名フィル 第517回定期演奏会〈死と継承〉 | 翡翠のブログ

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今日は、名フィルの定期演奏会を聴きに行きました。

名古屋フィルハーモニー交響楽団 第517回定期演奏会〈死と継承〉

出演
川瀬賢太郎(指揮/名フィル音楽監督)
コリヤ・ブラッハー(ヴァイオリン)*
 ※都合によりアリーナ・ポゴストキーナから変更
宮田まゆみ(笙)**

 

プログラム
ベルク:ヴァイオリン協奏曲『ある天使の想い出に』*

細川俊夫:光に満ちた息のように**
ワーグナー:歌劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲
R.シュトラウス:交響詩『死と浄化(変容)』 作品24

 

ソリストアンコール

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番 BWV1002 Double
 

今回は定演の演奏会に加えて、リハーサルの見学と事前レクチャーの付いたツアーイベントに申し込みました。レクチャーの講師の先生、小室敬幸さんのレクチャーには、これまでに何度か参加したことがあり、毎回とても面白いので、これはぜひ聞きたいと思って。

 

名フィルの定期会員になっているので公開リハーサルを観ることは可能なのですが、これまでまだ観に行ったことはありません。リハーサル自体は、大阪フィルの岐阜定期公演で何度か観たことがあります。大阪フィルはのリハは岐阜県の小中高校生と保護者に無料公開なので、何度か自分が観たいため子どもをダシに申し込み観に行きました。今回観たのはプログラムの後半部分、「光に満ちた息のように」「『ローエングリン』第1幕への前奏曲」「交響詩『死と浄化(変容)』 」の部分。小室さんから、ゲネプロのやり方は楽団と指揮者によって様々とお聞きしました。「光に満ちた」から「ローエングリン」は、あまりやり直し等なく、照明のチェックが入ったくらい。「死と浄化」には何か所か川瀬さんから指定とチェックが入り、X(Twitter)で公開されているゲネプロ、いつもこういう感じなんだなと面白かったです。

 

その後、リハーサル室に移動してレクチャー。こちら撮影も可でした。

 

いつものことながら小室さんのレクチャーは、スライドもぎっしり、内容もぎっしり濃く、音源画像もあり、すごく面白かったです。何よりも今回の名フィルのテーマ「死と継承」について、なるほど!と思えて、レクチャー後の演奏会を聴くとき、いつも以上に一層楽しめました。

オーケストラのプログラムって、どうやって組み立てているんだろうといつも思っていたので、今回のプログラムで選ばれている曲の作者の関係性がわかったのもありがたかったですし、

 

紹介されていたベルクのオペラ「ルル」はぜひ観てみたい。

 

何より、今回のレクチャー、なんと実演付きでした。ヴァイオリン:大澤愛衣子、ピアノ:萩賢輔さんという方々が、小室さんのリクエストによって実際にベルクのヴァイオリン協奏曲『ある天使の想い出に』を演奏してくださるという企画でした。この曲、けっこう難解と私には思えたのですが、ヴァイオリンとピアノ(実際の演奏会ではオーケストラ部分)とのかけあい、シンメトリーになっている部分、不倫相手のハンナ・フックスのイニシャルであるHとF、音階のシとファが埋め込まれている部分(笑)、ケルンテン民謡が埋め込まれている部分など、少しずつ解説付きで演奏してくださり、ここを演奏会で聴こうというポイントがつかめました。面白かった!

 

レクチャー後は開演まで、同じ愛知県芸術劇場内のカレフェストラン、ウルフギャング・パックでお茶しつつ、レクチャーでいただいた資料を読み返して予習しました。窓からは栄の夜景。

 

開場。

 

ベルク:ヴァイオリン協奏曲『ある天使の想い出に』のソロを演奏されたコリヤ・ブラッハーさんは、ベルリン・フィル第一コンサートマスターでもあった方で、そのヴァイオリンの音色は、とても力強いながらも美しくロマンチックで哀愁を帯びた音の両方が感じられ素敵でした。いつもであれば、「すごかった、美しかった、超絶技巧だった」と音だけの感想で終わるのですが、今回は事前レクチャーのおかげで、曲についても、「あ、あの解説にあった音、メロディ」「ここが無垢さを、ここが病との闘いと苦しみか」など、たどりながら聴けて、いつも以上に面白かった。とはいえ、事前の予習では頭に入り切っていない部分も多く、ついていけないところも、まだまだ多かったです。

 

後半は、プログラムの組み立てとして一層面白かった。「光に満ちた息のように」で笙を吹く、宮田まゆみさんの衣装は白いドレスで、暗く照明を落とした場内にライトアップされて、神への祈りのようでした。レクチャーで、笙という楽器が吹いても吸っても音が出る、光のイメージを持つ楽器であることから螺旋のイメージ、輪廻転生のイメージで曲が作られているとお聞きして、一層そう感じたのかもしれません。

 

さらに笙の終音からつながるように、「歌劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲」の音が始まり、一層、会場から退場する宮田さんが巫女のように、またはローエングリンの白鳥のように感じられました。ローエングリンは最後はエルザが名を聴かずにいられず、そのため夫のローエングリンを失う悲劇ではあるのですが、この前奏曲は希望に満ちていて、「死」よりも「再生」を感じられるように思います。

 

そしてラストは、「交響詩『死と浄化(変容)』 」。この曲もまた「死」よりも「希望」が感じられるように思いました。シュトラウスは、最近、英雄の生涯を続けて聴き、演奏として素晴らしかったけれど、曲としてはこちらの方が好みに思います。

来日の大物の演奏会も聴きごたえがあって素晴らしいですが、名フィルの今回の定演のようにプログラムの組み合わせ、演出を楽しめるのも素晴らしい、今回のプログラムには来年度の名フィルの定演のプログラムが公開されていましたが、来年も楽しみです。(名フィルの定演、スタンディング後の撮影が可になりました)

 

終演後は友人らと居酒屋で、今日の感想やら、今後聴きに行く演奏会やらの話になり、これまたとても楽しかったです。