不毛地帯 | mori17さんのブログ

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「映画大好きおっさん」の映画関連

今回視聴したのは、1976年の「不毛地帯」で、DVDにて拝見しました。

 

不毛地帯[東宝DVD名作セレクション]

 

商品説明欄には、「商社の暗躍ぶりを政治家の利権争いを織りまぜながら描いた山崎豊子の同名小説の映画化!」とありました。

 

不毛地帯の不毛の意味を調べると、「土地がやせていて草木が育たない」とのことで、この映画の何が不毛なのか? 実はこれ、主人公が過去に受けた体験と、自分が仕出かしたことに対する結果の両方が不毛であったとして描かれます。

 

頭が禿げたとかそういう意味ではなく、この二つの不毛を描いた映画なのです。

 

主人公の壱岐(仲代達矢)は戦時中に日本軍大本営作戦参謀というエリートであったが、終戦直後に満州で親友の川又(丹波一郎)を助けるために取った行動により、関東軍の武装解除後ソ連軍の捕虜となり、戦犯として激しく尋問され、11年もの間シベリアに抑留(強制労働)されました。

 

抑留(強制労働)人数は、約57万5千人に上ると言われ、この不毛とも思える地での厳寒環境下で満足な食事も与えられず、苛烈な労働を強要させられたことにより、34万人が死亡しました。

 

ソ連からしたら、移送した日本軍将兵は戦闘継続中に合法的に拘束した捕虜であり、戦争終結後に不当に留め置いた抑留者には該当しないとし、捕虜による強制労働にて役務賠償しているとの考え方で、主人公は資本主義幇助罪として重労働25年の刑を言い渡され、11年ほど抑留されたのです。

 

その後、日本へ生きて戻れた主人公は、近畿商事へ就職することになりますが、その時、この会社で残りの人生を間違えたくはないと考えて、条件を申し出ました。

 

・言論の自由束縛をしない

・商売は不向きである

・シベリア時代の話はしない

 

普通、就職希望者が条件を付けるなどと考えにくいですが、近畿商事の社長は採用に際し「大本営作戦参謀としての作戦力と組織力を近畿商事で生かしてもらいたいからで、かつての人脈や肩書を使ってほしいという訳ではない」と言い、結局就職します。

 

ここで言う主人公の人生を間違えたくないとは、実は防衛庁から引き合いがあったのですが、それを蹴って民間会社へ就職するという行為であり、戦争に関わるのは二度とごめんだという意味です。

 

ほんで暫くは繊維部で働いていましたが、やがてアメリカ出張時に社長の策略が炸裂し、次期主力戦闘機選定をめぐるズボズボの商売戦争に加担することになります。

 

実はこのアメリカ出張の前と後で、仲代達矢の演技が少し変化します。

 

主人公は当初、戦争体験により守りの仕事ぶりというかおとなしく働いていましたが、アメリカでかつての軍人仲間で親友である防衛庁の川又がしていた戦闘機選定の仕事を目の当たりにしたことから、元軍人の血が騒ぎ、悩みますが積極的な仕事ぶりへと変わっていきます。

 

それもかつて人脈や肩書を利用し、冷徹な作戦を作成し実施する、しかも政治とかかわりを持ち暗躍する仕事ぶりです。

 

仲代達矢は、暗躍する冷徹な演技プランへと変えて演じるのですが、更に話が進むと、人としての葛藤、怒り、後悔などの演技もぶち込んでくるという名演を披露してくれます。

 

そしてこの対比として、丹波哲郎の演技も光るものがありました。

 

もっと言うと、仲代達矢を支える八千草薫が優しく甘いあの顔立ちで内助の功を演じ、娘役の秋吉久美子がフレッシュな女優ぶりを発揮したりとなかなかの演技陣でした。

 

特に娘に、二度と戦争はしたくない、してはいけないというのが国民の願いであり、だから父は防衛庁に入らなかったはずなのに、いつの間にか次期戦闘機を受注する仕事をしてしかも暗躍していると言われるシーンで、あの押し殺した仲代達矢の演技が大炸裂し、しかもその後の葬式での怒りや苦悶の演技が物凄かったです。

 

そして物語は、商売はうまくいったものの主人公にとって最悪の結果となり、シベリアの出来事に続いて、平和になった戦後日本のビジネスでまた同じ不毛地帯だったというオチを迎えます。

 

これはアメリカニューヨークのエンパイアステートビルにて「この国を相手にして貿易戦争を勝ち抜かなければ日本は生きてゆけない」と言うセリフがあり、これにおける伏線回収がこの映画のオチであり、題名であったという訳です。

 

政治の腐敗も描いていますが、言い換えれば、折角戦争を生き残ったのにまた戦争をしてしまうという悲劇を描いた作品だったわけです。

 

因みに原作が連載中にロッキード事件が発生し、その影響からか、どうも監督がロッキード事件に絡めて原作改変してしまったため、原作者がお怒りになったとのことで、また、アメリカのニューヨークとロサンゼルスの対比がリアルすぎて、アメリカ上映時に大爆笑を誘ったとのこと。

 

さてさて今回のMVPですが、MVPを仲代達矢の演技とし、準MVPをあの各人の駆け引きからの国防会議風景、そして主人公と社長のやり取りへとつながる描写といたし、これによりこんなことばかりやっていると、「ニホンオワタ」になるよという警告的締めがヤバかったです。

 

まるで未来の予言書みたいでヤバすぎました。

 

こんな感じです。

 

 

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・猫ユーリ博士の動画

 猫ユーリ博士の「お得コーナー」 - YouTub