PIG/ピッグ | mori17さんのブログ

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「映画大好きおっさん」の映画関連

今回視聴したのは、2021年ニコラスケイジ主演の「PIG/ピッグ」で、アマプラにて拝見しました。

 

ピッグ/pig(字幕版)

 

ニコラスケイジが主演という事で、またB級感漂うあの手の映画かと思って観たのですが、全く違った作風でした。

 

っていうか、こういう演技できるなら、もっとこんな感じでバンバン映画に出ろよと突っ込んでしまいました。(笑)

 

それくらい心を持って行かれる、それも徐々に持って行かれる映画でした。

 

久々です、ニコラスケイジ映画で心にジワリと来たのって。

 

とにかく、ニコラスの見た目が世捨て人というか、中世の人なのっていうくらい子汚いカッコなんです。

 

だから、最初観た時にニコラスだってピンと来なかったのですが、あの額と眼を見たら確かにニコラスでした。

 

んで、世捨て人設定なのか?ってみていたら、大自然の森の中のポツンと一軒家な生活で電気もガスも水道もなく、そのうち壊れるんちやうかっていうくらいのボロ小屋に住み、しかも同居人はピーちゃん(トリュフ豚)ただ一人で、このピーちゃんと貧しくも本人達にしかわからない感情を抱いて生きている、絶対に過去に何かあるなっていう感じでスタートします。

 

っていうか、ファーストシーンが川の水面で、表面からは判らないけど川底に何か渦巻いているのか隠しているのだろうかと感じさせ、皿を洗うカットへと切り替わることで、この先で何かに引っかき回される暗示なのだろうと思いながら本編へと入っていきます。

 

大体こういう設定の映画って、絶対に過去にすげーチート能力を持っていたけど、嫁が死んだりとか何かが切っ掛けで世捨て人になるってなことが多く、「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」でもボンドが世捨て人になってましたが、ボンドの場合は酒浸りになっており、本作のニコラスはピーちゃんと一緒にトリュフ取りをして生活することで余計なことを思い出し考えないようにするってな感じです。

 

その後ニコラスの生活を一変させる事件が起こります。

 

それはピーちゃんが誘拐されるという大事件です。

 

これに対しニコラスは着実に淡々とピーちゃんを捜す行動を起こします。

 

この行動によって、この映画の全貌が徐々に明らかにされていきます。

 

そうなんです、この作品はいきなり分かるような描写を極力なくし、そして説明セリフも少なめで、映像から何かを感じさせたり暗示させる手法を多投して、スピーディではないけれども確実に話を進行させていきます。

 

特に秀逸なのが、過去を物語る手法で過去映像を入れるのでなく、過去を感じさせる手法です。

 

最近の映画ではあまりやりませんが、この観客が読み解く感じ取るといった手法がとても新鮮で良かったです。

 

そして、ピーちゃんを捜す過程でニコラスの相棒となるのがアミールです。

 

最初はただのモブキャラかと思ったのですが、仕事のパートナーとして事件に巻き込まれ、やがてこの誘拐事件が彼の人生とリンクしていき、そしてニコラスの過去も徐々に分かるといった展開になっていきます。

 

最近のTiktokなどといったショートムービーに慣れてしまった人や、行間から読み解くといったことが苦手な人には難しい映画かもしれません。

 

ですが、そういった人でも見続けていけば、ニコラスの心の中や、アミール親子の心の中をも覗き見ることになります。

 

つまり、食と記憶と喪失とをうまくリンクした作風となっており、初っ端ピーちゃんとニコラスが手料理を一緒に食べる何気ないシーンが重要な伏線になっています。

 

例えば、昔関わりのあったシェフが自分の本当にやりたいことが何か分からず、上辺だけの料理を上辺だけの客相手に商売していると諭すシーンや、アミールが母や父へ抱いている感情、アミールの父が嫁と一度だけ食べた食事で一時的に仲が良くなったことなど、流れるように繋がっていきます。

 

まるで昭和の頃に流行った日本の食マンガに相通ずるものがあります。

 

結局、ニコラスがピーちゃんを捜す目的は愛であり、料理をもって愛を忘れた人に愛を呼び起こさせることで、他人だけではなく、実は自分への救済にもなっていたという仕上がりになっています。

 

しかし、決して愛の押し売りではありません。

 

ゆっくりと、ピーちゃんへの愛がそうさせるのです。

 

何というか、冒頭の水面には流れがなかったのに、ラストの水面には流れがあり、その流れの水をすくって顔を洗い、恐ろしくて聞けなかったカセットテープを聞くことができたのは、喪失から前へ進むという決意表明なのだと。

 

テープの音楽歌詞も前向きなエネルギーソングであり、ニコラスの今後を暗示させ、そして伏線通り、寝付いてから夢の中でピーちゃんに再会したのであろうという、人とはいつか死ぬものといった仏教的な認識で、まるで「ララァーとはいつでも会えるから」といったガンダム的な演出エンディングで観客に感動を与えます。

 

恐らく料理による人間交差点的な愛と喪失、そして救済が描きたかったのだと思われます。

 

さてさて、今回のMVPですが、これはニコラスのあの押し殺した静かなる演技にします。

 

特にあのニコラス特有の目の使い方が素晴らしかったですし、愛の押し付けではなく、あくまでピーちゃん救出のために愛を貫いた結果なのだといった演技がヤバかったです。

 

そして、人の変化を見事に演じたアミールと、ピーちゃんが誘拐される時に「ピー(助けてー)」と上げた悲鳴にも、準MVPを差し上げます。

 

ほんで、世直しニコラスの料理日記としてシリーズ化してほしいと思う今日この頃です。

 

こんな感じでした。

 

 

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・猫ユーリ博士の動画

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