オスカー・ワイルドで学ぶ英文法 | 翡翠のブログ

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洋書読書会の課題本がオスカー・ワイルドの「The Happy Prince」だったので、手持ちで積読していた「オスカー・ワイルドで学ぶ英文法」で読みました。

 

英文2~3ページくらい×5章と短く、全訳と文法解説に、作品背景やワイルドに関する解説などもあって面白く読めました。まあ、課題本になるまで積読していたのですが・・・。加えて、ピーター・バラカンによる朗読の出版サイトで聴けましたし、さらにワイルドの童話集では私の好きな「ナイチンゲールとバラの花」も収録されていたので、そちらも読み、朗読を聴きました。

 

幸福の王子の物語は、昔、世界名作全集に収録された子ども向けにリライトされたものを読んだことがありました。父がお土産に買って帰ってきてくれる全集が当時、とっても楽しみでした。美しいカラー挿絵も入っていたし。

 

今回、英文で読み返してみて、筋がわかっているおかげ+結構、わかりやすい文章で読みやすかったのですが、思っていたのに比べて、ツバメの描写が多かったのに驚きました。

王子と出会う前の、アシとの恋話も面白かったし、王子に語って聞かせたエジプトや様々な国の描写がとても美しかった。英文でも頭の中で美しい色彩がイメージされました。赤いバラより赤いルビー、青い海より青いサファイア、ライオンのエメラルドの瞳、王墓に眠るミイラの王の首にかけられた緑の軟玉、琥珀の数珠、黒檀のような肌、水晶を崇拝する月の山の王、などなど美しく目にうかびます。

 

王子は結構シニカルなセリフを言いますね。

生前の自分の生活を語るのに「happy幸福だったのだろう、もしPleasure楽しいということが幸福なのだとしたら」とか、「生きている人はgoldがあれば幸せになれると思っているようだから」とか。

 

王子の瞳のサファイアを取り出すことを泣いて嫌がるツバメに対して、「do as I command you 私の言うとおりにするのです」と言って指示に従わせる王子の言葉は、キリストと弟子がイメージされました。Passion-flower トケイソウが十字架に咲く花と注釈にありましたし。

 

また見栄を張る議員、子どもが夢見ることを悪いことだと考える数学教師、冬にツバメがいることを地元紙に手紙を書いた鳥類学者に、その手紙を引用しながら内容はわからないことばかりだったとの記述とか、金箔等がはがれた王子像を見て、役にたたないといった美術教師とか。こういった先生と言われる権威主義者をワイルドは嫌っていたのか、ここも昔読んだ子供向け版では削られていたような。

 

王子が両目を失ったとき、ツバメがもうエジプトに行くとは言わず、「I will stay with you always」と言った場面、そして金箔を運び続け、遂に寒さでツバメが死ぬ場面は、ぐっときて泣けます。英語でも。ちょっと上から目線で鈍い(?)王子も、そのツバメの死を知って鉛の心臓が割れてしまいます。切ない哀れな、でもまた会える結末でした。

 

ちなみに最後の鉛の心臓とツバメを天界に天使が連れてくる場面は、私にはいらない、蛇足に思われたのですが、このあたりは読書会でも、無くてよい、必須、と色々な意見が出て楽しかったです。