Fからメールが来た。彼は引っ越しとこちらでの勤務で、私もたまたま今週は用事があって、東京とこちらとを行ったり来たりしている。引っ越しの日程を報告し、こちらの予定を訊ねねる、何気ない内容だ。
 それでも、メールboxに彼の名前を見つけただけで心臓が飛び跳ね、何度か読み返したあともしばらく高鳴りがおさまらなかった。十代の頃と何も変わっていない。

 正直、これから先、Fとの関係をどんなものとして維持していけばいいのか分からなくなっている。恋をしてしまえば何もかもが不確かになっていく。これまで通り、仄かな色気を互いに隠しながら、いい友人として接していくのは辛いだろう。でも、それ以上の思いを伝えるのもためらう。だんなの留守を伝えて逢いたがるようなまねをしたくない。彼が東京で週末を過ごすと聞いて東京の彼女に嫉妬を感じたことなど、絶対に彼に知られたくない。

 ここ数日、以前に彼が送ってくれた論文を読み返してみた。たぶん、「知」の部分から関係を深めていくのが正解なのだ。かけがえのない特別な関係を築くためには、感情ではなく「知」の部分で、学生時代のようにもう一度、2人で学問の話をすることから始めるべきなのだ。あの頃は私が先輩だったけれど、今は彼の方が先を歩いている。それがきっとちょうどいい。
 引っ越しの荷解きを手伝いに行ったら、あの論文のことを、そしてその続きのことを話そうと思っている。
 私にはキレイごとから攻めるのが似合っているはずだから。

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