首 | mori17さんのブログ

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「映画大好きおっさん」の映画関連

今回視聴したのは、1968年の「首」で、DVDにて拝見しました。

 

首<東宝DVD名作セレクション> [DVD]

 

 

宣伝文句は、「生首にものを云わせてみせる!」「不正に挑む男の危険な捜査活動!」となっており、正義感の強い警官が無茶な捜査でもする映画かと思い観始めました。

 

すると主人公は警官ではなく弁護士で、不正をした警察や検察に対して正義を執行する弁護士の姿が描かれていました。

 

もっと言うと、「はだしのゲン」という作品で、戦時中に秘密警察が容疑者を拷問するというシーンがありましたが、要はアレなわけで、本作では折檻(肉体を苦しめてこらす)した警官が容疑者を殺してしまうけど、脳溢血で死んだことにして真実をごまかしたということで、これを弁護士が追求する話です。

 

どうも実際にあった「首なし事件」をもとにした作品らしいです。

 

冒頭、ある墓が映し出され、その前で主人公が苦悶の表情を浮かべている様が映し出されます。

 

次に戦時中であるという事が強調され、そこに容疑者を折檻する警官が映し出され、ここでタイトルの「首」が、めちゃくちゃヤバそうな音楽とともにタイトルアップされオープニングへ移行します。

 

そこから主人公の弁護士が映し出され、どんな感じの人か、考え方はどんなだといったことが紹介されるエピソードの後、知り合いから田舎でおかしな事件があったから弁護してくれないかと話が舞い込みます。

 

依頼というのは田舎の警察で起こった事件で、村の炭鉱会社の鉱脈指示人であり会社の要である男が、ある日花札賭博の容疑で警察にしょっ引かれ、取り調べ中に推定脳溢血で死んだというもので、会社としては納得がいかないというものでした。

 

どう納得がいかないかと言うと、他にも警察に連行された従業員が数人おり、そいつらは闇市容疑(配給制のコメを無断で売買する)で捕まったものの、結局、全員が折檻されており、その中で一人だけ死体で帰ってきたというもので、絶対に折檻中に死んだ(殺された)という疑惑でした。

 

取り合えず検視をすれば本当に病死である脳溢血なのか、それとも殴られた折檻死(脳挫傷)なのかがわかるので、主人公は検察へ行き、土葬された死体を検視するよう要望をしたところ、満州帰りの検察官が敵意むき出しに主人公に食って掛ります。

 

主人公の考えでは、現場の警官などはちゃんとした教育を受けてないのでヤバいけど、検察の人間などはしっかりした教育を受けているから正当な対応をしてもらえると合理的に考えていました、と言うより、合理的に早く解決したいと考えていました。

 

しかし実際はそうではなく、弁護士vs検察&警察であり、ここから戦いの火蓋が切って落とされるのでした。

 

要するに、警察の不手際が検視で証明(脳溢血でなく脳挫傷)されるとヤバいから、何とか誤魔化そうというのが検察の考えで、そうはさせまいと主人公の奮闘が始まります。

 

しかし、検察の動きは早く、主人公側が後手に回ってしまい、主人公立ち合いでの検視は実現せず、別の人である炭鉱会社の従業員が立ち合いとなり検視は終了し、結果、正式に脳溢血との判定が下ってしまいました。

 

しかし、不審に思った主人公はいろんな人に聞き取りを実施し、その内容を精査したところ、

 

①死んだ従業員は花札賭博容疑で連行。

②尋問した警官は闇市容疑で尋問。

⓷検視中に検視官から説明された内容が怪しい。

 

という事が分かり、しかもライバルの炭鉱会社が最初の連行した駐在とズブズブな関係で、どうもライバル会社から嫌がらせを依頼された駐在が花札賭博で連行した後、尋問担当の警官に闇市容疑と伝え、それを聞いた尋問官が、罪の重い闇市の自白を引き出そうと折檻して殴ったら脳挫傷で死んじゃったというのが真相らしく、しかも東大の法医学の先生に検視の説明内容を話ししたら、「それはないやろ~、その検視間違いじゃね?」といった話になり、再検視を検察に要請します。

 

しかし、検察もやるもので、もし弁護側が書類をそろえていろいろ手続きを進めたら、もうすでに正式に検視が行われたと捜査を打ち切ればいいし、そのうち死体も腐ってしまい検視もできないことを見越して行動してきます。

 

そこで困った主人公が取った行動とは?

 

これが驚愕の内容で、弁護士としてはやってはいけないだろうといった衝撃で、しかしここで宣伝文句を思い出してください。

 

アレですから、アレをするために主人公はとんでもな行動に打って出ます。

 

というわけで、その行動は成功するのか? そして検察の不正を正すことができるのか? といったところで、前半は証言を集め何が行われたのかを推理する見せ場でしたが、後半の見どころはこの主人公の行動になります。

 

はっきり言って、最後の最後は怒涛の展開となりますが、決着後の戦後の主人公の活躍も一部紹介されます。

 

これにより、正義とは何ぞやというところに一つの結論が出ます。

 

それは、「正義とは、一番合理的な精神の上に立つもの」ではなく、時として「正義とは、必要な時に必要なことを思い切ってやる」であると。

 

つまり、「合理的なことばかり考えていると、案外それは利己主義に陥り、正義までもがそれに埋没することもある」ということです。

 

今まで主人公は、仕事を合理的に考えており、現場の警官はともかく教育を受けた検察はまともなはずで、ここと話を進めればうまくいく、最初の検視結果に間違えなどあるわけないと考えていましたが、今回の事件で検察とは敵同士であると分かり、先ほどの結論も踏まえ、どう考えが変わるのか?

 

また、検視と言う科学的で合理的な方法をどう今後に生かすのか? 

 

はたまた、今は戦時中だから暴力警官がいたり検察が敵だったりするが、戦争が終わりさえすれば世の中が変わるのか?

 

こういったところまで踏み込んで答えを出した作品であり、最近では是枝監督が「三度目の殺人」で合理的弁護士の変わりざまを描いていましたが、こんな感じで正義と弁護士とは?といった案件を描いています。

 

今も昔も人間は変わっていないという事でしょうか?

 

この辺は最近でもおこった「大川原化工機事件」や、未だにやってる「袴田事件」などあるので、皆もこの作品を観て勉強するべきだと思います。

 

さてさて、今回のMVPですが、①主人公役の小林桂樹、②中原(東京大学雇員)役の大久保正信が候補として上がり、結局②にします。

 

これは熱演の小林桂樹に対し、もはや対局と言ってよい大久保正信の演技が唯一の笑いどころといった、ヒートアップに対するクールダウン演技がとても印象に残り、ぜひこれといたします。

 

こんな感じでなかなかの名作した。

 

 

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