ムーンノート「そんな昔の事件が、最近になってまた動き出したんだよ。奪われた技術が使われた薬が街に出回り……奪われた技術で作られた装備を持った連中が動き回る……」

シロー「…………」

ムーンノート「こんな屈辱ねーよって思ったね……」





ムーンノート「だから、エサを撒いてたんさ。ヒーローのスポンサーをし出したのもそれが理由の一つだしね」

シロー「…………」

ムーンノート「彼らが戦って止めてくれて、偶然でも根っこに繋がる『何か』を見つけ出してくれれば、ってね」





ムーンノート「意図的にセキュリティを緩めておいて、警察にも届け出ず、内部監査もリンさん任せにして深追いをし過ぎずに……」

シロー「……じゃあ、オレらは誘い込まれたってことか?」

ムーンノート「いや。裏口のカギを緩めといただけだから、『操網』のお嬢ちゃんまでは想定外だった。

 ……ま、口頭だけで1から10まで信用されるとは思ってないよ。思ってないけど……」





ムーンノート「これでもヒーロー達には期待してるんだよ……?

 寝つきのいい夢、見れるようにしてくれってさ」





イオナ「ぅ、ぅぅ~……ん」

マシュ「ふあ……あ、あれ? 私、どうし……」





フォウ「フォウッ! フォウッ!」

シロー「ん、あっ!

ムーンノート「やぁ、お目覚め?」





マシュひゃぁぁあああ悪い社長さん!?

イオナ「あ、フォウさん」

ムーンノート……………

シロー「いやマシュ、イオナ、これはちょっと色々あって……」





ムーンノート「……悪役ぶってようって思ってたつもりだったけど、いざこういうリアクションされるとちょっとヘコむね……」

マシュ「え、えぇと先輩、一体全体どういう……」

シロー「なんてーか……ホント、いろいろあってさ……」





リンさんおい、今の放送はどういうことだマスター!?

ムーンノート「おぉっと、リンさんにしては遅かったね」

リンさんガード機の何機かも様子がおかしいというのに、キミはコソコソとどこで何をやっている、マスター!?

ムーンノート「ガード機の様子? いやぁさすがにそれは知らないけど……」





リンさんとりあえず彼らは会議室まで案内するが、それとは別に話があるぞマスター……!

シロー(通信こっちまで聞こえてくる……メッチャ怒ってるな……)

ムーンノート「え~あ~じゃっ! そっちは任せたから後で会議室でねっ!

リンさんちょっ、ま、待て! 話はまだ終わって……!


ブ ツ ッ




アズマ「話途中のようでしたが、大丈夫ですか?」

ムーンノートうぅんむしろナイスタイミング。なに?

アズマ「あちらの隊長の方が停戦に応じるそうです。第2エントランスまで案内してよろしいですね?」

ムーンノート流石先読みが凄いね……うん、お願い






ムーンノート「……さて、会議室の準備しないと」

マシュ「え? えっ……?」





ムーンノート「今話したこと、お仲間の皆さんにも話さないとね」



ドンッ! ドゴォォ!



リンさんくっ……!

 「主任! 火が、もう……限界です!

リンさんまだ逃げ遅れた者達がいる! 部下を……仲間を諦めろと言うのか!?

 「ですが、これ以上は……!





ジャズなんで……なんで、こんな事をした!? どうして……俺達、仲間だったろ……?!

 「仲間か……確かに、そうだったのかもしれないな」




バ キ ン ッ



ナイトローグ「だが、最初から我々は……」

グリス「この力を奪うために潜り込んだ……仲間でも何でもなかったんだよ!

ジャズ「な、に……を……だからって、こんな……!


ゴ ボ ッ ・ ・ ・



グリスこの『力』、思う存分振るってみたかったんだよなぁ!

ジャズっ、やめ……!


ド ガ ア ァ ァ ン ッ !





・・・・・・・・・・・・・







ムーンノート「火災と爆発で工場は半壊……多数の死者も出してしまった」

シロー「その事件、昔に聞いたことあるけど……その裏で、そんな事が……」

ムーンノート「結局、機材の不備と誤作動で片付けられ……別の全然関係ない事件も直後に起きて、新聞ニュースは全部そっちに持ってかれて……

 追求しようにも事故を起こしたのはこっちってことになってるし……見事に、風化させられたよ」





ムーンノート「悔しいけど、完全敗北だと思ったね……」

シロー「…………」

ムーンノート「でも、なにより悔しいと思ったのは……社員に、死者を出してしまった事と……」





ムーンノート「部下ががんばって、心血を注いで創り出した技術を奪われて……それを、悪事に使われたことだよ」

シロー「……!」

ムーンノート「未だに彼は、そのことを気に病んでいて……思い詰めている。上辺だけかもしれないけど、その事は痛いくらい理解しているつもりだけど……ね」





ムーンノート「とりあえず先に、話しといちゃおっか……

 今街に溢れてる……『ギフト』に絡む話、だよね」

シロー「っ、あ、ああ……いや待て、マシュとイオナは!





ムーンノート「あぁ二人なら大丈夫。『破砕』の異能力で砕いたのは二人の『魔力の一部分』。脱力とか虚脱に近い状態で、気を失ってるだけ。もうそのうち起きると思うよ」

シロー「……本当、だろうな?」

ムーンノート「ホントだよ。これできるようになるのに死ぬほど苦労したし、これ以上ウソの上塗りして恥晒したいとは思ってないしね」





ムーンノート「さて……まず結論から言うと、『ギフト』の出所としてここを疑って探りを入れたキミ達は間違ってない。ただ、正解でもない」

シロー「……冗長な言い回しっすね」

ムーンノート「失礼。リンさんにも叱られたことある」





ムーンノート「ここで生まれたのは『フルボトル』の技術。ある場所から発見された検体がもとに偶然生まれた技術でね。モリビトとの技術交換で出したから、キミらなら知ってるかな?」

シロー(クリスが言ってた……確かに、潜入する理由の一つだったな)

ムーンノート「それと並びに使用、運用するための装備体系の研究と開発を行っていた。

 さっき戦ったヘルブロスやローグみたいなね」





ムーンノート「だけど、それらの技術は根こそぎ奪われてしまった……技術盗難と、破壊工作を受けたんだよ」

シロー「っ、

ムーンノート「……あの時の事は、未だに夢に見るよ」



ギリギリギリギリ


ミシミシ・・・!

アイオワHnmm……!!

ケイぐぇぇえええギブギブギブ死ぬ死ぬーっ!!

ユウヤぅっ……ぐ、ぅ……!!





ユウヤおい、ナツメ……ユーカバカがやられた……早く、援護、しろ……!

ナツメむ、無茶言わないで! あなた達を巻き込むわ! アズマさんみたいな狙撃できるわけないじゃない!

ユウヤだから……クソッ……





アイオワGive up?

ケイギブ! ギブアップ!

アイオワNO! まだまだいっちゃうんだからね……!

ケイギャーーーッ! アズマさん助けてーっ!!





リョウアズマさん、このままでは……

アズマ「4対1でアイツら相手にこうもやるとはな……

 (さて、社長のことだ。時間的にはそろそろだと思うが……)」




ガ リ ッ



キ ィ ィ ン ・ ・ ・

リンさんっ、ハウリング……? なんだ、館内放送?」

ムーンノートあ、あ~、聞こえてるかな?

 え~侵入者の諸君に告げる


シグリッドえっ、マスター?!





ムーンノートゲッコー・エンタープライゼス社長として、この場の一時休戦を進言します。社員一同も、戦闘を止めて手を出さないで。

 そちらも可能であれば戦闘行為を止め、速やかに投降していただきたい。こちらには、そちらの要求に全て答える用意があります


タマモ旦那さま、罠です! 罠に決まってますこんなの!

アキヒロしっ……聞くだけ聞いてみる」





ムーンノート今さらかもしれませんが、可能な限り穏便に事を収めたい。返答に期待します

アイン「え……?」

フリーズチャージっ、なんだと……!?




フォス「……聞きましたね、ジャズ。この人にもう手を出しちゃダメです。しゃちょー命令、です」

フリーズチャージくっ……!

アイン「……よく、わからないけど……よかっ、た……」





ムーンノート「はい、一旦これで良しかな。流石は『操網』の異能力者、非常用の館内放送まで掌握されてるとはね」

フォウ「フォウ~……!」

シロー「……あんた、一体……?」

ムーンノート「ん? まぁ最初に言ったからね」





ムーンノート「ボクを倒せたら、全部教えてあげるって。

 こう見えて、口約束は守る方よ? ボク」



オ オ ォ ォ ・ ・ ・



シロー「ぜっ……ぜっ……



ざ ら っ ・ ・ ・



シロー「痛っ、つ……!

 (肉体疲労!? てか負荷か……くそ、ローリスクつっても……!)」






ムーンノート「…………

 ……負けた」



む く っ



ムーンノート「……ヘルブロスも、ローグも……負けた」


シロー(っ、本人のダメージは薄い、か? こっちは動くのもしんどいってのに……!)





ムーンノート「……はっきり言って、自信はあったよ。

 これはそういう装備だって言ったし、それを実現できる装備として仕上げた、仕上げてもらったつもりだったし……」




ざ っ ・ ・ ・



ムーンノート「自信があった分だけ……やっぱ負けると、悔しいなぁ……」

シロー「っ、おい!!



フォウッ!

ゴ ブ シュッ !



ムーンノート痛っ!? いぃだだだだなになになに!?

フォウフォヴォ~!

ムーンノートわぁぁああなにっ!? イヌ!? リス!?

 あ、あ~びっくりした……」





フォウフォウッ! フォウフォウッ!

ムーンノート「ちょっと待っててね、借りるだけ借りるだけ」

シロー「っ、おい! なにを……!





ムーンノート「言ったでしょ、戦う前に」



ゴ ギ ャ ッ !

ガ ガ

シロー「っ、ぐ……!

ガ ガ



ムーンノートっ、ぉ……!?



ゾ ガ ッ !



シロー「おおっ!!



ザンッ ゾッ!



ムーンノートZZ噛屠ジグザグバイトを防、ぐ……少なくとも互角か!?

 ウソだろ!? どんな硬度、いや魔力密度か!? どのみち普通じゃない、どうなってんだ!? ホントに人なの?!





ムーンノート(横目で見てた限りでは、盾のお嬢さんとMSを倒したほぼ直後……

 自分に銃なんか向けてナニする気かと思えばこれだよ……!





ムーンノートぶっちゃけ殺意マンマンだし……!

 なんだ、オレなにやった?!
なにって……)





ムーンノート(、あ……)





ムーンノート「地雷、踏んだか」



ゴ ウ ッ !



シロー「っ……ぉおああっ!!


ガ ド ォ ッ !


< ブラックウイング >





シロー「……これは?」

クリス「見ての通りの拳銃さ」

シロー「普通のじゃないんだろ?」

クリス「無論その通り。キミもわかってきたではないかね」





クリス「それを使用することで、ごく一時的……おおよそ5分程度だろう。キミの言うボルツとやらを使える。シラフで使うよりもローリスクでな」

シロー「っ、マジかよ……」

クリス「ああ、大マジさ。所持しているだけで君から漏れ出る余剰魔力を自動で吸収、蓄積する。

 それを自身に向かって放つことで『黒い魔力』を内部的ではなく外部的に付与、増幅させることで『その状態』のキミを再現することができる」





クリス「一回の使用に掛かる充電時間はおおよそ26時間ほど。戦闘では一度以下の使用が限度と考えておいた方がいい。一言念を押しておくと、あくまでシラフで使うよりもローリスクというだけで、デメリットが無くなったわけではない。

 上手く使いたまえよ」



ぐ ん っ !



シロー「っ、ぉおっ!


ガ ギ ャ ン ッ !



ムーンノートっ、やるねぇ……! だがこっちも……



ガ キ ン ッ


キ ィ ン ッ

ムーンノートヘルブロスの力、使えないとは言っていない!


ギャ ギャッ!

ギンッ バギャッ!

ムーンノート「(っ、なんだあのコート!? 刃が通らない、堅ってぇな……防御もいらないってかよ!


ゾッ! ギャンッ!



ムーンノート「……ならば、通る攻撃をするまで!





ムーンノートZZ噛屠ジグザグバイト >っ!




< ブラックソード >
シロー「ぉぁああっ!!



ガ ギ ャ ッ !

ゾ ガ ッ !





ヒュ ッ

ガ キ ッ

ムーンノート「さぁて、これでサシになるね。

 連携を絶たれて次はどうゆう……」



ウ ッ



ムーンノート「ふ……」



ズ ガ ッ !

ガ ギュ ッ !

ムーンノートうぉわっ!?おいおい、まず様子見か仲間の心配するとこじゃないの!?

 しかもいきなり首狙いって洒落なってないでしょ!
)」



ぐ ぁ っ !



ギ ャ ン ッ !

ザ キャ ッ !

ムーンノートっ、(退きながら払われた。説明したとはいえ、さっきのZZ噛屠ジグザグバイトを見てもう対応を決めた……?!)

 ……リアクション速すぎでしょ……!



ざ り っ ・ ・ ・ !



シロー「すまん、素人扱いはもう無しだ……」





シロー「もう、時間と余裕がねぇからな……!

ムーンノート「(さっきと同一人物とは思えない気迫……)

 コス変わった? ……はぁ、まったく」





ムーンノート「仮面をかぶってんのはどっちなんだかなぁ……

 まぁ、いいや」






ムーンノート加減は不要……こっちも羽根を伸ばしてやれるだけだからな





ムーンノート「あぁ~……

 もっと練習しとけばよかっ


バ キ ン ッ !

ド ォ ォ ッ !




シロー「っ、自爆!? マシュ、イオナのカバー!

マシュは、はい!

シロー(この期に及んでかよ……いや、まさか変身解除して、自壊し……?!)




ォ ォ ッ ・ ・ ・



ムーンノート「残念、自爆じゃないよ」

シロー(、変身解除の衝撃とか、なのか……無事そう、だけど……?)

ムーンノート「まさかヘルブロスを破るとはねぇ。

 ……さて、約束は守りたいとこだけど……」



す っ



ムーンノート「テンション上がってきちゃった。

 もうちょっと、つき合ってもらいたいかな」


シロー「っ、何を……?!




バ キ ン ッ


キ ャ ッ !

マシュ「っ、え……?」

イオナ『…………!?』



ど し ゃ っ



シロー「っ、な、マシュ! イオナ、フォウ!




 「 Z Z 噛屠ジグザグバイト……」


 「クラックフルボトル。異能力の名前は『破砕』……エネルギーの流れの間に強引に割り込み、停止させ、ありとあらゆるものを破砕する力。そう、『ありとあらゆるもの』を、ね」

シロー「っ……!!



クラック・ダウン






ムーンノート変身、仮面ライダーローグ……覚えといた方がいいよ。

 守るモノがある大人ってのは、ちょっぴりズルいもんなのさ」