金融緩和と庶民生活 〜 庶民による庶民のための経済小話① ~ | 門前小僧、習わぬ今日を読む

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反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
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細かい話や小難しい話はおいといて、経済について門前小僧的に説明していきます。

(“門前小僧的に”とは、正式に学んだわけじゃないし、そこまで詳しくないけどねって意味です)。
 
金融緩和とは要するに、ざっくり言えば、日本中央銀行(日銀)が、民間銀行が持っている国債を買い上げて、お金を銀行に渡すことです。
 
(直接お金を渡すわけじゃなくて、日銀当座預金っての介して〜とか、細かい話はめんどくさいので抜きにします)
 
中央政府は通貨、つまりお金を発行できるわけですが、発行するっていっても、各家庭に配ったりするわけにはいきません(配ってくれたら嬉しいですが)。
 
まず民間の(市中の)銀行や信用金庫、いわゆる金融機関に国債を買い取らせると言う形でお金を渡します。
 
そして銀行が、渡された(発行された)お金を企業や個人に貸し付け、さらにそのお金を企業や個人が使うことによって、初めて発行されたお金は市中に出回ることになります。
 
つまり、
日銀(政府) → 民間(市中)銀行 → 企業・個人(市中)
という流れですね。
 
上手いことお金が世の中に流通するようになれば、お金の流通量が増えます。
反対に、お金の流通量が増えても、その分モノやサービスの量が増えるわけではない(連動していない)ので、単純に考えればモノやサービスの価格は上がります。
物価が上がる、いわゆるインフレ(インフレーション)というやつです。
 
物価が上がると、買い物したりするときに高いお金を払わなけりゃなりませんので、消費者としては損な感じがしますが、その分企業にはたくさんお金が入ります。
 
消費者というのは基本的に企業で働いている人なわけで、企業が儲かれば労働者(=消費者)の給料もアップします。
そのため、インフレ(物価上昇)のペースが、給料アップのペースを上回らなければ、損といっても大したことはありません。
 
要するに、出ていく以上のお金が収入として手に入れば、多少モノやサービスの価格(物価)が上がったところで、問題ないどころか、余分に手に入ったお金で別のものを買ったり、貯金に回したり色々できるわけです。
 
そして、日銀の黒田総裁のもと、2013年から金融緩和政策が取られ、日銀は市中銀行が保有する国債を買い漁り、お金をバンバカバンバカ発行しまくりました。
そうすれば、物価が上昇し、企業が儲かり、労働者の収入もアップ!景気回復するぜイエーイ!
無論、こんな発言はしていませんが、国民への説明としては、景気が良くなるって話だったんです。
 
しかし、それからすでに4年が経過しましたが、物価はほぼ横ばい、当然日本国内で商売をしている企業の儲けはそこまで上がらず、日本国内の労働者の給料も上がらず、さらに消費税増税やら社会保険料の値上げやらで庶民の暮らしは苦しくなるばかり。
景気なんざ全然よくならないわけですクソッタレ。
 
ではなぜ、金融緩和によってお金が大量に発行されたにもかかわらず、物価も上がらず、庶民の生活も良くならないのか?
 
要するに、発行されたお金が市中に出回っていないためです。
 
この手の説明をする人の中には、民間銀行の手に渡った時点で“市中に出回った”と表現する人がいますが、そんな訳ないでしょう。
発行されたお金が企業や個人の手に渡り、それが使われることによって初めて、“市中に出回る”という表現が使われるべきです。
 
日銀は通貨を発行し、国債を買い取る形で銀行にお金を渡しました。
ここまでは良いのですが、銀行からお金が動かず、止まってしまっているのです。
 
そもそも、銀行からお金を借りる場合ってどんな時でしょう?
個人であっても企業であっても、月収や貯金残高だけではとても買えないような、大きな買い物をするときです。
個人であれば、家やマンション、あるいは自家用車などがこれに当たります。
企業であれば、設備投資、例えば工場を建てたり、工場の設備を新しくしたりといった場合に銀行からお金を借ります。
 
ところが、この20年間、日本はデフレ不況です。
 
景気が悪い、すなわち儲からない時期というのは、誰でもお金を使いたがりません。
なるべく手元に残し、収入がさらに減ってしまったり、最悪無収入となってしまったときに備えようとしますから。
 
これは企業も個人も全く同じ。
 
「日頃の出費も抑えたいのに、借金するなんてとんでもない!」
 
となってしまうわけですね。
例えるなら、日銀が水道の元栓、銀行が蛇口とすると、蛇口の栓を捻る人がいなくて、お金が出てこないような状況なわけです。
 
その結果、お金は市中に出回ることもなく、銀行の金庫(正確には日銀の当座預金)の中に眠ったままピクリとも動かず、国民は貧困化していくことになるわけです。
 
無論、金融政策は、デフレ不況下において正しい政策の一つです。
そう、「政策の一つ」であって、「この道しかない(by 安倍総理・死語)」わけではありません。
 
もう一つの重要な政策が足りていないのです。
 
それが、財政政策、この場合は財政出動と呼ばれる政策です。
 
 
 
<参考エントリ>
 ・枯渇する国債 2017年5月3日
 ・異次元緩和の限界 2015年8月7日
 
 ・日銀の敗戦とリフレ理論 2016年9月25日
 
 
 ・リフレ派の吐く大嘘 2017年1月10日
 ・国債をもっと刷れ! 2017年5月11日