この季節、ちょっと外に出るだけでも周りの緑が勢いよくざわめいている感じがして気持ちいいですよね。
苔毬はたまに動画を見る以外は爺ニャンと春眠をむさぼりまくってますが、”貴方へのおすすめ動画”で可哀想な犬猫の動画押しばかりされて何となくずっと見ちゃってた中、スカボロー・フェアの動画があったんですよ。
(現代のスカーバラ地方の風景+歌詞付きサイモン&ガーファンクルの曲)
パセリ セージ ローズマリー アンド タイム~の、このフレーズ、いいですよね。
サイモン&ガーファンクル(以下S&G)のアレンジで有名なこの曲の切ない感じの素朴な癒しのメロディは、誰もが1度は耳にし、覚えているのではないでしょうか。
(感動話とかヒーリング物のBGMによく使われている曲ですよね!)
ぼ~っと聞いているだけの曲調や歌詞のイメージでは、竹取物語のかぐや姫と求婚者たちのやり取りのような報われることのない愛の歌、苦い過去の愛の歌~のように解釈できますし、日本語歌詞もそのスタンスでつけられているので、大概の人がそう思っているんじゃないかな?
スカボロー・フェアはイングランド北ヨークシャー地方の海辺の町スカーバラ(スカボロー)の地名が出てくる古いスコットランド民謡で色んな歌詞バージョンがあり、S&Gの原曲はThe Elfin Knight(妖精の騎士)と言われています。
(Wikipediaのページ(こちら)に書かれてある男女バージョンの短縮+反戦歌詞入れ)
Where are you going to Scarboro Fair
Pasely Sage Rosemary and Thime.
Remember me to a bonny lass there.
For onece she was a true lover of mine.
Tell her to make me a cambric shirt.
Without either meedle or thread worked in it
And tell her to wash it in yonder spring
Where water never spring nor a drop ran through.
シンプルなThe Elfin Knight(妖精の騎士)歌詞&メロディこちら
歌詞にはボニー・ラス(a がついているので人名ではなく、美しき乙女~の意味)にカンブリック・シャツを作るように言ってくれ~と言う言葉が出てきて、たいがいは”カンブリック生地のシャツ”もしくは”薄い生地のシャツ”と訳されています。
カンブリック生地のシャツの発祥は14世紀のフランスなので、それが歌詞に出てくると言う事は、それ以降の時代の曲~と言う事になります
が、
苔毬の持論では、元々カンブリア紀の語源で有名なカンブリア(ウェールズ地方の古名)地方のシャツの事を指していてもっと古いと思うのです。
ウェールズ地方とスコットランドは妖精伝説の本拠地的な地なので、”妖精の(もしくは古代ケルトの)魔法のシャツ”とも言えます。
だから作るのに縫い目がない~とか湧かない泉(S&Gの場合は井戸)で洗うなどの縛りがあるんですね。
イエイツやグリム、アンデルセンなどを読むと、こうした作るのが不可能なモノを作る縛りが結構あって、それがなぜ必要かは、ズバリ呪いを解くためです。
(アンデルセンの白鳥の王子が有名パターン!)
つまり、この歌詞はタイトルである妖精の騎士(呪われた騎士)が、旅人にささやいている言葉で、合間に出てくる魔よけのハーブたちの羅列は、旅人がつぶやく日本で言う”くわばら くわばら(桑原 桑原/桑畑に雷は落ちないと言う言い伝えが発祥)”と同じ魔よけのおまじないなんですね。
パセリは冷凍しちゃってないですが、セージ、ローズマリー、タイムはうちの庭にも常備
これらの植物はその効能と花言葉から魔よけの植物として古くから使われていて、今でもイギリスその他の地域ではちょっとした不調には薬よりも先にハーブを使う事が多かったりします。
(日本の田舎でゲンノショウコやドクダミ、葛根なんかを使うのと同じ感覚!)
歌詞には死神や悪魔なんかのパターンもあるので、人によっては妖精(エルフ)の騎士=魔物、恐ろしい存在で、返事をすると魂を持っていかれるので旅人はひたすらおまじないを呟いている~と言う解釈をする場合もあるので、その解釈だとかなり怖いです。
(首なしの騎士の幽霊伝説とか有名ですよね!)
S&Gの場合もその迫りくる恐怖や今はもうお伽噺になっている無意味なささやきのようなものを意識してベトナム戦争への反戦的な歌詞を織り交ぜているのだと思います。
丘の傍らに舞い落ちる木の葉
銀の涙で墓を洗う
1人の兵士が銃を綺麗に磨く
真紅の大軍から燃え上がる戦いのうめき
将軍たちは彼らの兵士たちに殺せと命ず
もうとっくに忘れ去られていた理由のために戦えと
この曲が治められたS&Gのアルバム名がPasely Sage Rosemary and Thimeと言うのも、アメリカ参入でかえって泥沼化したあの戦争へのもう2度とそんなことが起きないように~と言うメッセージな気がします。
さて、
話戻って、この曲の原形がどんなものだったか~と言うのは、正確には解らないようで、現存しているパターンから大体のイメージを掴むしかありません。
ただ妖精の騎士が出てくる曲でスカボロー・フェアにダブる歌詞のある曲があり、その中では乙女が恋愛関係にあった妖精の騎士に結婚を迫るのです。
その答えとして妖精の騎士が彼女に言うのが”ナイフや針を全く使わないでシャツを作ってくれ”などなのです。
ですので、現在有名なスカボロー・フェアは乙女の事をかつての恋人扱いしているので続編的なものである可能性もあります。
(死神なんかのほかに老人バージョンもあるそうなのはそれが理由かもです。)
ちょっと記憶が定かではないのですが、多分イエイツの妖精物語の中にスカボロー・フェアとほぼ同じ縛りの物語があった気が…
異界の者と恋物語は日本昔話にも結構ありますよね。
現在有名な曲が続編ならば、乙女はその期待にこたえられなかったと言う事で、今でも妖精の騎士は彼女が自分の呪い(妖精界の呪縛かも)を解いてくれるのを待っている立場にあります。
そもそも人間には無理難題なので仕方なく、悲恋の歌~要素になりますね。
ただ、苔毬的にもう1つ持論があって、このスカーバラの乙女がフェ、フェイ、ファータ(フェアリーの語源・神と人間の中間の存在/妖精の意味)で、それを承知で妖精の騎士にされている悪魔/死神が誘惑して関係を持ち、呪縛を解こうとしている物語でもある可能性がある~と言いたい。
(フェについてはアーサー王に出てくる妖女モルガン/モルガン・ル・フェが有名。妖女だけど最後は危篤のアーサーをアバロンに運ぶ乙女の1人)
つまり、元々スカボロー・フェアじゃなく、スカボロー・フェ(Fae)で、口伝えの中で変化したんじゃないかと。
~と、言いますのも、男女で歌うパートが分かれて歌うパターンの場合、女性側も海水と波打ち際の間に1エーカーの土地を羊の角で耕してペッパーを植えて~など、そうすれば本当の恋人になるからと無理難題を出してるんですよ。
そしてカンブリックのシャツは出来ているらしく”取りに来いと言って”~と言っています。
(Wikiの男女用パターン例参照)
そうなると腹の探り合いです。
ここでパターン的に思い出されるのがアーサー王物語のモルガン・ル・フェと騎士ガウェイン卿の物語。
モルガンの誘惑に屈しなかったガヴェイン卿は闇落ちして彼女の騎士にされ堕落した生涯を閉じる物語もあるのです。
(ある意味呪い!)
アーサー王物語は吟遊詩人の時代から人気のある題材だったので、どんどん変化したり創作が加えられて行ってついに名詞がなくなった形になっていても不思議じゃない。
そんな背景がある曲なのだと、今度スカボロー・フェアを耳にしたら考えてみるのも面白いんじゃないでしょうか
アクセサリー類販売&オーダー受注のみ再開いたしました


Click and see my works
