さっきFが帰って行った。まだぼーっとしている。
メールでデートの約束をしていた金曜、夕方にFから「これから出るとこなんですけど」と電話。どうする、どっか食べに行く?と聞くと。
「こっちに来てからろくなもの食べてないんですよ……野菜不足って感じで。野菜とか魚とか食べたいなぁ。食べたくないのはトンカツとか、ハンバーグとか、ステーキとか……」
「アハハ、私もそんなの食べたくないや。ヘルシー系のバー、見つけたんだけど。アボカドのサラダとかあるわよ」
「あ、それは素晴らしい」
引っ越した部屋に、コンロが一口しかないので自炊できないと前から愚痴っていた。仕事場や部屋の近所には、おしゃれなイタリアンやフレンチは色々あるのに、手頃で軽く食べられる美味しい店がない、とも。部屋に呼んで手料理でもごちそうしたいのは山々だったが、部屋に二人きりで酒なんか入ったら、絶対寝てしまう。Fとの関係がどんなものになるのか分からない今は、そのまま肉体関係だけ持ってしまうのは怖い。若い頃は、好きなオトコをものにしたいという征服欲みたいなものもあったが、今は逆で、好きなオトコほど、勿体なくて抱けない、っていう気分もある。
待ち合わせ場所のビルのテラス席で、Fはビールを飲んで待っていた。それを飲み終わるまで向かい合って座り、ヘルシー系のバーに移動。時間が早かったせいか、まだ客が他にいない。
小さな用水越しに歩道を見上げる半地下の窓際席に並んで座る。アボカドのサラダと温野菜サラダ、サーモンクリームのフェットチーネに、ヴーヴクリコをフルボトルでオーダー。
注がれたシャンパンのグラスを持ち上げて、何か、おめでたいことでもあったみたいねと言うと、Fはそう?僕、好きでけっこう普段でも飲むけど、と言う。私もシャンパンは好き。シャンパンの話で会話が続いた。
今日はFの話を聞くために、こちらからはあまり話をしないと、密かに決めていた。新しい仕事のこと、部屋の愚痴、料理のこと、友人のことなど、無口な印象のFが、次々に話してくれる。
会話の流れで、ここのところ急に体重が落ちて、高三の時と同じ体重になってしまったことを話すと、Fは心配そうな顔をした。
「どうして?」
「フフッ、恋わずらい?」
「無理してでも、食べた方がいいよ」
「うん……。もうね、自分の身体なんてしげしげ見なかったけど、気付いたらあばらが全部数えられるの。外側も内側も。だから好きな人の前で服脱ぐ勇気なんか、もう無いわ。食べるのもそうだけど、筋トレしなきゃと思ってね、腕立てとか始めちゃった」
彼女がピラテスをやっていると言い、ピラテスって何と聞いてきた。よく分かんないと答えると、でも、いかにも負け犬でしょ、と言ってFは笑った。
「僕もかなり小食だけど、ユウさん、ほんと、食べないよね」
「普段はけっこう、ちゃんと食べれるのよ? でも……これ言うと笑われちゃうけど、Fくんと会うと胸がいっぱいになっちゃって、あんま食べらんないの」
「それは……笑うしかないね」
照れていたのか?いまいち分からない反応だったが、まぁいい。
もっぱら話を聞くつもりでいたが、結局、だんなとの関係のことなど、話してしまった。
クリコを空けたところで店を出て、別のバーに移動。
私はブラッディーメアリー、Fはマッカランの12年をロックで。何の話をしたのか、もうあまり覚えてない。
どちらの店でだったか忘れたが、ルールドの話をした。観光化されたお寺の話から、私がフランスでルールドに行った時の話になった。するとFは、共通の友人であり先輩であるDさんの名前を出して、こう言った。
「Dさんとこないだ会った時、話が出ましたよ。ユウさんがルルドの少年の話をしたこと」
「わぁ……覚えててくれたんだ……すごい昔に話したの、私も覚えてるわ。ユイスマンスの本に書いてあった話なの」
奇跡の癒しで知られるルルドで、重病の少年が一度は奇跡的な回復を見せ、活き活きと輝いて喜びに溢れたのだが、数日後、恩寵は取り上げられ、元通りの重病に戻ってしまった、という話。どうやってその残酷さを納得すればいいのか、と、私はDさんに聞いたことがあった。簡単に答えが出るものではない。
二軒目を出た時は、もう終電の時間だった。
「あ、急がなきゃ終電行っちゃうわよ?」
「ヤダ、めんどくさい」
「えー……」
私の家は、歩いて帰れる距離だった。そして私は意志が弱い。
「んー、じゃあ、誘惑しないなら泊めてあげてもいいけど」
「それは自信ない」
「もう……」
結局、コンビニでビールを買って、2人で部屋に戻った。
NIRVANAのCDをかけながらビールを飲み、音楽の話をした。涅槃とはほど遠いバンドだったよね、と言って2人で笑った。
それから、後ろから抱きしめられ、キスをした。Fが私を床に押し倒した。
「誘惑しないって言ったのに」
「言ってない」
彼が正しかった。
「あばら数えちゃうからダメよ」
「数えない。電気消せばいい?」
「……そうね……電気は消して」
Fが電気を消し、私は蝋燭に火を灯した。
唇を重ね、たっぷりとキスをした。Fの唇が私の胸を吸った。
「何かすごいいい匂いがする」
「ああ、オレンジよ。エッセンシャルオイルつけてるの」
「いい匂い……」
私は起きあがり、Fを下にしてシャツのボタンを外した。唇と頬と、首筋にキスをして、耳たぶを含んで、噛んだ。Fが微かに声を上げた。私はFの胸元に唇を這わせ、たくさんのキスを浴びせた。それから乳首にキスをした。Fは感じて声を上げる。左右の乳首を順に舌先でいじる。そして手を、ジーンズの中に入れると、Fは自分から脱いだ。
私はFの股間に頭を持っていき、ペニスの先にキスをした。袋を手で緩く揉み、口に含んだ。片方ずつ、順番に。ペニスの裏側を舐めあげ、先っぽを口に含んで舌をぐるぐる回す。それから強く吸いながら、根本まで。始めはゆっくり、次第に激しく、頭を動かした。Fは身悶えしていた。
私が離れると、Fは再び上になって、私の胸を愛撫した。
「あばら、数えちゃダメ……」
「数えないよ」
Fは私の服をめくりあげたまま、脱がせなかった。寒かったからだろうか。先月ホテルの部屋で抱き合ったときもそうだった。
パンティとストッキングを、片足だけ脱がされ、Fが私の股間に顔を持っていこうとしたので、ダメ、恥ずかしい、そんなことしないでと拒んだ。お風呂にも入らずにされるのは、抵抗がある。Fはやめてくれた。
あばらを数えるなと言ったせいだろうか、後ろから入れられた。スカートは履いたまま、下着は片足にまとわりついたままだった。
「痛い?」
「ううん。でもゆっくりして……とても久しぶりなの」
Fは私に覆い被さるように、耳元に顔を近づけた。
「いつ以来?」
「たぶん……あの夏以来かな」
「そっか……」
Fは何度か、これくらい大丈夫?と聞きながら、次第に動きを激しくしていった。高まってきた時、一度、ダメ、やめて、と言った。
「痛かった?」
「よくなってきたけど……何か怖いの、壊れちゃいそう」
Fはまたゆっくり始めてくれた。私はごめんネと言い、良くなってきたと言った。
「気持ちいい?」
「うん……すごくいい」
動きが激しくなってきた。私は再び、怖い、と言った。
「もう少しだから」
私は床に顔を埋め、激しく喘いだ。慣れない快楽が、怖かった。
Fが果てたのが分かった。私たちは抱き合い、キスをした。
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メールでデートの約束をしていた金曜、夕方にFから「これから出るとこなんですけど」と電話。どうする、どっか食べに行く?と聞くと。
「こっちに来てからろくなもの食べてないんですよ……野菜不足って感じで。野菜とか魚とか食べたいなぁ。食べたくないのはトンカツとか、ハンバーグとか、ステーキとか……」
「アハハ、私もそんなの食べたくないや。ヘルシー系のバー、見つけたんだけど。アボカドのサラダとかあるわよ」
「あ、それは素晴らしい」
引っ越した部屋に、コンロが一口しかないので自炊できないと前から愚痴っていた。仕事場や部屋の近所には、おしゃれなイタリアンやフレンチは色々あるのに、手頃で軽く食べられる美味しい店がない、とも。部屋に呼んで手料理でもごちそうしたいのは山々だったが、部屋に二人きりで酒なんか入ったら、絶対寝てしまう。Fとの関係がどんなものになるのか分からない今は、そのまま肉体関係だけ持ってしまうのは怖い。若い頃は、好きなオトコをものにしたいという征服欲みたいなものもあったが、今は逆で、好きなオトコほど、勿体なくて抱けない、っていう気分もある。
待ち合わせ場所のビルのテラス席で、Fはビールを飲んで待っていた。それを飲み終わるまで向かい合って座り、ヘルシー系のバーに移動。時間が早かったせいか、まだ客が他にいない。
小さな用水越しに歩道を見上げる半地下の窓際席に並んで座る。アボカドのサラダと温野菜サラダ、サーモンクリームのフェットチーネに、ヴーヴクリコをフルボトルでオーダー。
注がれたシャンパンのグラスを持ち上げて、何か、おめでたいことでもあったみたいねと言うと、Fはそう?僕、好きでけっこう普段でも飲むけど、と言う。私もシャンパンは好き。シャンパンの話で会話が続いた。
今日はFの話を聞くために、こちらからはあまり話をしないと、密かに決めていた。新しい仕事のこと、部屋の愚痴、料理のこと、友人のことなど、無口な印象のFが、次々に話してくれる。
会話の流れで、ここのところ急に体重が落ちて、高三の時と同じ体重になってしまったことを話すと、Fは心配そうな顔をした。
「どうして?」
「フフッ、恋わずらい?」
「無理してでも、食べた方がいいよ」
「うん……。もうね、自分の身体なんてしげしげ見なかったけど、気付いたらあばらが全部数えられるの。外側も内側も。だから好きな人の前で服脱ぐ勇気なんか、もう無いわ。食べるのもそうだけど、筋トレしなきゃと思ってね、腕立てとか始めちゃった」
彼女がピラテスをやっていると言い、ピラテスって何と聞いてきた。よく分かんないと答えると、でも、いかにも負け犬でしょ、と言ってFは笑った。
「僕もかなり小食だけど、ユウさん、ほんと、食べないよね」
「普段はけっこう、ちゃんと食べれるのよ? でも……これ言うと笑われちゃうけど、Fくんと会うと胸がいっぱいになっちゃって、あんま食べらんないの」
「それは……笑うしかないね」
照れていたのか?いまいち分からない反応だったが、まぁいい。
もっぱら話を聞くつもりでいたが、結局、だんなとの関係のことなど、話してしまった。
クリコを空けたところで店を出て、別のバーに移動。
私はブラッディーメアリー、Fはマッカランの12年をロックで。何の話をしたのか、もうあまり覚えてない。
どちらの店でだったか忘れたが、ルールドの話をした。観光化されたお寺の話から、私がフランスでルールドに行った時の話になった。するとFは、共通の友人であり先輩であるDさんの名前を出して、こう言った。
「Dさんとこないだ会った時、話が出ましたよ。ユウさんがルルドの少年の話をしたこと」
「わぁ……覚えててくれたんだ……すごい昔に話したの、私も覚えてるわ。ユイスマンスの本に書いてあった話なの」
奇跡の癒しで知られるルルドで、重病の少年が一度は奇跡的な回復を見せ、活き活きと輝いて喜びに溢れたのだが、数日後、恩寵は取り上げられ、元通りの重病に戻ってしまった、という話。どうやってその残酷さを納得すればいいのか、と、私はDさんに聞いたことがあった。簡単に答えが出るものではない。
二軒目を出た時は、もう終電の時間だった。
「あ、急がなきゃ終電行っちゃうわよ?」
「ヤダ、めんどくさい」
「えー……」
私の家は、歩いて帰れる距離だった。そして私は意志が弱い。
「んー、じゃあ、誘惑しないなら泊めてあげてもいいけど」
「それは自信ない」
「もう……」
結局、コンビニでビールを買って、2人で部屋に戻った。
NIRVANAのCDをかけながらビールを飲み、音楽の話をした。涅槃とはほど遠いバンドだったよね、と言って2人で笑った。
それから、後ろから抱きしめられ、キスをした。Fが私を床に押し倒した。
「誘惑しないって言ったのに」
「言ってない」
彼が正しかった。
「あばら数えちゃうからダメよ」
「数えない。電気消せばいい?」
「……そうね……電気は消して」
Fが電気を消し、私は蝋燭に火を灯した。
唇を重ね、たっぷりとキスをした。Fの唇が私の胸を吸った。
「何かすごいいい匂いがする」
「ああ、オレンジよ。エッセンシャルオイルつけてるの」
「いい匂い……」
私は起きあがり、Fを下にしてシャツのボタンを外した。唇と頬と、首筋にキスをして、耳たぶを含んで、噛んだ。Fが微かに声を上げた。私はFの胸元に唇を這わせ、たくさんのキスを浴びせた。それから乳首にキスをした。Fは感じて声を上げる。左右の乳首を順に舌先でいじる。そして手を、ジーンズの中に入れると、Fは自分から脱いだ。
私はFの股間に頭を持っていき、ペニスの先にキスをした。袋を手で緩く揉み、口に含んだ。片方ずつ、順番に。ペニスの裏側を舐めあげ、先っぽを口に含んで舌をぐるぐる回す。それから強く吸いながら、根本まで。始めはゆっくり、次第に激しく、頭を動かした。Fは身悶えしていた。
私が離れると、Fは再び上になって、私の胸を愛撫した。
「あばら、数えちゃダメ……」
「数えないよ」
Fは私の服をめくりあげたまま、脱がせなかった。寒かったからだろうか。先月ホテルの部屋で抱き合ったときもそうだった。
パンティとストッキングを、片足だけ脱がされ、Fが私の股間に顔を持っていこうとしたので、ダメ、恥ずかしい、そんなことしないでと拒んだ。お風呂にも入らずにされるのは、抵抗がある。Fはやめてくれた。
あばらを数えるなと言ったせいだろうか、後ろから入れられた。スカートは履いたまま、下着は片足にまとわりついたままだった。
「痛い?」
「ううん。でもゆっくりして……とても久しぶりなの」
Fは私に覆い被さるように、耳元に顔を近づけた。
「いつ以来?」
「たぶん……あの夏以来かな」
「そっか……」
Fは何度か、これくらい大丈夫?と聞きながら、次第に動きを激しくしていった。高まってきた時、一度、ダメ、やめて、と言った。
「痛かった?」
「よくなってきたけど……何か怖いの、壊れちゃいそう」
Fはまたゆっくり始めてくれた。私はごめんネと言い、良くなってきたと言った。
「気持ちいい?」
「うん……すごくいい」
動きが激しくなってきた。私は再び、怖い、と言った。
「もう少しだから」
私は床に顔を埋め、激しく喘いだ。慣れない快楽が、怖かった。
Fが果てたのが分かった。私たちは抱き合い、キスをした。
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