きっぷ売り場のおじいちゃん | Moratoriumer´

Moratoriumer´

今日も波に揺られて海を漂う。

駅のきっぷ売り場で

おじいちゃんはうちを選んだ。

「ちょっとすいません。

お金が足りなくなってしもうて…。」

音楽を聞きながら歩くうちに

そう声を掛けてきた。

たった310円という金額にも関わらず

うちは瞬時におじいちゃんを疑っていた。

「お恥ずかしいんですが…。」

その言葉とそのときの表情を見て

すぐに財布を開いて310円を手渡した。

「310円で行けますか?」

という言葉と笑顔を添えて。

おじいちゃんの感謝の言葉を受けて

うちは自分自身を恥じた。

「310円なら騙されてもいいか」

と思って渡したうちは

なんだかみっともなかったように思う。

なんでおじいちゃんは

うちを選んだんだろう。

見た目しか情報がないなかで

おじいちゃんはうちの何を見たんだろう。