今回視聴したのは、1985年の「タンポポ」で、BDにて拝見しました。
この映画、ラーメンウェスタンとかラーメン活劇などと呼ばれており、めしテロ作品でもあります。
メインのストリーに加え、食に関する小ネタの話というかコントが随所に入ります。
多分、メインストーリーだけでは弱いというのもあったのではと思いますが、ラーメン以外の食に関するエピソードにエロを足した小ネタが意外や意外秀逸で、メイン➡小ネタ➡メイン➡小ネタというようにとにかく飽きさせない工夫が面白いです。
恐らく三大欲求の中の食欲を扱う訳ですから、それに対して性欲という事だったのだろうと思いますし、眠気も起きないくらい睡眠欲も出ないくらい面白い映画だという事だと思います。
話の方は、トラック野郎のゴロー(山崎努)と助手のガン(渡辺謙)がふらっと立ち寄ったラーメン屋で、女主人で未亡人のタンポポ(宮本信子)の作ったラーメンがまずく、他客とチョッとしたトラブルもあり、気が付いたらこのラーメン屋を立て直すという事になっちゃったってなストーリーです。
ゴローも途中で「なんで俺こんなことやってんだ・・・」と気が付く始末です。
ほんでラーメンウェスタンと言う通り、「シェーン」的な感じで、ゴローと未亡人とのラヴロマンスありな、そして最後はいい味した別れという締め方のウェスタンの王道的な話です。
因みに店を立て直すにあたって、5人の勇者が登場し、それぞれが担当に分かれてタンポポを一人前に育て上げます。
ゴロー:プロデューサー
ガン:衣装
ピンスケ:内装、ネギラーメン
センセイ:スープ
ショーヘイ:麺
メインストーリーでも小ネタでも、とにかく食のうんちくが小憎らしくコメディタッチに紹介され、まるで「美味しんぼ」でも見せられているのかといった感もあります。
また、食に対するエロですが、食欲に対する性欲ですから、人間の欲望を表現しており、役所広司と黒田福美、洞口依子など、「ナインハーフ」ネタなどをぶっこんで謎のコント? いえいえ、愛のなんたるかを繰り広げます。
また、本編の方でも、ゴローとタンポポの関係は男女の愛でもありますが、それだけでもなく師弟愛でもあります。
それは、焼き肉屋でタンポポは「誉めて」とゴローに絡んだり、対してゴローは「所詮自分はひとつのところにとどまれない」として彼女に過去話をしたり、まるで「ルパン三世 カリオストロの城」を思い起こさせるものでもあります。
ですから説明はしにくいですが、メインでも小ネタでも、とにかく心に衝撃が走り記憶に残るシーンになっています。
いや、正確には小ネタの方が本編より覚えている感がします。(笑)
そして監督のこだわりなのか、帽子と雨をやたら多用します。
帽子はウェスタンの意味もあるのでしょうが、あの山崎努の顔を少しでもカッコよく、しかも「シェーン」ですから、子供が憧れるようメリハリをつけ、そういう意味では相手役の宮本信子の凡庸な顔もより輝くようファッション的(焼き肉屋シーン)に帽子をかぶらせた感があります。
雨の方はとにかく何か特別なんだといった意味合いもありそうで、それとは対比で、ゴローとピンスケのタイマン勝負時では光と影をうまく使った演出となっていました。
さてさて今回のMVPですが、これは本編のラストと、本編と小ネタ含めた全体のラストして2重構造になっていた①ラストのピンスケがゴローを追いかけるシーン、②母親が赤ちゃんに母乳を与えるシーン、の2つが候補です。
①の元ネタである「シェーン」では、子供が「カンバーック」と叫ぶシーンが有名ですが、本作ではオッサンで強面のピンスケがドスドスしながら追いかけていい味を出しています。
②は本作が食にこだわった映画であり、食欲とは人間が生まれた時にはすでに備わっており、赤ちゃんの時には一生懸命に乳を飲むといった姿を見せることで、食とは人間の本能なのだという事を表現しています。
という訳で、本作のテーマにふさわしい②といたします。
まあ、こんな感じで心に残る名作なのでした。
こんな感じです。
・猫のユーリさんの動画
・猫ユーリ博士の動画