源氏物語 読書会 31真木柱~33藤裏葉 | 翡翠のブログ

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今週も猫町倶楽部の猫町オンライン、源氏物語読書会に参加しました。参加にあたっての読書メモと前回読書時の振り返り。

 

31帖 真木柱

玉鬘の結婚譚編の結末。昔、初めて源氏物語を読んだ時には驚きました。まさかの髭黒右大将。帖の始まりには結婚済みで、何か読み飛ばした?と慌てて本を読み返したのは私だけではないはず。犯罪だよね、これ。全ては手引きした女房次第、怖い。

尚侍として出仕した玉鬘を心配し髭黒は付きっ切り。玉鬘は疎ましく、蛍兵部卿の宮や源氏を懐かしく惜しみます。

髭黒の北の方は玉鬘の元に出かけようとする髭黒に火取の灰を浴びせ、ますます夫婦仲は破城します。北の方は子どもを連れ父親の元に去り、源氏と紫の上は恨まれます。当時は多くの女性の元に通い婚する文化で、上手に焼きもちを焼くのが妻の在り方だったのかもしれませんが、北の方に同情せずにはいられません。髭黒の娘は馴染んだ家との別れを惜しみ、真木柱のひび割れに歌を残すのでした。髭黒の大将の評価が私の中でダダ下がりの帖ですが、読書会では髭黒、人間味あるという感想もありました。

 

32帖 梅枝

明石の姫君の春宮入内を控え、裳着の準備。光源氏は蛍兵部卿の宮を判者に女君らと薫物合を催します。夜には管絃が催され、蛍宮の琵琶、光源氏の筝、柏木の和琴、夕霧の横笛で合奏され、弁少将が「梅が枝」を謡います。なんて雅やかな情景。絵になる帖ですね。以前に読んだ時にも、薫物合、聞香を体験してみたく思ったのですが、まだ機会がありません。

内大臣(頭中将)は雲居の雁と夕霧のことで悩みます。

 

33帖 藤裏葉

夕霧と雲居の雁が結婚を許されます。源氏物語では思ったより登場人物が恋愛の結果、幸せになっていないので、幼馴染の恋の実るこの帖は好きです。

結婚を許す気になっている内大臣は、大宮の命日のお参りの帰りに夕霧に和解を希望していることをほのめかします。
4月の藤の花の盛りの頃、内大臣は管絃の遊びを催し、柏木を使者に寄こし夕霧を招きます。内大臣は夕霧に対面し、酔ったふりで夕霧に酒を勧め、「藤の裏葉の」「春日さす藤の裏葉のうらとけて君し思はば我も頼まむ (誠意を示してくれるなら、心を開いてあてにしよう)と口ずさみます。それを受けて頭中将(柏木)が藤の花を夕霧の盃に添えます。

内大臣
紫にかごとはかけむ藤の花まつよりすぎてうれたけれども
夕霧
いくかへり露けき春をすぐしきて花のひもとくをりにあふらん

 

ハンサムな内大臣と夕霧と柏木、月下の酒宴に雅楽に藤の花、すごく絵になるシーンです。お堅いというイメージの夕霧ですが、さすが源氏の息子だけあります。

 

雲居の雁の元を夕霧が訪れる際の催馬楽については、前回の源氏物語読書会でも、とても盛り上がりました。

テキストの注釈によれば、弁少将が夕霧に謡う催馬楽の「葦垣」は「男が女を垣根を越えて連れ出そうとするけれど、つげ口するものがあって失敗する」という歌なのですが、それに対して夕霧が雲居の雁に「河口の」と謡い返してやりたかったと言う。その歌もまた催馬楽の「河口の関守が番をしていたけれど、私は穴だらけの垣根の外に出て男と共寝をしてしまったよ」という女の歌なので、夕霧は「男(夕霧)だけが積極的なのではなくて、女(雲居の雁)の方もだったよね」と、雲居の雁に軽口を言っているのだそうで、二人の幸せが読めます。

今回の課題本の範囲には、玉鬘と髭黒、夕霧と雲居の雁の二組の結婚が描かれているのですが、その雰囲気はとても違うところがリアリティあります。

 

読書会では、ここで、夕霧と雲居の雁は、引き離される前には関係があったのか?という疑問が出て議論になりました(笑)。引き離された当時は夕霧12歳と雲居の雁14歳で、7年越しの今回の結婚らしいので、さすがに別れ別れになる前には関係はなかったのではとの意見もあり、それにしては夕霧の軽口の催馬楽が意味深すぎないかとの意見もあり。ここで、源氏物語では結婚前の女性は「姫君」、結婚後は「女君」と書き分けられているから、雲居の雁は結婚後に「女君」と呼ばれているので、関係はなかったとの説を紹介くださって、なるほど、と思ったのでした。

 

この帖では、他にもテキストの注釈によって、そうなのか!と気づく部分があります。

一つは、紫の上が加茂の御阿礼に明石の姫君の入内のお礼に参詣する際に、源氏が他の女君達を誘うけれど誰も同行しないことについて、「紫の上が正妻格扱いではあっても決して正妻ではないことを現している、つまり女君達に「なめられている」」ことを表しているのだそうです。これは次帖に続く重要な伏線ですよね。

 もう一つ、明石の姫の入内にあたり、紫の上は、明石の君が後見役としてつくことを源氏に進言し、明石の君と初めて対面します。
このとき、紫の上が明石の君に抱いた気持ちは「めざましう」。この「めざまし」はこれまでにも紫の上の明石の君への気持ちを現す時に使われていて、「目が覚めるほど意外である」を意味し、「身分の劣っている相手がそれを越えてくるときに」「不愉快だ」という意味と「身分のわりに立派」という意味を持つのだそう。つまり紫の上は明石の君を評価し源氏が愛情の抱くのをもっともと思いながらも、低い身分のものがと思い、さらに嫉妬を抱いているのだそう。
一方で明石の君の方は紫の上を「めでたし」、立派で源氏の正妻として並ぶものなきさまと思い、嫉妬することはないのだそう。明石の君はもう源氏への愛による嫉妬の苦しみからは離れて、ただ姫の母として後宮を切り盛りすることに心を傾けている様子。明石の君が姫君の後見人として、源氏を巡る女の愛憎や嫉妬からイチ抜けした後に、紫の上は源氏の愛だけを頼りに残っている、これらもまた、次帖で紫の上に起こる事件、その結果の紫の上の苦しにつながる、紫の上の立場を描く重要な伏線と思います。

 

藤裏場のラストは、光源氏が准太政天皇に上り詰め、朱雀院と往年の紅葉賀を思い出し、めでたしめでたしというムードだったのですが、次帖から大きく波乱の源氏に陰りある話が始まります。

読書会では、第一部終了ということで、こんなものも配信していただけました。しかし次回の範囲は若菜、長い!です。