さっきFが帰って行った。まだぼーっとしている。

 メールでデートの約束をしていた金曜、夕方にFから「これから出るとこなんですけど」と電話。どうする、どっか食べに行く?と聞くと。
「こっちに来てからろくなもの食べてないんですよ……野菜不足って感じで。野菜とか魚とか食べたいなぁ。食べたくないのはトンカツとか、ハンバーグとか、ステーキとか……」
「アハハ、私もそんなの食べたくないや。ヘルシー系のバー、見つけたんだけど。アボカドのサラダとかあるわよ」
「あ、それは素晴らしい」
引っ越した部屋に、コンロが一口しかないので自炊できないと前から愚痴っていた。仕事場や部屋の近所には、おしゃれなイタリアンやフレンチは色々あるのに、手頃で軽く食べられる美味しい店がない、とも。部屋に呼んで手料理でもごちそうしたいのは山々だったが、部屋に二人きりで酒なんか入ったら、絶対寝てしまう。Fとの関係がどんなものになるのか分からない今は、そのまま肉体関係だけ持ってしまうのは怖い。若い頃は、好きなオトコをものにしたいという征服欲みたいなものもあったが、今は逆で、好きなオトコほど、勿体なくて抱けない、っていう気分もある。

待ち合わせ場所のビルのテラス席で、Fはビールを飲んで待っていた。それを飲み終わるまで向かい合って座り、ヘルシー系のバーに移動。時間が早かったせいか、まだ客が他にいない。
 小さな用水越しに歩道を見上げる半地下の窓際席に並んで座る。アボカドのサラダと温野菜サラダ、サーモンクリームのフェットチーネに、ヴーヴクリコをフルボトルでオーダー。
 注がれたシャンパンのグラスを持ち上げて、何か、おめでたいことでもあったみたいねと言うと、Fはそう?僕、好きでけっこう普段でも飲むけど、と言う。私もシャンパンは好き。シャンパンの話で会話が続いた。
 今日はFの話を聞くために、こちらからはあまり話をしないと、密かに決めていた。新しい仕事のこと、部屋の愚痴、料理のこと、友人のことなど、無口な印象のFが、次々に話してくれる。
 会話の流れで、ここのところ急に体重が落ちて、高三の時と同じ体重になってしまったことを話すと、Fは心配そうな顔をした。
「どうして?」
「フフッ、恋わずらい?」
「無理してでも、食べた方がいいよ」
「うん……。もうね、自分の身体なんてしげしげ見なかったけど、気付いたらあばらが全部数えられるの。外側も内側も。だから好きな人の前で服脱ぐ勇気なんか、もう無いわ。食べるのもそうだけど、筋トレしなきゃと思ってね、腕立てとか始めちゃった」
 彼女がピラテスをやっていると言い、ピラテスって何と聞いてきた。よく分かんないと答えると、でも、いかにも負け犬でしょ、と言ってFは笑った。
「僕もかなり小食だけど、ユウさん、ほんと、食べないよね」
「普段はけっこう、ちゃんと食べれるのよ? でも……これ言うと笑われちゃうけど、Fくんと会うと胸がいっぱいになっちゃって、あんま食べらんないの」
「それは……笑うしかないね」
 照れていたのか?いまいち分からない反応だったが、まぁいい。
 もっぱら話を聞くつもりでいたが、結局、だんなとの関係のことなど、話してしまった。
 クリコを空けたところで店を出て、別のバーに移動。
 私はブラッディーメアリー、Fはマッカランの12年をロックで。何の話をしたのか、もうあまり覚えてない。
 どちらの店でだったか忘れたが、ルールドの話をした。観光化されたお寺の話から、私がフランスでルールドに行った時の話になった。するとFは、共通の友人であり先輩であるDさんの名前を出して、こう言った。
「Dさんとこないだ会った時、話が出ましたよ。ユウさんがルルドの少年の話をしたこと」
「わぁ……覚えててくれたんだ……すごい昔に話したの、私も覚えてるわ。ユイスマンスの本に書いてあった話なの」
 奇跡の癒しで知られるルルドで、重病の少年が一度は奇跡的な回復を見せ、活き活きと輝いて喜びに溢れたのだが、数日後、恩寵は取り上げられ、元通りの重病に戻ってしまった、という話。どうやってその残酷さを納得すればいいのか、と、私はDさんに聞いたことがあった。簡単に答えが出るものではない。

 二軒目を出た時は、もう終電の時間だった。
「あ、急がなきゃ終電行っちゃうわよ?」
「ヤダ、めんどくさい」
「えー……」
 私の家は、歩いて帰れる距離だった。そして私は意志が弱い。
「んー、じゃあ、誘惑しないなら泊めてあげてもいいけど」
「それは自信ない」
「もう……」
 結局、コンビニでビールを買って、2人で部屋に戻った。
 NIRVANAのCDをかけながらビールを飲み、音楽の話をした。涅槃とはほど遠いバンドだったよね、と言って2人で笑った。
 それから、後ろから抱きしめられ、キスをした。Fが私を床に押し倒した。
「誘惑しないって言ったのに」
「言ってない」
 彼が正しかった。
「あばら数えちゃうからダメよ」
「数えない。電気消せばいい?」
「……そうね……電気は消して」
 Fが電気を消し、私は蝋燭に火を灯した。
 唇を重ね、たっぷりとキスをした。Fの唇が私の胸を吸った。
「何かすごいいい匂いがする」
「ああ、オレンジよ。エッセンシャルオイルつけてるの」
「いい匂い……」
 私は起きあがり、Fを下にしてシャツのボタンを外した。唇と頬と、首筋にキスをして、耳たぶを含んで、噛んだ。Fが微かに声を上げた。私はFの胸元に唇を這わせ、たくさんのキスを浴びせた。それから乳首にキスをした。Fは感じて声を上げる。左右の乳首を順に舌先でいじる。そして手を、ジーンズの中に入れると、Fは自分から脱いだ。
 私はFの股間に頭を持っていき、ペニスの先にキスをした。袋を手で緩く揉み、口に含んだ。片方ずつ、順番に。ペニスの裏側を舐めあげ、先っぽを口に含んで舌をぐるぐる回す。それから強く吸いながら、根本まで。始めはゆっくり、次第に激しく、頭を動かした。Fは身悶えしていた。
 私が離れると、Fは再び上になって、私の胸を愛撫した。
「あばら、数えちゃダメ……」
「数えないよ」
 Fは私の服をめくりあげたまま、脱がせなかった。寒かったからだろうか。先月ホテルの部屋で抱き合ったときもそうだった。
 パンティとストッキングを、片足だけ脱がされ、Fが私の股間に顔を持っていこうとしたので、ダメ、恥ずかしい、そんなことしないでと拒んだ。お風呂にも入らずにされるのは、抵抗がある。Fはやめてくれた。
 あばらを数えるなと言ったせいだろうか、後ろから入れられた。スカートは履いたまま、下着は片足にまとわりついたままだった。
「痛い?」
「ううん。でもゆっくりして……とても久しぶりなの」
 Fは私に覆い被さるように、耳元に顔を近づけた。
「いつ以来?」
「たぶん……あの夏以来かな」
「そっか……」
 Fは何度か、これくらい大丈夫?と聞きながら、次第に動きを激しくしていった。高まってきた時、一度、ダメ、やめて、と言った。
「痛かった?」
「よくなってきたけど……何か怖いの、壊れちゃいそう」
 Fはまたゆっくり始めてくれた。私はごめんネと言い、良くなってきたと言った。
「気持ちいい?」
「うん……すごくいい」
 動きが激しくなってきた。私は再び、怖い、と言った。
「もう少しだから」
 私は床に顔を埋め、激しく喘いだ。慣れない快楽が、怖かった。
 Fが果てたのが分かった。私たちは抱き合い、キスをした。

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 夫のWのことを書くと、ただの愚痴になりそうで気が重い。だからなるべく、彼への敬意を忘れずに書くことにしたい。

 Wとは大恋愛だった。と言っても、付き合う相手とはいつも大恋愛になるが、終わってしまえば大したことなかったと思うような、薄情なところが私にはある。
 前の彼氏とまだ付き合っていた頃に出会い、一目で互いに魅かれ合って、間もなく私は前の彼氏と別れ、Wと付き合い始めた。
 前の彼氏とは3年付き合ったが、気持ちは冷め始めていた。クリエイティヴな才能のあるオトコだったが、頭は悪かった。別れ話を切り出した時は泣かれた。確か私はこう言ったのだ。
「また、友達に戻れるよね?」
「……今は、友達じゃないの?」
「今は……恋人だから」
 彼は私がWに魅かれていることは気付いていた。たぶん、Wの存在がなければ、彼との関係はもう少しズルズルと続いていただろう。だが、私はWの気持ちを確かめる前に、彼との関係にけじめをつけたかった。
「ユウと……恋人、じゃなくなるっていうのは……考えられないくらい辛いけど……」
 彼は泣き出したが、それでも私の態度はきっぱりしていた。他にどうすることも出来ず、彼は別れを受け入れた。
「でも、友達、だからね」
 と彼は言った。だが彼にはダメージが大きかったらしく、その後顔を合わせたり話したりした時、友達としての振る舞いを演じることすら出来ず、私に愛想を尽かされることになった。新しい彼女が出来たという話を聞いて、私は彼のことを気に掛けるのをやめ、それっきりになった。

 私はあの頃どうしても、自分より頭のいい男が欲しかった。Wは頭が良い。たぶん、私の人生の中で、私を好きになってくれるオトコの中で、Wより頭のいい男とは出会えないだろうと思った。知的な会話が心地よかった。それにWは、根が素直で真っすぐなので、気持ちをとてもストレートに伝えてくれた。私とは正反対の、健やかに育った男なのだ。……そう私も、健やかでないオトコ達のオンナの好みに、文句は言えない。私もまた健やかなオトコを選んだのだから。
 Wとは人目も憚らず肩を組み、飲めば人前でも平気でキスをするようなLOVE☆LOVEぶりだった。詩を贈り合うようなこっ恥ずかしいこともした。私は実家を出て、Wが下宿している近くにアパートを借りた。すぐに入り浸りになり、実質丸2年くらいは同棲状態だった。一緒に暮らすための細々した買い物をするのさえ楽しかった。ご飯を一緒に作り、本を読み、音楽を聞き、ときどき友達を呼んでは鍋をやったりして、本当に楽しい季節だった。そして私たちは付き合って3年で結婚した。

 結婚を決めてすぐの頃、私は妊娠に気付いた。避妊はしていたが、コンドームだって完璧ではないのだ。子供を産む気がなかったので、迷わず堕胎した。産婦人科なんて二度と行きたくないと思った。ベッドで足を広げさせられ、カーテンで仕切られた向こうで男の医者が局部を触診する。手術台ではさらに大きく足を広げ、固定される。麻酔を打たれて意識が無くなるまで、私は数を十一まで数えた……。

 堕胎後から、Wとの肉体関係は回数が減っていった気がする。彼の生活ペースがもともと超夜型で、寝るのが4時5時というのでは、それからエッチしようという気にならない、というのもあった。でもそれ以前は、なんやかやとセックスはしていたのだ。結婚を前にして、堕胎という事件も重なり、恋愛としては醒め始めていたのかもしれない。
 実際、結婚後には2、3回しかSEXはしていないと思う。高学歴夫婦にはありがちなこととはいえ、もうずっと、セックスレスなのだ。最初の頃は、それでも、手をつないだり抱き合ったりして一緒に寝ていたし、それである程度満足していた。私の方が不満を言ったこともある。だがそれでも改善はされなかった。SEXだけが2人の関係を深めるわけではない、私を嫌いになったわけでも、どうでも良くなったわけでもない、ただ……彼にとってはSEXは面倒くさい、ということらしい。
 そうしてあの夏、私は他のオトコ達に抱かれ、自分が女であることを確かめてある程度満足して、それからまたセックスレスな生活に戻っていた。無ければ無いで、別に構わないというのは、本当なのだ。

 結婚生活は互いの緊張をたるませ、日常に呑み込んでいく。
 Wはあまりにもマイペースで、こちらの都合などお構いなしに明け方まで仕事をする。
 Wはいつの間にか、些細なコミュニケーションに手を抜くようになっていった。一日の行動予定を伝えてくれない、こちらから訊ねても一問一答式みたいで、直接聞いた質問にしか答えず、周辺情報を知るためにはさらに質問を重ねなければならない。まるで一言でも喋ると損をするとでも思っているかのようだ。
 家の細々したこと……確定申告さえ面倒くさがってやりたがらない。出来れば一生、PCの前で本を広げて座ったまま一歩も動きたくないという男に、Wはなってしまった。休日にどこかに遊びに行こうとか、増えすぎた本を片付けるために棚を買いに行こうとか、そういう一切が彼にとっては「面倒くさい」のだ。
 せめて、誕生日にタイミングを外さずプレゼントくらいして欲しい。それすらも彼には面倒なのか。
 もともと私は、掃除や洗濯が嫌いだったわけではない。一人暮らしを始めた当初は、ちょっとした気分転換にもなる家事が楽しかった。だが、Wが全身から発する「家事に協力するのは面倒くさい」というオーラは、「家事は時間を割くに値しない」「家事なんて下らない」と私に刷り込んでしまった。私はその「下らないこと」に時間を割かれ、自分の生活を細切れにされていった。これが何よりの不幸だったと思う。

 世の夫たちが「今日は妻の機嫌がいい、機嫌が悪い」と言うのをよく耳にする。だが、妻たちの多くは、夫たちが思っている以上に、夫の欠点や、もしかしたら存在そのものに、うんざりしているのだと思う。今日は夫の存在に我慢が出来る、夫の長所や優しさをなんとか思い出せる……。そして今日は、夫の存在が我慢ならない、こんな男に自分の人生を縛られていることに言いようのないいらだちを感じる……。それを「機嫌がいい、悪い」などという言葉で片付けてしまっていいものか。

 Wとは、習慣で手を繋ぐことくらいはある。指は絡めないけれど。彼はFほど指が細くない上に、ギュウギュウ力を入れて握るので痛くて仕方ないから、指を絡めるのは私が拒む。確か戦前戦中の特高警察の拷問で、指の間に鉛筆を挟んで絞めるというのがあったと思うが、それと同じことだ。
 何かの拍子に……例えば「良くできたご褒美」に、唇を触れるだけのキスをすることも、無いわけではない。でも、ディープキスなんてもう出来ない。考えられない。
 手を繋いだり軽いキスをするくらい、男友達となら誰にだってすることだ。Wは私にとってそういう存在になっている。
 恋愛関係は随分前に終わってしまった。残っているのは、知性と、思想のような理想のような何かと、ずっと使ってる煙草ケースに対するのと同じような愛着ぐらいだ。

 この前Fと2人で会った時、こんな会話をした。
「だってFくん、彼女いるじゃない」
「そっちだって結婚してるくせにー」
「えーっ、でも結婚したのは随分昔の話だからねぇ」
 Fは本当にびっくりした顔で叫んだ。
「そんなこと言う人、初めて聞いたよー! 別れちゃったとかなら分かるけど、そうじゃなくて続いてるのに、随分昔の話だなんて……そんなこと言う人初めてだよー!」
 でも実際、私にとっては随分昔の話なのだ。恋愛関係の問題としては。
 恋愛としてなら、Fは彼女とSEXもキスもする恋愛関係真っ最中なのだから、二股を掛けているのは、彼の方なのだ。そりゃ、私は今でもBのことが好きだし、会えば寝るだろう。でも私はBに会いに行こうとは思っていないし、毎日Bのことを考えるわけでもない。毎日考えているのはFのことばかり。この間だって、久しぶりに会った男友達に、結構熱心に口説かれたけど、ちゃんと断った。Fのことがなければ、たぶんだらしなくホテルについて行ってたと思う。
 だから、つまり……二股かけているのはFのほうだ、ってこと。でも、Fは納得しそうもない。結婚というものに不思議な魔力でも信じているのだろうか。
 とはいえ……やはり、もし結婚していなかったら、Wとはとっくに別れていたかもしれない。もし続いていたとしても、Fに恋してしまった時に、別れ時だなと踏ん切りをつけただろう、とは思う。結婚を解消してこれから先の人生を一人で建て直す決心をするのには、膨大なエネルギーが必要だ。私にそこまでの気力はない……だからFは納得しないのだろう。
 あれ? でもそれって、せいぜいお互い様、ってくらいの状況じゃないか? 私も何だか納得できなくなってきたなぁ。

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日曜の夜に書いたメールで、月曜もだんながいなくて暇だとFに知らせてあった。
Fから連絡が来るかと期待していたが、夜になってメールの返事が来ただけ。賭に負けた気分。
一人で飲んだくれて、珍しくチャットなんぞで気を紛らしてしまった。

……昨日は、だんなが出て行ってから、家の中を片付け、掃除して、Fを呼べるようにしていたんだ。我ながら健気というか、はしゃぎすぎというか。そんなことしてるから、当てが外れて飲んだくれる羽目になる。

金曜か土曜には会えると思う。でも、メールの返事はしばらく書かないことにしよう。

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 Fと、だんなと、私の3人でとある大学の学祭に行った。Fは出がけにいろいろトラブルがあって合流が遅れたが、3人で学祭を見たり模擬店で買い食いしたり、近くの喫茶店に入って話したり、夕方まで3時間ほど一緒に過ごす。
 だんなをせっついて彼女の話など聞き出そうとするが、なかなか口が硬い。やはり酒が入らないとこの手の話は盛り上げにくい。残念。
 帰りに、昨日買った料理本と、オーガニック食品を少々、それと、Fの論文に対して私が書いたものを、「荷物になって悪いけど、これ」と言ってFに渡した。
「わ、こんなに色々、ありがとうございます」と、Fは本当に嬉しそうに笑った。あの笑顔だけで、今日は満足。

 3人でいると、距離感をつかむのが難しい。以前のように、何もなかったみたいに振る舞うのが、とても難しい。Fと一度寝た後だって、全然平気で、普通に距離感をつかめてたのに。4人がけのテーブルに着く時、私はだんなの隣に座るべきであり、そうした。でもホントはFの隣に行きたい。そんなことが一々気になる。Fと向かい合いになるのも、それはそれでいいのだけど。

 帰ってきてから、Fにまたメールを書いてしまった。
 今週はだんながいない日や、遅い日が多いから、話し相手になってくれたら嬉しい、と。
 もうずっと、私からメールすることが続いている。やめられない。
 それでも気持ちはずいぶんと落ち着いた。東京の彼女とだって、先輩夫婦ですって顔して、会える気持ちになった。
 Fとの関係、深く考えるのはやめなきゃいけない。なるようになる。意識し過ぎちゃいけない。こちらから距離を詰めるようなことは、しない方がいい。……でもそれって、かなりの我慢大会だわ。

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今朝方、Fから電話があった。
それなのに私は電話を取りそこねて、だんなが受けてしまった。くやしい。
ひょんなことから日曜に、だんながとある大学の学園祭に行くことになり、Fも一緒にどうかとメールで誘っていた、その返事の電話だった。
FはOKと返事をしてきた。だんなとのやりとりを聞いていると、Fはこちらの今日の予定も聞いてきたようだ。だんなは家で仕事があると答え、私が暇なことも伝えず、電話を替わってもくれなかった。Fと一緒に引っ越しの買い物でもしたかったのに……。

買いたい物があったので、結局一人で買い物に出た。町中の人混みで、目がFを探していた。引っ越した後の細々した買い物なら……と思うと、Fがあの店かこの店に来ているのではないかなんて思って、キョロキョロしてしまう。ここで会えたら運命なんだけどな……。

でも、明日は会えるんだし、このくらいじれったい方がいいのかもしれない。
だんなと一緒に会って、Fに彼女のことを聞き出すのが楽しみ。泣かれたって?週末なのに会いに行かなくていいの?横浜に住めっていわれたのー!

今日買い物に出た時、Fのために、食養生って言うのか、健康的な食生活のための料理本を買ってきた。癌ではなかったとはいえポリープがあるのは確かなんだから、不摂生はやめて欲しい。オーガニックのパスタとトマト缶も一緒に、明日持っていこうと思っている。

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昨日はけっこう酔ったので、どんな話をしたのか記憶が断片化している。

「これがアタシのものにならないオトコだなんてねぇ……辛いわ」
「え? それって……所有とか、結婚とかって意味じゃないよね」
私は笑って応えた。
「何人も同時におぼれてる時、一番最初に手を伸ばして助け上げてくれるとか、そういう意味」

まだ付き合って一月くらいなのに、無理矢理実家につれてかれて親とかにも会わされちゃった……とFが言った。
4日泊まって、最後の日には泣かれた、って。横浜に住んで新幹線通勤しろとまで言われたそうだ。少し、いい気味。東京に返したくない。

どこまでFくんに近づいていいのか分からない、と言うと、僕そんな難しいこと考えない、と彼は言った。それでいいんだ、と気が楽になった。

別れ際、駅の片隅で抱き合って、Fが言った。
「東京では、知り合いに見られるかもしれないなんて考えたこと無かったけど……職場の人とか通るかもしれないよね」
そうねぇ、と言いながら、私は離れてあげない。

「後ろから抱っこされるの、大好きなんだ」
「そうなの?」
離れがたくて、左手の指の甲で彼の頬に触れた。絡めていた指にキスをして、じゃあね、またね、と言って別れた。

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Fから電話が掛かってきた。月曜日に着くはずだった荷物が到着せず、これから届くという。荷下ろしだけならたいして時間は掛からないからと、晩ご飯をいっしょにしようということになった。いろいろあって会えたのは結局8時前だったけど、最初に電話が掛かってきた夕方から、ずっと胸が弾んでいた。
 彼の論文の話をし、私がそれについて書いているものの話をした。他にこんな話が出来る女は、いないでしょう?でも、私にとっても、こういう話が出来る相手は、他にそうそういない。
 彼女のところに4日もいたと言ったので、それはちょっと灼けちゃうなーと言ってみた。
 帰り際、抱き合った時に、Fくんって、浮気しちゃうような人なの?と聞くと、浮気なんてしたこと無いなんて言うから、じゃあ私は何なのよと聞いてみた。冗談のように、「本命?」と言ってくれた。そんなことが嬉しい。本当はどうかなんて、どうでも良くなってくる。
 手をつないで歩いて、キスをするだけ。とても良い関係。それ以上はイヤ。昨日は彼女で今日は私なんて、許さない。
 今度はいつ会える? もう少し優しい言葉を言ってくれるなら、貴方が一番好きだって、教えてあげてもいい。

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ゆうべは泣きたいほどで、なかなか眠れなかったけれど、今朝から家の中のことをあれこれやったり、河原まで散歩に行ったりして、ずいぶん落ち着きを取り戻した。歩いているうちに、ふっと気持ちが軽くなった瞬間があった。何がどう変わったわけでもないのに、気分だけは明らかに安定に向かい始めた。
家に戻り、Fにメールの返事を書いた。メールと言っても携帯ではなくPCメールでのやりとりなので、ペースが速すぎないのがちょうどいい。
「ゆうべは、さぞかしあったかい思いをしたことでしょう(^^)」
せめて、このくらい言えなくちゃね。……遠距離がいつまでも続くとは思ってない、私もコワい女。

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淋しくて哀しい。とても逢いたい。
今日がFの引っ越しだった。東京を引き払い、荷物がこっちの町に着くのは明日の午前中。
昼間、だんなが電話をして、夜、こっちにきてるなら飯でも一緒にどうかと言った。荷物の運び出しは終わったが、こちらに着くのが何時頃になるか分からないとFは言った。だったらまた電話くれと言って、だんなは電話を切った。私はそのやりとりを聞いていて、彼女と逢ってるんだなと思った。

さっきFからメールが来た。今夜は彼女のマンションに泊まっていると。やっぱりね。それ以外無いもんね。

こんな気持ち、誰にも知られたくない。

Fのようなタイプは鬼門なんだ。あのタイプには振られる。だから深入りしないように気を付けてきた。しばらく時間があれば自分の気持ちくらいコントロールしてみせる。そのうち冷める。そのくらい知ってる。
でも今夜は、寂しくて哀しくて仕方ない。逢いたくて仕方ない。
気持ちを伝えたい。伝えたくない。
都合のいい女でいるのはシャクだ。誰にとってだって、都合のいい女なんかでいたくない。私はだんなの飯炊き家政婦じゃないし、Fの据え膳じゃない。
私は私でいたい。私でいて、恋をしていたい。
醜くなりたくない。東京の彼女と、そのうち上手く行かなくなるわよと思っている自分を認めたくない。嫉妬していることを知られたくない。恋してしまったことを、自分から白状したくない。追いかけたくない。追いかけられたい。愛されたい。もっと愛してることは内緒にしておきたい。

Fの特別な人になりたい。

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 Fからメールが来た。彼は引っ越しとこちらでの勤務で、私もたまたま今週は用事があって、東京とこちらとを行ったり来たりしている。引っ越しの日程を報告し、こちらの予定を訊ねねる、何気ない内容だ。
 それでも、メールboxに彼の名前を見つけただけで心臓が飛び跳ね、何度か読み返したあともしばらく高鳴りがおさまらなかった。十代の頃と何も変わっていない。

 正直、これから先、Fとの関係をどんなものとして維持していけばいいのか分からなくなっている。恋をしてしまえば何もかもが不確かになっていく。これまで通り、仄かな色気を互いに隠しながら、いい友人として接していくのは辛いだろう。でも、それ以上の思いを伝えるのもためらう。だんなの留守を伝えて逢いたがるようなまねをしたくない。彼が東京で週末を過ごすと聞いて東京の彼女に嫉妬を感じたことなど、絶対に彼に知られたくない。

 ここ数日、以前に彼が送ってくれた論文を読み返してみた。たぶん、「知」の部分から関係を深めていくのが正解なのだ。かけがえのない特別な関係を築くためには、感情ではなく「知」の部分で、学生時代のようにもう一度、2人で学問の話をすることから始めるべきなのだ。あの頃は私が先輩だったけれど、今は彼の方が先を歩いている。それがきっとちょうどいい。
 引っ越しの荷解きを手伝いに行ったら、あの論文のことを、そしてその続きのことを話そうと思っている。
 私にはキレイごとから攻めるのが似合っているはずだから。

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