ル・グウィン ゲド戦記 影との戦い | 翡翠のブログ

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読書会の課題に取り上げられたことで、久しぶりにル・グウィンのゲド戦記シリーズ、「影との戦い」を読みました。

 

自分の読書傾向自己紹介で、SFとファンタジーが好き、ゲド戦記好きとしておきながら、存外、読み返してなかったなあと。初めて読んだのって小学校だったか?中学校だったか?手元にハードカバーのシリーズは持っていますが、奥付をみたら発行日はそこまで古くはなかったので、おそらく長男坊が生まれてから、読ませるために買いそろえたような。今回、外出先でも読みたかったので、岩波少年文庫版をkindleで買い直しました。

 

ル・グウィンは、ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞している闇の左手 The Left Hand of Darkness (1969年) などSF作品を多く残していて、それらも読んではいるのですが、最初に出会ったのがゲドなので、当初はファンタジー作家として認識していました。

子どものころは、SFや冒険ものが好きだったと思うので、もしかして、ゲドがファンタジーも好きになるきっかけだったのかもしれない。こういった設定が作りこまれているものは、ずっと好きです。「デューン 砂の惑星」とか。後、地図が付いているのも、私の好きポイントです。

 

今回、読み返して感じたことは、

・魔法の意味付けが非常にしっかりしているということ。ル・グウィンが魔法というものの在りようを根拠をもってしっかり構築していること。ファンタジーは魔法が使えるのが当たり前のような部分がありますが、安易な行使は世界の均衡を崩すとされている点は、なんとなく、科学の在りようにも、つなげているようにも感じられる。また、言葉の在りよう、重要性にも、ル・グウィンの考え、想いが感じられるように思いました。

 

・ゲドと影との戦いの意味は、子どものころに読んだ時以上に、大人になって読むと、また色々考えさせられるものがあります。自分自身の負の部分との戦いと、その受け入れというのは、言うは易し、でも実際には、なかなかできることではない。

光と影、正義と悪の二者対立ではない点にも、ル・グウィンの意見、考えが反映されているように思えました。光と影、正と悪の対立というのもファンタジーでは王道のテーマですが、それを単純な対立とせず、両者が包括し合う、受け入れ合う一つのものとなる、全きものとなるという点が、今では、よくあるテーマかもしれませんが、当時としては新しかったように思いますし、実際の世界、社会では、いまだに実現されてはいないことのようにも思います。


・魔法学園生活の描写は、ハリーポッターに比べて少ない。特に教授の描写は、そこまで多くはないですが、学園長や教授、師匠のオジオンの描写は、心に残るものがあります。教職者、魔法使いの在り方も、ル・グウィンの考えるあるべき姿が描かれているのかもしれません。力を得るほど、選べること、やれることが狭まり、やりたいことより、やらなくてはいけないことをやるという魔法使い、教師の在り方は、なんてストイックで厳しく高潔か。オジオンの元にハイタカが戻り、助言を受け、影に追われるから追いかけるに、物語が変わるところは、とても印象的でした。

・今回、読んで好きなところ、心惹かれたところは、カラスノエンドウとのやりとりでした。その温かい思いやりと友情には、ぐっとくるものがありました。
一方で、読書会の感想で、「子どものころは、ヒスイって嫌な奴と思って読んだが、今読むと、そこまで悪いか?実際、いそうなタイプ」という感想があって、なるほど、確かにそうだなと。ところで、実は、子どものころから翡翠という石が好きだったので、好きな石の名前で、このキャラだったのが嫌だったという記憶があります。

・キャラクターの描き方でいうと、女性の扱いが、まだまだ添え物っぽい気はしました。ノコギリソウは、さわやかでかわいいですが。

この点は、シリーズが進むと変わるので、先のシリーズも再読しようと思っています。