ゴジラー1.0 | mori17さんのブログ

mori17さんのブログ

「映画大好きおっさん」の映画関連

今回視聴したのは、2023年の「ゴジラー1.0」で、アマプラにて拝見しました。

 

ゴジラ-1.0

 

今から35年以上前の大学生の時に、初代「ゴジラ」を初めて観ましたが、その当時かなりの衝撃を受け、今まで観たゴジラ映画の中で一番面白かったのがこの初代「ゴジラ」じゃないかと、頭の中で反芻した記憶があります。

 

怪獣映画としてではなく、映画としてとてもよく出来た作品でしたし、原爆に対するアンチテーゼであるゴジラが、戦後再び日本を焼け野原にすることで、恐怖の対象であるゴジラ=戦争として、改めて戦争という悲惨な行為に対し、絶対にやってはいけない行為であると思わせる作品でした。

 

そして今回拝見した本作では、まず初心に帰るという意味があったのでしょう、戦中線後の日本を舞台としており、そしてゴジラが吐く放射能熱線が、まるで原爆であるかのように描くことで、やはり原爆のアンチテーゼ感を醸し出し、しかもゴジラを徹底的に恐怖の対象として描いています。

 

まるで、「戦争なんかすると、こんな目に遭うんやで~」と言わんとしているようで、ここから復興するためにゴジラを殺すというよりも、ゴジラを海に沈めてしまおう=海に追い返すという、やられたらやり返すのではない、闘いを繰り返すのではないのだといった心意気が感じられる作りになっています。

 

また、本多猪四郎監督を彷彿させるような人間ドラマを入れることで、人間の弱さをうまく表現しており、ち密に話を積み上げることで観客に日常感と非現実感を分からせる作りになっています。

 

主人公はどっちかというと弱キャラであり、特攻作戦で出撃したものの、怖くて嘘をついて帰還し、しかもゴジラ相手に20mm機関砲を撃つことができないことで同胞たちが死んでしまい、終戦後に復員してみればすでに両親は死んでいたり、さらには隣のおばちゃんにも責められ、とどめに赤ちゃん抱えた他人に居候されるといった、散々な弱者ぶりを発揮します。

 

自分の弱者っぷりが原因で罪を犯し、その罪に対する罰として他人からも自分からも責め苦を受け、その罰の過程で彼女の母性を見せられ、生きねばならないと気持ちの変化が起こった時、ゴジラという名の過去が彼を追っかけてきたため、もう一度ゴジラと対峙することになりますが、また敗戦してしまいます。

 

しかし彼女に母性で抱きしめられ包み込まれること、赤ちゃんをあやす彼女を見つめることで自分の中に家族という幸せを見つけ未来を生み出し、過去と向き合えるようになります。

 

つまり、自分否定から自分肯定へと、切り替えることができたのです。

 

また、そんな彼女が爆風であんなことになってしまい、慟哭し、彼を完全に変えてしまいます。

 

これにより、過去と決着をつけるために、贖罪(罪や過ちを悔い改める)という名の特攻を仕掛けることになり、結局、そこに死ではなくヒューマニズム(人間解放)を成し遂げます。

 

これは、戦争で死ぬという事(特攻)を肯定しないことで、葛藤に対する贖罪と、家族を取り戻すことに成功しているのです。

 

*葛藤

 ・人と人がお互いに譲らずいがみ合うこと

 ・心の中に相反する動機、欲求、感情などが存在し迷うこと

 ・正道を妨げる煩悩のたとえ

 

まさに人間讃歌(人間性の否定ではなく肯定)としてゴジラ映画を描き切っており、しかも、見事にカミューの4原則(不条理、抵抗、連帯、解放)を当てはめ贖罪映画として成立させています。

 

さらには、ゴジラを祟り神としてとらえ、祟り神を鎮めることに成功したことで人として崇高(巨大なもの、勇壮なものに対したとき対象に対して抱く感情)な気持ちにさせることにも成功しています。(敬礼シーン)

 

因みに心理学的に考えると、

 

・自分の心の弱さから来た過ちにより肯定感が低い

・現状を忘れて自分の内側から幸せを見つけることで、未来の自分が見つかる

・前に進むには過去との向き合いが大切

 

この3条件をおさえた作りになっており、この主人公の成長に対し映画を観た観客は、この主人公の感情を共有することで、自分たちの心へ反映する仕組みになっています。

 

しかも、そんな主人公の心の葛藤っぷりを見せられ揺さぶられた上で、我々のような子供の時に海軍の軍艦プラモを作っていた世代には、お涙物の「高雄」や「雪風」などというサプライズに輪をかけて揺さぶられ、思わず泣きそうになりました。

 

また、とどめの「震電」の登場には「デスレース2000年」以来となる実写映画での活躍なわけですから、心が震えました。(笑)

 

しかも「ダンケルク」ネタまで入れてくれましたからwww

 

さてさて今回のMVPですが、①ゴジラの演技、②俳優陣の演技が候補として出ましたが、今回はうまくバランスの取れた俳優陣の布陣にしたいと思います。

 

日本演劇って歌舞伎の要素を下手に取り入れて失敗することが多いのですが、今回は神木隆之介君を核に、それを取り巻く俳優陣のバランスがうまく機能し、しかも対比としてあのゴジラの恐怖っぷりが素晴らしく、実に見ごたえのある内容に仕上がっています。

 

何事もバランスが重要ですね。

 

とても見ごたえのある作品でした。

 

 

・猫のユーリさんの動画

 ユーリさん - YouTube

 

・猫ユーリ博士の動画

 猫ユーリ博士の「お得コーナー」 - YouTub