隠し砦の三悪人 | mori17さんのブログ

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今回視聴したのは、1958年の「隠し砦の三悪人」で、DVDにて拝見しました。

 

隠し砦の三悪人[東宝DVD名作セレクション]

 

監督は黒澤明、主演は三船敏郎

 

恐らく、昭和生まれの人なら知らない人はいないのではないかというくらいの名作です。

 

今から40年前の高校生の時に初めて観ました。

 

黒澤映画では、確か「椿三十郎」、「用心棒」、「姿三四郎」の3本を見た後に4本目として観たと思いますが、あまりの面白さに、こんな娯楽映画があったのかとものすごい衝撃を覚えました。

 

百姓の太平と又七のコンビ芸が、後の映画製作者にかなりの影響を与えており、ジョージ・ルーカスが「スターウォーズ」でR2D2とC3POで再現したり、っていうかオビ・ワン役を三船敏郎へ依頼したけど忙しいからと断られたという話はあまりにも有名です。

 

商品説明欄には、「美姫と黄金を守り敵中突破! 勇壮! 豪快! 冒険娯楽活劇巨編!」と書いてあり、やっぱり黒澤監督は娯楽映画の神様だと感じさせる作品でもあります。

 

正直言ってヒューマニズムもいいのですが、やっぱり娯楽映画をもっと量産してほしかったです。

 

さて話の方は、戦国時代に秋月家と山名家が闘い、秋月家負けてしまいます。

 

秋月家の一部の者が隠し砦に逃げ延び、同盟国の早川領へ逃げようとチャンスをうかがっていた時に、いろいろあって山名家に捕まってそこから逃げて来た百姓の太平と又七に出会います。

 

2人は仲がいいのか悪いのか腐れ縁なコンビで、とにかく強欲で金と女に目が眩む、そして強いものには媚びへつらうといった感じで描かれます。

 

ほんで2人は秋月領から早川領へ逃げようとしていましたが、国境沿いには関所が設けられ、簡単には抜けれない状態に困窮しており、丁度、隠し砦にいた大量の金を持った真壁六郎太(武将)と雪姫に出会い、六郎太に脅され、さらに女と金に目が眩み4人で早川領へ逃げることになります。

 

しかもルートは、秋月領➔山名領➔早川領であり、敵陣である山名領を敵中突破するというもので、まさか敵地に来るとは誰も思うまいといった作戦でした。

 

太平と又七は当初、ワンチャンあれば途中で金だけいくらか奪って逃げようとか、隙あらば雪姫を手籠めにしようとか思っていましたが、なんやかんやよく出来た脚本(笑)によりそれは失敗に終わり、とにかく強欲ぶりを発揮しながら早川領へ向け進んでいくのでした。

 

とにかくこの辺は、二人の強欲ぶりをこれでもかと描き出します。

 

これは後ほど出てくる火祭りの奇麗で荘厳なシーンと対比されることによって、後の死をまじかに迫った雪姫の心情にかなりの影響を与えます。

 

実はこの作品、いろいろ仕掛けがあって、その一つが雪姫の成長物語なのです。

 

戦に敗れ、逃げ出さなければならないシチュエーションに加え、自分の領地の領民が奴隷として売られている現状にさらされたり、人間の強欲さを目の当たりにした先に、窮屈な城住まいでは体験できない祭りの神秘さ楽しさを通して心を開放し、民の苦しさや世の中の楽しさを経験することで全てを受入れ許すといった境地に達します。

 

このことが後に自分の身を助ける結果になるのです。

 

また、雪姫に助けられた百姓娘も、雪姫の正体を知った後に助けられた恩義から身を挺して姫に尽くしますが、それはただの伏線でしかありません。

 

もっとすごい伏線へと繋がる小さな伏線の一つなのです。

 

そしてこの映画は雪姫の成長うんぬんより、やはり娯楽映画ですから、エンタメするため、六郎太の大活躍シーンがちょいちょい入ってきます。

 

特に重要なのが真壁六郎太と田所兵衛との対決です。

 

それは有名武将同士の闘いであり、剛の者と剛の者どうしですから、決着がつけば武士として勝った方が負けた方の首を落とすのが武士の習わし。

 

それに対し勝った六郎太は兵衛の首を落とさずその場を去り、兵衛は辱めを受けたことになります。

 

このことが元で兵衛は、上司である大殿に大勢の前で罵られ弓杖で叩かれ、顔面に大傷をうけ六郎太を恨むようになります。

 

後にその話を兵衛自身から聞いた雪姫は「人の情けを生かすも殺すも己の器量次第じゃ、そしてその主(大殿)は糞やろうじゃ」と兵衛に言い聞かし、さらには自分の人生に対し自分を盛り立ててくれた皆に感謝します。

 

そして死を受け入れた雪姫は、詩を歌います。

 

人の命は 火と燃やせ

虫の命は 火に捨てよ

思い思えば 闇の夜や

浮世は夢よ・・・

 

さあ、このことがどういった結末へつながるのか?

 

実は本来性(自分自身に従って自分を理解)と非本来性(世間の尺度に従って自分を理解)という考えが兵衛の中に発生してしまい、これに対して世人に属するのではなく、本人が責任を持って行動する道へと変化していきます。

 

これがこの映画最大の核となるポイントです。

 

百姓の太平と又七が六郎太と雪姫に出会い、行動に移すことで雪姫が成長し、更に雪姫だけでなくみんながこのポイントへと昇華していきます。

 

あまりに娯楽性がある作品なので分かり難いですが、実はハイデガーの哲学に照らし合わせて作られています。

 

そうなのです、これは太平と又七にとっても成長物語でもあったわけで、そういうことであの最後の太平と又七が城の門から出てイチャつくシーンで幕を閉じるオチとなっています。

 

そうなのです、みんなが笑顔になって終わるのです。

 

あの展開から大団円へ着地するという、ものすごい娯楽映画でした。

 

こんな感じ。

 

 

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