200 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:10:23 ID:Dzy+Cwqx0
[廃校]
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夏の終わりのある日。友人が肝試しに行こう、と誘ってきた。
俺には霊感なんてまったく無し。こいつ、北上って奴だけど、こいつにも当然無し。
何でまたそんなモノに、と思って聞き質すと、「同じ大学のオカルト好きな女の子2人と意気投合したから」という、とても分かりやすい理由だった。
まぁ、そんな訳なら誘ってくれたことに感謝しないといけないが、目的地がちょっと不安だった。
S県の山中にある廃校。
学内で少し噂になったところだ。
というのも、うちの学校のオカルトサークルの5人がここに向かったきり、行方不明になったとか。
うちらにも何かあったらどうするのか、と不安になるが、北上曰く、「有名なところだから、逆に安心。」ということらしい。
なんでも、行方不明者が出たことで話題になり、廃校での捜索も行われた。
しかしその結果、そこには怪しいものは一切何もなかったことが判明したので、その廃校は“安全な心霊スポット”になった、と言う。
201 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:11:31 ID:Dzy+Cwqx0
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肝試し当日、それでもビビリな俺は、万が一を考えて家族に行き場所を伝えておく。
すると何やら心配されて、お守りなんかを持たされた。
そういうのがあると、なんか逆に怖いのだけどね。
わざわざこちらから危ない場所に行って、危ない目にあうなんてバカげてる、と言われたが、今回の場所は安全。ただそういう雰囲気を味わいたいだけ、と説得した。
俺もずいぶんと過保護なものだ。
まぁ仕方ない。小さい頃に父親を亡くして、家に男手は俺だけだ。
迎えに来た北上の車に乗って、目的地に向かう。
車内には既に女の子が2人乗っていた。神尾です、鮎川です、と名乗った。こちらも雨月です、と名乗る。
神尾さんはスラッとした明るい感じの子。北上の好みだろうと思う。
鮎川さんもスタイルに申し分は無いが、やや地味な眼鏡をかけている。
しかしどちらも中々可愛い。さすが北上様、お目が高い。
助手席には当然?神尾さん。自分と鮎川さんは後部座席に乗って、出発した。
202 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:13:53 ID:Dzy+Cwqx0
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車中での取り留めの無い話。やがて話題は目的地である廃校のことになる。
さすがにオカルト好きな女の子2人は詳しく、特にその手の話題に関しては、鮎川さんは相当なものだった。
取り壊そうとすると祟りがあった、とか、他にも何人か行方不明者が出ている、なんていう話を聞かせてくれる。
一体どこが「安全な場所」なんだ?と思ったが、捜索を行ったとき、廃校内には子供と思われる足跡がたくさんあり、どうやら麓の小学校の子供達の遊び場になっているらしい、とのこと。
子供の遊び場になるくらいなら、まぁなんとなく安心・・・かな?
肝試しに行ってそこで遊んでいる子供達に会ったら、興醒めしてしまうかもだけど。
203 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:15:04 ID:Dzy+Cwqx0
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やがて、廃校のある山に到着する。麓に車を置き、ここから肝試しスタート。
時刻は21時。辺りは真っ暗だ。
俺と北上が懐中電灯を持ち、4人で廃校に向かう。
平坦な山道。熊でも出たら・・・と思ったが、この辺りには居ないらしい。
さすが安全心霊スポット。
とは言っても、流石に怖くなってくる。
都会では考えられないくらい、静かだ。聞こえるのは木々のざわめきと、何かの鳥の鳴き声のみ。
行方不明になったという人たちも、こんな感じで廃校に向かったのだろうか?
なんてことを考えてしまう。
そして廃校に到着。
これがなかなかどうして、いい雰囲気が出ている。
聞くところによると、女の子2人も今まで霊を見たとかいう体験もなく、霊感は0だと言う。
つまりここにいる4人、誰も霊感なんてものは無い訳だが、この雰囲気には全員が圧倒された。
204 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:16:29 ID:Dzy+Cwqx0
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では行くか、というところでちょっとした事が起きた。
俺の横に立っていた鮎川さんが息を呑むのが聞こえた。
俺「どうしたの・・・?鮎川さん、平気?」
暗くて表情はよく分からないが、彼女はなにやら怯えている。
そして廃校の2階を指差してこう言った。
鮎川「今、中に・・・誰かが・・・」
北上「え?誰かって・・・誰?」
答えようも無いような質問をして、俺と北上は懐中電灯で彼女が指差す方向を照らす。
北上「・・・誰も居ないぞ?」
俺「見間違いじゃない?木の影が映ったとか」
神尾「もしくはあれかな?私達と同じ人か、例の子供達か」
さすがにこの時間、21時過ぎに子供がいるとは思えないが、うちらと同じ肝試し組なら居そうだ。
205 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:17:46 ID:Dzy+Cwqx0
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普通ならここで尻込みしてしまいそうだが、そこはソレ系が好きな女の子達。
ただの見間違いである、という安易な結論にして校舎内に入ることにした。
俺は・・・もちろん怖かったが、女の子2人が平然としているのに、男の俺が情けないとこは見せられない。
東西に伸びた、木造3階建ての校舎。階段は中央と東西それぞれにあるらしい。
進行ルートは、1階の西まで行き、2階へ。2階の東まで行き、3階へ。
3階の西まで行き2階に下り、2階の東から1階、そして出口へ、というジグザグルート。
途中、どこかの教室にでも入ってみるか、という事になった。
206 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:19:11 ID:Dzy+Cwqx0
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校舎正面の入口から入り、まずは西の階段を目指す。
校舎内は当然明かりが無く、懐中電灯2本の明かりを頼りに進んでいく。
1階というのは「外」が近いからか、又はすぐに建物から出ることができる、という安心感からか、余り恐怖を感じない。
校舎内の部屋には札が付いており、そこが何の部屋だか分かるようになっている。
俺たちは保健室、職員室の前を通りすぎ、何事もなく階段に着き、2階へ上がった。
2階にはずらりと教室が並んでいた。
教室の扉は全て開いており、廊下に面して窓も付いているので、中をなんとなく覗きながら通り過ぎていく。
ギシギシと床を鳴らし、中央階段を通り過ぎた辺りで俺は気付いた。
この次の教室、さっき外で鮎川さんが指差した教室だ。
その教室、2-3と書いてあるその教室の前に差し掛かったが、俺は中を見ないようにした。
他の3人もどうやら分かっているようで、中を見ようとしない。
なんだ、みんな少しは怖がっているじゃないか。なんとなく安心する。
扉の前を通ったとき、なんとなく冷たい風を感じたのは・・・きっと気のせいだろう。
207 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 09:20:10 ID:Dzy+Cwqx0
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やがて東の階段に着く。ここで北上がふぅーーっと息を吐いた。
北上「いやー、さっきのとこ、何か怖かったなぁ」
俺「あぁ、2-3だろ?鮎川さんが何か居たって言っていた教室だよね」
神尾「ね~。私も怖かった~」
鮎川「ごめんね、何か怖がらせちゃって・・・。でも何もなかったね」
みんな堰を切ったように話し始める。緊張していた証拠だろう。
落ち着いた空気になり、3階へ。
この階には怪談の定番、音楽室があったが、部屋の中を見てみると、お決まりのピアノも肖像画も何もない。
当たり前と言えば当たり前だ。廃校に置き去りにするものでもない。
北上が入ってみよう、というので、音楽室に入ってみる。
209 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:21:59 ID:Dzy+Cwqx0
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がらんとした部屋。何も置いてないので、部屋の壁が防音壁になっていなければここが何の部屋か分からないだろうと思う。
しかしここには別の特長があった。
床。床を照らしてみて気付いた。足跡がたくさんある。
大きさからして子供のものだろう。
どうやらここが、子供達の遊び場になっているようだ。
確かに他の教室より少し広いし、何も置いてないので遊び場にはいいかも知れない。
しかしこんなところで何をして遊ぶのだろう、とも思ったが、子供には子供の遊びがあるのだろう。
部屋を出て西の階段に向かう。
いくつかの教室を通り過ぎ、西の階段まで来る。そして階段を下りて再び2階へ。
先ほどと同じように、東に向かう。一度通った場所なので、何となく気が楽だ。
しかしそれは逆だったと思い知る。一度通ったからこその恐怖があった。
中央階段を過ぎ、2-3の教室前に差し掛かって気付いた。
教室の扉が、閉まっていた。
210 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:24:36 ID:Dzy+Cwqx0
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みんな言葉を失う。恐らく同じことを考えているのだろう。
さっきは開いていた?本当に開いていた?さっきも実は閉まっていたんじゃないのか?
でもほんの10分くらい前の事。忘れる訳もない。
しかも以前通り過ぎたとき、俺は開いた扉から風が吹いてきたのを感じている。
鮎川さんが沈黙を破る。
鮎川「ねぇ・・・ここ通るの、止めない?」
神尾「そう、そうよね。中央の階段下りて、出よっか」
誰も閉まっている扉のことには触れない。触れずに回避しようとしている。
当然、俺と北上も同意する。
北上「よし、そうだな。そこの階段下りて、外に出よう」
2-3の方に背中を向けるのも怖い気がしたが、踵を返し、中央階段に向かおうとした。その時だった。
211 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:28:52 ID:Dzy+Cwqx0
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何か聞こえた。すぐに子供の声だと分かった。それも複数人の笑っている声。
上から聞こえる。位置的には・・・音楽室からか?
4人で顔を見合わせる。いけない。何か破綻しそうな空気だ。
声が移動している。いくつかの足音がする。3階を移動して・・・中央階段に向かっている?
神尾「・・・何?何よ?何なの?誰か居るの?」
北上「おっ落ち着いて!早く、早く出よう、下りよう!」
俺「でっでも、あっちから来ているんじゃないのか?」
笑い声は中央階段の方に向かっていった。これで俺たちもそちらに向かったら・・・
冗談じゃない。あの声の集団とは、絶対に会ってはいけない気がする。
鮎川「じゃあ、やっぱり、そこ通って行くしかないの?」
2-3の前を通る。迷っている暇もないか?階段の方から聞こえる声は鮮明になってきている。
212 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:31:16 ID:Dzy+Cwqx0
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再び2-3の方へ振り向き、全員、息を呑む。
・・・扉が開いている。
頭が混乱してきた。しかし行くしかない。声が、階段を下りているのを感じる。
北上「走ろう!雨月、鮎川さんを!」
北上が神尾さんの手を取って走り出す。俺も鮎川さんの手を取る。
俺「鮎川さん、足元、気を付けて!」
4人で駆け出す。
教室の前方の扉を通り過ぎたとき、俺は中から、射るような視線を感じた。
物凄く熱を帯びた、熱い視線。恐らく全員が感じたと思う。
熱い視線だが、冷水を浴びたような感覚。体温がサーっと一気に下がる。
出来るだけ教室の方は見ないようにするが、教室には廊下側に窓が並んでおり、前を向いて走っていると、どうしても視界の隅にこれが映る。
そこで俺は見てしまった。その窓に浮かぶ、無数の顔を。
感情を感じない、無表情な顔。
廊下の一番端、教室側を走っていた俺にははっきり見えてしまった。
こちらが通り過ぎると、それを追うように視線も追ってくる。
そして後方の扉の前へ差し掛かる。通りたくないが仕方ない。
扉は開いている。何か、何かが出てくるに決まっている。
俺は泣きたい気分になったがどうしようもない。駆け抜けるしかない。
そしてそれはきた。
213 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:32:52 ID:Dzy+Cwqx0
13/16
手だ。いくつもの手が教室内から俺に伸びてきた。
扉の前を駆け抜ける瞬間、俺は腕や脚を掴まれた。
俺「~~~!!」
俺は声にならない声を出す。引きずり込まれる?ダメだ!と思った瞬間、掴んでいた手が弾かれたように離れた。
そして・・・俺たちはそのまま走って階段へ。
慌てて階段を駆け下り、1階も走りぬけ、出口から外へ出る。
1階の中央階段辺りも怖かったが、笑い声は既に消えていた。
外へ出た俺たちは、そのまま車の元へと走った。
そこで俺は一度振り向いた。どうしても気になったからだ。
あの教室の辺りを見てみる。窓にはたくさんの顔が見えた。こちらを睨んでいる。
・・・と、それはすぐに消えた。もう一度目を凝らして見ても、何も見えなかった。
214 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:35:55 ID:Dzy+Cwqx0
14/16
車に乗り、エンジンを掛け、帰路につく。
この頃にはだいぶ落ち着いていた。
車内では当然、今体験したことの話。
扉が開いていたとか閉まっていたとか、笑い声が聞こえたとか・・・。
4人が体験したことなので、これは間違いなく起こったこと。
しかし、教室内の顔、そして手が伸びてきたことに関しては、他の3人は知らないと言う。
どうやら俺だけが見たものらしい。
北上に「実は霊感あったんじゃないか?」
と言われたが、どうも実感がない。きっと気のせいだな、と言っておいた。
混乱していたし、幻覚でも見たのだろう、と。
他の事象についても、怪しいものだ。
心霊現象だったのか?と言われると、断言できない。
そもそも最初に鮎川さんが見た通り、校舎内に誰かがいた可能性があるからだ。
幽霊の正体なんて、大抵そういうものだろう・・・と思いたい。
そして北上の車で女の子2人を先に送り、俺も家まで送ってもらった。
家に着いたのは1時過ぎだった。
215 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:38:40 ID:Dzy+Cwqx0
15/16
家に入り、洗面所で顔を洗っていると、姉貴がやってきた。
姉「おかえり、光一」
俺「あぁ、ただいま。まだ起きていたんだ」
姉「ちょっと心配でね。平気だった?」
心配してくれていた。自他共に認めるシスコンな俺には嬉しい。
俺「うーん、まぁ平気平気。なかなか貴重な体験だったよ。あぁ、これ返す」
俺は行きがけに姉から受け取ったお守りをポケットから取り出した。
俺「・・・あれ?」
そのお守りを見て驚く。お守りの袋には、何かの石と紙切れが入っていると言っていたが、袋の外から触ってみて、明らかに中の石が砕けていた。
216 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/08/29(金) 10:40:51 ID:Dzy+Cwqx0
16/16
姉「よかった・・・」
俺「・・・え?あぁ、ごめん、壊しちゃったかな」
姉「いいのよ、そういうものだから」
姉貴はお守りを受け取ると、中を見て何か確かめている。
母「あら、こんな時間にまだ起きているの?」
お袋が起きてきた。
俺「今帰ってきたとこ。風呂入って寝るよ。なんか疲れたし」
母「そう。舞も早く寝なさいね。また具合でも悪くなったら・・・」
姉「大丈夫よ、お母さん・・・」
心配なのも無理はない。
過去に大病を患っていた姉。しかし、奇跡的に一命を取りとめた姉・・・。
姉「もう寝るね。おやすみなさい」
彼女はそう言って少し微笑むと、部屋へと戻っていった