日も経つ。その間、電話は一度も通じなかった。

『先に来て探してたんですよ』

夢の中では、沙耶ちゃんはトンネルにいた。
事故?嫌な想像が頭をかすめた。