日本人の食事摂取基準は、健康増進法(平成 14 年法律第 103 号)第 30 条の2に基づき厚
生労働大臣が定めるものとされ、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましい
エネルギー及び栄養素の量の基準を示すものである。
2.使用期間
使用期間は、平成 27(2015)年度から平成 31(2019)年度の5年間である。
3.策定方針
・日本人の食事摂取基準(2015 年版)では、策定目的として、生活習慣病の発症予防とともに、
重症化予防を加えた(図1)。
・対象については、健康な個人並びに集団とし、高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下に
関して保健指導レベルにある者までを含むものとした。
・科学的根拠に基づく策定を行うことを基本とし、現時点で根拠は十分ではないが、重要な課
題については、研究課題の整理も行うこととした。

4.策定の基本的事項
1)指標
エネルギーの指標
エネルギーの摂取量及び消費量のバランス(エネルギー収支バランス)の維持を示す指標
として、「体格(BMI : body mass index)」を採用することとした。
BMI=体重(kg)÷(身長(m))2
栄養素の指標
栄養素の指標は、従前のとおり、3つの目的から成る指標で構成した(図2)。
摂取不足の回避を目的として、「推定平均必要量」(estimated average requirement:
EAR)を設定した。推定平均必要量は、半数の人が必要量を満たす量である。推定平均
必要量を補助する目的で「推奨量」(recommended dietary allowance:RDA)を設定し
た。推奨量はほとんどの人が充足している量である。
十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、「目安
量」(adequate intake:AI)を設定した。一定の栄養状態を維持するのに十分な量であ
り、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
過剰摂取による健康障害の回避を目的として、「耐容上限量」(tolerable upper intake
level:UL)を設定した。
生活習慣病の予防を目的に、「生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とす
べき摂取量」として「目標量」(tentative dietary goal for preventing life-style related
diseases:DG)を設定した。

1歳以上について基準を策定した栄養素と指標を表1に示した。

2)レビューの方法、基準改定の採択方針
・エネルギー及び栄養素の基本的なレビューでは、前回の食事摂取基準(2010 年版)の策定
において課題となっていた部分について重点的にレビューを行った。とりわけ、エネルギーに
ついては、エネルギー収支バランスと体格、体重管理に関するレビューを行った。
・また、エネルギー及び栄養素と生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病)の
発症予防・重症化予防との関係についてのレビューを行った。
・基準改定の採択方針を明確に記述した。
3)年齢区分
・従前のとおりの年齢区分とした(表2の表側「年齢」参照)。
4)参照体位
・従前は、基準体位と表現していたが、望ましい体位ということではなく、日本人の平均的な体
位であることから、その表現を参照体位と改めた。

5.活用に関する基本的事項
・健康な個人又は集団を対象として、健康の保持・増進、生活習慣病の予防のための食事改
善に、食事摂取基準を活用する場合は、PDCAサイクルに基づく活用を基本とし(図3)、各プ
ロセスの実際について分かりやすく図で示した。特に活用においては、食事摂取状況のアセ
スメントに基づき評価を行うこととし、活用上の留意点についての詳細を示した。

6.対象特性、生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連
・妊婦・授乳婦、乳児・小児、高齢者については、その特性上、特に着目すべき事項について、
参考資料として示した。
・妊婦、授乳婦について、推定平均必要量、推奨量の設定が可能な栄養素については、付加
量を示した。また、目安量の設定に留まる栄養素については、付加量ではなく、ある一定
の栄養状態を維持するのに十分な量として想定される摂取量としての値を示した。
・高齢者については、過栄養だけではなく、低栄養、栄養欠乏の問題の重要性を鑑み、フレイ
ルティ(虚弱)やサルコペニア(加齢に伴う筋力の減少)などとエネルギー・栄養素との関連に
ついてレビューし、最新の知見をまとめた。
・栄養素摂取と高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)との関連について、レビュ
ーした結果をもとに特に重要なものについて図にまとめ、解説と共に参考資料として示した。
7.策定した食事摂取基準
エネルギー
・エネルギーの摂取量及び消費量のバランス(エネルギー収支バランス)の維持を示す指標と
して、体格(BMI : body mass index)を採用した。このため、成人において、観察疫学研究にお
いて報告された総死亡率が最も低かった BMI の範囲、日本人の BMI の実態などを総合的に
検証し、成人期を3つの区分に分け、目標とする BMI の範囲を提示した。目標とする BMI につ
いては、肥満とともに、特に高齢者では、低栄養の予防が重要である。
・また、エネルギー必要量を推定するためには、体重が一定の条件下で、その摂取量を推定
する方法とその消費量を推定する方法の二つに大別される(図4)。今回、参考表として示した
推定エネルギー必要量は、エネルギー消費量から接近する方法の一つとして算出された値と
なる。これに対してエネルギー収支の結果は、体重の変化や BMI として現れることを考えると、
体重の変化や BMI を把握することで、エネルギー収支の概要を知ることができる。なお、体重
の変化も BMI もエネルギー収支の結果を示すものの一つであり、エネルギー必要量を示すも
のではないことに留意すべきである。

目標とするBMIの範囲(18 歳以上)1 , 2

1 男女共通。あくまでも参考として使用すべきである。
2 観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かった BMI を基に、疾患別の発症率と BMI との関
連、死因と BMI との関連、日本人の BMI の実態に配慮し、総合的に判断し目標とする範囲を設定。
3 70 歳以上では、総死亡率が最も低かった BMI と実態との乖離が見られるため、虚弱の予防及び生活習慣
病の予防の両者に配慮する必要があることも踏まえ、当面目標とする BMI の範囲を 21.5~24.9 とした。
参考表 推定エネルギー必要量 (kcal/日)

1 身体活動レベルは、低い、ふつう、高いの3つのレベルとして、それぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲで示した。
2 主として70~75歳ならびに自由な生活を営んでいる対象者に基づく報告から算定した。
3 妊婦個々の体格や妊娠中の体重増加量、胎児の発育状況の評価を行うことが必要である。
注1:活用に当たっては、食事摂取状況のアセスメント、体重及びBMIの把握を行い、エネルギーの過不足
は、体重の変化またはBMIを用いて評価すること。
注2:身体活動レベルⅠの場合、少ないエネルギー消費量に見合った少ないエネルギー摂取量を維持するこ
とになるため、健康の保持・増進の観点からは、身体活動量を増加させる必要があること。
たんぱく質
たんぱく質の食事摂取基準
(推定平均必要量、推奨量、目安量:g/日、目標量(中央値):%エネルギー)

*乳児の目安量は、母乳栄養児の値である。
1 範囲については、おおむねの値を示したものである。
2 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
脂質
脂質の食事摂取基準
(脂質の総エネルギーに占める割合(脂肪エネルギー比率):%エネルギー)

1 範囲については、おおむねの値を示したものである。
2 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
飽和脂肪酸の食事摂取基準(%エネルギー)

n-6 系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

n-3 系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

炭水化物
炭水化物の食事摂取基準(%エネルギー)

1 範囲については、おおむねの値を示したものである。
2 アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
3 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
食物繊維の食事摂取基準(g/日)

エネルギー産生栄養素バランス
エネルギー産生栄養素バランス(%エネルギー)

1 各栄養素の範囲については、おおむねの値を示したものであり、生活習慣病の予防や高齢
者の虚弱の予防の観点からは、弾力的に運用すること。
2 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
3 脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要があ
る。
4 アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
5 食物繊維の目標量を十分に注意すること。
脂溶性ビタミン
ビタミンAの食事摂取基準( RAE/日)1

1 レチノール活性当量(µgRAE)
=レチノール(µg)+β-カロテン(µg)×1/12+α-カロテン(µg)×1/24
+β-クリプトキサンチン(µg)×1/24+その他のプロビタミン A カロテノイド(µg)×1/24
2 プロビタミン A カロテノイドを含む。
3 プロビタミン A カロテノイドを含まない。
ビタミンDの食事摂取基準( /日)

ビタミンEの食事摂取基準(mg/日)1

1 α―トコフェロールについて算定した。α―トコフェロール以外のビタミン E は含んでいない。
ビタミンKの食事摂取基準( /日)

水溶性ビタミン
ビタミンB1の食事摂取基準(mg/日)1

1 身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミン B1の欠乏症である脚気を予防するに足る最小必要
量からではなく、尿中にビタミン B1 の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算
定。
ビタミンB2の食事摂取基準(mg/日)1

1 身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
特記事項:推定平均必要量は、ビタミン B2の欠乏症である口唇炎、口角炎、舌炎などの皮
膚炎を予防するに足る最小摂取量から求めた値ではなく、尿中にビタミン B2 の排泄量が増
大し始める摂取量(体内飽和量)から算定。
ナイアシンの食事摂取基準(mgNE/日)1

NE=ナイアシン当量=ナイアシン+1/60 トリプトファン。
1 身体活動レベルⅡの推定エネルギー必要量を用いて算定した。
2 ニコチンアミドの mg 量、( )内はニコチン酸の mg 量。参照体重を用いて算定した。
3 単位は mg/日。
ビタミンB6の食事摂取基準(mg/日)1

1 たんぱく質食事摂取基準の推奨量を用いて算定した(妊婦・授乳婦の付加量は除く)。
2 食事性ビタミン B6の量ではなく、ピリドキシンとしての量である。
ビタミンB12の食事摂取基準( /日)

葉酸の食事摂取基準( /日)1

1 妊娠を計画している女性、または、妊娠の可能性がある女性は、神経管閉鎖障害のリスクの
低減のために、付加的に 400µg/日のプテロイルモノグルタミン酸の摂取が望まれる。
2 サプリメントや強化食品に含まれるプテロイルモノグルタミン酸の量。
パントテン酸の食事摂取基準(mg/日)

ビオチンの食事摂取基準( /日)

ビタミンCの食事摂取基準(mg/日)

特記事項:推定平均必要量は、壊血病の回避ではなく、心臓血管系の疾病予防効果並びに抗
酸化作用効果から算定。
多量ミネラル
ナトリウムの食事摂取基準(mg/日、( )は食塩相当量[g/日])

カリウムの食事摂取基準(mg/日)

カルシウムの食事摂取基準(mg/日)

マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)

リンの食事摂取基準(mg/日)

微量ミネラル
鉄の食事摂取基準(mg/日) 1

過多月経(経血量が 80 m L/回以上)の人を除外して策定した。
亜鉛の食事摂取基準(mg/日)

銅の食事摂取基準(mg/日)

マンガンの食事摂取基準(mg/日)

ヨウ素の食事摂取基準( /日)

1 妊婦の耐容上限量は 2,000μg/日とする。
セレンの食事摂取基準( /日)

クロムの食事摂取基準( /日)

モリブデンの食事摂取基準( /日)

・厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要